2006年11月16日

第54期王座戦五番勝負第2局△山下敬吾棋聖対▲張栩王座 307手完 白1目半勝 2006.11.16








 解説:結城聡九段(産経新聞解説)
 □黒1〜4は最近の流行。先程の張栩自身の名人戦でも行われている。
 □白5の三間高バサミ以降黒21までは、よくある定石のひとつ。
 □白22が山下の工夫。「初めて見た」と結城P。普通は参考図A
 □黒23の押さえから25のハサミが厳しい。
 □白26〜黒31は黒の低位のワタリ対白の今ひとつしっかりしていない厚みという互いに形の決まらない難しい戦い。
 □ここから白114まで、一手打つ度に打ったほうが良く見えるという一気呵成の「アマチュア受けのする」激戦が続く。
 □まずは、白32ツケが右上の黒の分断を狙った鋭いツケ。ここから戦いは一直線に全局的に進んでいく。参考図Bの黒33でただちに下ハネは上辺の黒と白一群同士の戦いになり、ここでの力関係は白>黒で黒が苦しい。
 □白34でもハネはない、という。参考図C参照。
 □プロ同士の対戦というものは、このようにして険しい戦いの読み(とその形勢判断の悪い方からの回避)を秘めながらぎりぎりの険しい鍔迫り合いを演じつつ、結局は見かけは案外おだやかなところに行き着く。ここの部分でいえば、白32〜44がそれで、一段落の気配である。
 □しかしよく見れば、ここの部分は白黒ともに一息ついたというだけで、完全に生きた、というわけではない。
 □したがって、黒45とひとつ押しておいてから、黒47と一気に上辺の白に攻めかかる。これが21世紀の碁である。普通の20世紀式なら堅実に参考図Dの道を辿る筈なのであるが...。
 □実はこのあたりでは上辺を制した黒が有利というムードが控え室では漂っていたらしい。あくまでそれはムードであって、実際はそうでもなかったことが後になってから判明してくるのだが...。
 □黒が一足飛びに47、49と上辺の白に攻めかかれば、白も気合で上辺は知らんフリをかまして、48、50と逆に右辺の黒に逆襲する。牙をむいた獲物といったところである。
 □白50〜54と右辺で白が治まれば、右上の黒も単独での生きはない。
 □そこで黒55、57と首を出している間に白56、58と連打され、上辺の白が復活するという、アマチュアには「なっ、なんなんだ、これは?!」という一大フリ替わり騒動が起きた。しかしこっれはプロにとっては相場の進行であるらしく、結城Pも想定内のことと見え何も言わない。
 □ただし、黒59の取り切りは必然としても、参考図Eの一見愚形の取りが良く、後のことを考えると天地の差となった。黒の敗着と言って過言ではない、らしい。
 □白62、64といったん出口を塞がれると黒65の備えが必要で、とするとこれなら59は一路上にあるほうがよい理屈(白二子のダメを詰め、又白30の一路上からの刺し込みも無い)である。
 □こうして先手を得た白が打った66がやたら評判が良かった。右辺の生きている白石に更に一手かけて鈍重なようだが、「白の右辺を盛り上げつつ、中央の白の薄みを補い、しかも実は右上の黒の出口を封鎖する手(=白74で後に実現)を狙っていて極めて厚い一着なのだそうである」。黒59が敗着ならば、白66のこの手を勝着と呼んでもいい位だと後から言われた。なるほろねぇ。
 □実際、白22ハサミから上辺〜右辺〜中央と拡大していった戦いは、この直後黒67〜73と上辺の黒の中央突破を計ったものの、白74のカケがくると右上の黒は中央への出口が止まっていて、75、77という屈辱の後手生きを計らねばならない。
 □更に上辺も黒81と手を戻している間に、左辺の白は84、88と寛ぐ始末。
 □黒は91、93から97〜101と決死の猛攻を左上の白にかけるが、白102の緩みから114が絵に描いたような鮮やかなシノギでアッサリ生きてしまえば黒有利説は吹っ飛び、にわかに形勢不明、いや白形勢有利説まで出てくる次第。
 □焦ったのか、黒、右下117から白132が評判が最悪。黒の敗勢が明らかになってくる。
 □黒133などと後出しの細工は通用せず、白134のハネまで決められると、黒は上辺と右辺がカラミ攻めになっている。
 □結局黒145に手が戻り、白146のカケを先手で決められては、右辺の白と黒の力関係は圧倒的に白有利。
 □勢いをそのままに、白はその後も押し切って勝利した。

 参考図A 白22は普通は押し







 このような進行になれば常識的。

 参考図B 黒33でただちに下ハネはない







 白40まで、上辺の白の一群は形は不安定ではあるが、力関係で辺に閉じ込められた黒の一群よりは強いという。(無論、「プロなら一目」というレベルの話であって、あおきレベルだと「黒が玉砕覚悟で必死の形相でハザマを割ってくればどうなるんだい?」という自然な質問にもう答えられないんであるけれども...orz)

 参考図C 白34でハネはない







 白34ハネは白の一子が取られて上辺の黒とも連絡してしまう(低位ではあるが)ので黒満足だという。まあ、このあたりの形勢判断はプロの対局だけに、微妙でアマチュアには容易に結論がでない、難解なもんですよね。数字にしても数目の差でしかないというし。

 参考図D 実戦の黒47は飛躍。普通はこのように堅実に







 実戦の黒47は飛躍した発想。普通ならこのよう(黒47、49)に順を追って安全を確かめながら二手かけてノゾクのが堅実だとされる。しかし、二手かけた、ということは石の重複でもあるわけで、それならば上辺は軽く見て(とりあえずは死んだフリをしておいて)、白50と右辺の黒一団に「まだ生きていませんよ」と攻めかかろう、というのが現代流の険しい碁の流れというものであるらしい。ふ〜ん。ついていけないや。

 参考図E 黒59は愚形が優った







 結果論であるが、黒59の白二子取りではこの愚形が優った。というのは後に実現するように、白から白30の一路上の刺し込みから黒の種石黒7、11の二子が取られるという大事件が起こったからである。





 
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2006年11月13日

第32期天元戦五番勝負第2局△河野臨天元対▲山下敬吾棋聖 157手完 黒中押し勝 2006.11.13








 解説:王銘ワン九段
 □黒7では上辺との関係で、こうナダレてみたくなるもの。以下13まで簡明な分かれ。
 □白14の大ケイマガカリに黒15コスミは「山下らしくない」と立会い人の林海峰名誉天元。参考図Aなら「山下らしい?」
 □黒17のいっぱいの詰めはこの一手。
 □白18が頑張った手。参考図Bならおだやかな分かれだが、この碁では序盤は黒おとなしく、白が意欲的。
 □白22で参考図Cとツギたいが、参考図Dがあって白が参っている。だから白22〜32はやや白が譲歩した気味がある。
 □黒33もバランスを重んじた一手。王銘ワン九段は「僕なら右下星にいっぱいにカカルけどなあ」と。
 □白34は急所の打ち込み=攻めだが、黒35に隅を受けなければならないのが辛い。白手抜きは参考図E。
 □黒39はワタリを見て案外“シャニコイ”攻めだ。参考図Fなら、激しいようでも生き生きとなって案外おだやかな分かれになる。
 □白40では参考図Gが穏当なライン。しかし、この図は受身一方で河野天元の意にそまなかったか?
 □実戦は白40押さえ〜48と白が高圧的に出る。
 □白50に黒51は気合。
 □以下白52から76は必然、天下コウだ。ただし、黒69と下辺へ向かって仕掛けたコウは参考図Hと上辺に向かってやるのもあって悩ましい。
 □白78では下辺を1回受けることも可能だが、黒83に白84と受けねばならず(白84でコウを取りきるのは、黒85と白一子を抱えられた図が実戦の黒77、79のハネよりも白ひどい)、すると白にはもうコウ材がなく、左辺の天下コウは黒が勝つことになる。この代償は左上の黒二子で、黒は下辺のシチョウにも手が回ることになる。この展開は、白面白くない。参考図J。
 □というわけで、コウは白取り、左下隅は黒地という分かれになった。
 □ここで形勢判断をする。左辺の天下コウは出入り50目は下らない。左下隅は出入り30目強と、この交換は白が得をしたようにみえる(確かに数字的にはそのとおりなのだが)が、コウにいたるその前からのいきさつ、及び左辺を打ち抜いた白の上下は黒がしっかりと生きていて、この模様が存外厚みとして働かないという点で、白もイマイチであるらしい。
 □しかも、この後白は80〜92と下辺と右下隅を別々に生きねばならなくなり、黒は先手先手と立ち回っていつのまにか右辺に黒の大きな地模様ができてしまったことから、(結果論ではあるが)この左辺の大コウも、白有利な結果にはいたらなかったようだ。
 □白94は形勢不利を自覚した白の勝負手。もうひとつ中央寄りの浅い消しなら安全だが、それでは足りない、と見た。
 □黒95〜115は華麗な戦い。
 □白もなんとかシノいだものの、黒105と右辺を一気通貫の地にしては勝負はあった。
 □黒155は勝利宣言。黒が盤面20目は良い。
 
 参考図A 山下なら黒15







 と誰しも思ったが、本人(山下)は「(最近の僕は地に)カライです」

 参考図B 白18もっともおだやか







 こうなれば右上と左辺を双方囲って、黒も満足。

 参考図C 白22ツギ







 こうなれば、白旨いが、それは白の一人相撲。

 参考図D 白24ツギには黒対策アリ







 黒25のコスミが巧く、白まいっている。

 参考図E 白36では沿い上げたいが








 黒35ハネには手を抜いて白36で沿い上げ左辺の白を盛り上げたいが、黒43から45の出切りに白は抵抗できない。こうなっても、左下の白は黒からハサミツケのコウ残りなので白50が省けず、黒51抜きと替わって、黒全局的にバカ厚くなり、こうなれば、白に勝ち目はない。

 参考図F 黒39ハネは存外







 黒39ハネは激しいようだが、存外穏やかな分かれになる。これで黒悪いわけではないのだろうが。

 参考図G 白40おだやかだが







 白40では中央に向かってのトビが相場なのかもしれない。黒も存外薄いし、ワタリは辛いような気がしなくもないが...。河野Pには白がぬるくみえるのか?

 参考図H 黒69のコウは後のことを考える(白の取り番の天下コウ)とこちらのコウのほうが黒得なのだが







 このように白が一発でコウを解消すれば黒は取られた外側が左上の黒地に関連していて得なのだが、このコウは意外に複雑なコウ(黒85の出のコウ材に白は1回受ける余裕がある)なので、より簡明な実戦の進行=下辺側のコウを黒は選んだようだ。

 参考図J 白78コウ材に受けると...







 コウは黒勝ち。白の得たものは左上の黒二子だけで、左下の抱えも黒に回る。この展開は白面白くない。









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2006年11月12日

第54回NHK杯戦2回戦14局△山田規三生九段対▲本田邦久九段 白226手以下略 白3目半勝 2006.11.12OA 








 解説:結城聡九段
 □「両者力強い戦いの碁なので、激しい碁になるだろう」との結城Pの言葉。ただ、力強い碁といっても、かつての加藤、武宮といい、山下といい、そしてこの山田規三生とその棋風はそれぞれ個性があり、微妙に違う。勿論、本田邦久も一人一流の主、このNHK杯で優勝したこともあり、先の棋聖戦リーグにも入っているトッププロの一人である。
 □左辺黒11の詰めに山田は手を抜いて左下白12のカカリ。
 □対して本田は意地で13のボーシ。ハザマがあいてはいるが、そこを出てくるなら、左下とのカラミで急戦は歓迎ということだろう。つまり、本田の戦いの碁とは、そんな技巧派のニュアンスがある。
 □対して山田はまずは白14〜黒25と、よくある定石に従って左下を治まる。衣の下に鎧を潜め、一見鈍重な碁である。
 □山田は次に白26〜38と下辺を割って右下と左下の黒を燻り出して、後手でも充分と見ている。
 □白38が来ると、左下の黒は足元を掬われた観もある。放置して死ぬことはないだろうが、黒39の地点に白からハネられると、(左下の)黒は一方的に被告になる。
 □で、黒39と一着入れるのは本手である。ただ、これで下辺から左辺の黒がしっかりつながったかというとそういう訳でもなく、これは黒の模様とまではまだ言い切れないのがやや辛い。あちこちに味があって、それが今後の戦いにどう影響するか(しないか)が勝負の分かれ目になってくる。
 □白40とカカリ、布石に逆戻り。仕切り直し、ともいえる。
 □黒41は上記のように左辺〜下辺の黒の一団を補強しつつ、上辺の白を三線に押さえ込み、白40の(三線の)カカリを悪手にしようというもので、理にかなった判断である。
 □白42では出切りたいが、参考図A、Bのように白石が三つに分断されて不利な戦い。とすれば、上辺は双方生き生きとなる間に黒はがっちりと白8の一子を取り込んで左辺を制し、更に中央と右上の白をカラミ攻めにできるのでこの別れは黒良し。
 □やむをえず白42と這い、黒43と替わる。これは白辛い展開。
 □白44のハサミから50と右辺を盛り上げるが、黒51と急所の押さえは黒に回る。
 □黒51がくると左上隅、白は手を抜きにくい。参考図C。
 □それで白は左上を56まで打ち、先手を得た黒は待望の黒57に回る。この手は白40の一子を制して右上を黒地にして、バカでかい一手ではある。
 □ 黒57に回ったことにより、この碁は黒の主導権で打ちまわしている、とはいえる。
 □ただし、黒が主導権を握って戦いを進めているからといって、形勢黒良しというわけでもないところが、碁の面白い所であり、難しい所だ。
 □つまり、黒は右上は黒地になったといっても、白66〜68と(後手だが)値切る手が残っていて、その前に先手を取るために黒は左上で二子を犠牲にしていることもあって、地合い的には、まだどっちがいい、とも言い切れない。
 □つまり、地合いはほぼ拮抗。厚み、模様はまだこれから、といったところで、形勢判断の天秤はこれからの一手、一手でその都度揺れて、つまり<やじろべえ>のまま。それが、つまり、プロの碁というものだろう。
 □先手を得た黒番の本田はここで長考。
 □黒69は右辺の荒らし、と右下黒の強化を兼ねつつ、左上〜上辺の黒模様の拡大を狙ってはいる。常識的には、参考図Dのハネからの囲い合いだが、それは自信がなかったのだろう、と結城P。
 □黒69には白70と、互いに荒らし。相手の模様を削減し同時に自陣の強化を図る。
 □黒71〜白74を先手で利かした。
 □ここで黒75、77と白76、78の交換が敗着かもしれない。
 □上記の四手はいずれも後手ヨセで、その実質は不明だが、白の76、78は「いかにも大所」という感じがするのに対し、黒75、77は小さくないとはいえ、すでに削減している右辺に二手連打して、「いかにもこだわりすぎ」という気がする。その差は微小ではあろうが、この前後にはこれという問題になるような手は見つからなかった以上、黒の敗因はこのあたりではなかろうか。
 □いわば、白68まで全局面を睥睨し、先手先手と一局の主導権を握って打ちまわしてきた黒が、75、77の二手に限りやけに部分(右辺)にこだわって、ヨセの主導権を放棄した感がある。
 □黒79〜白84、黒85〜白98を先手で利かし、やっと99のツケに回ったが、白106、108を打たれてみると、中央の力関係は逆転、黒模様が白の餌食に変貌してしまっている。しろ112の突き抜けが決勝点で白勝ち。
 
 参考図A 白42出切り⇒左辺の白・死







 白42で出切りは、左辺、上辺、右上と三ヶ所の白がカラミ攻めにあい、とりわけ左辺と中央のどちらかが死ぬ。

 参考図B 白42出切り、別法⇒上辺の白・死







 とまあ、左辺と上辺の白は、両方の生きはない。

 参考図C 白は左上を手抜きできない







 手抜きは左上白全滅。

 参考図D 黒69第一感、囲い合い







 黒69で第一感は右上の双方の模様の境界線のハネであろうが、この展開は先に右辺に巨大な白地を与える上に、右下の黒がまだ生きていないという欠陥を抱えていて、中央の囲い合いに支障をきたす。

 



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2006年11月09日

富士通杯最終予選△河野臨天元対▲趙治勲十段 169手完 黒中押し勝 2006.11.9








 □趙治勲の碁ならわかる、気がする。
 □白が6、8だけを打って白10にシマれば右上は黒が一手多く右下の白と互角。左上と左下がシマリ合いの左右対称の同型ならば黒11と中央を先取するのが超ドキュー、で黒はコミ分をはるかに上回るリードを保って早くも優勢だ。
 □で、白が右上を12と手をかければ左辺の模様を背景に黒13と目いっぱいにハサみたくなる。
 □白14からの戦いには黒35と絶好の二立三析の開き詰めを打って好調、さらには白36には黒37〜白40とまたまた二立三析で手を打って先手で右下黒41の両ガカリに回れば趙は蝶の如く舞っている感じで、さながら「蝶のごとく舞い、蜂のごとく刺す」カシアス・クレイ(モハメド・アリ)の再来か。
 □白44と厚く構えるが、黒45〜白70と三つ巴、四つに絡んででの競り合いでも黒が常に一歩先んじているのが分かる。
 □黒71〜白80の決め付けも黒が双方ともに固まっていながら白はまだまだふらふらしている理屈で言うことなし。更に左辺も黒81から85と調子で固めていってくろ不満なし。
 □白86から局面を展開を図るが、黒87の押し上げから黒は逆襲、97、99で白をぶった切る。
 □白100から反撃しても黒101以下出切られては白106の生きを強要され、黒107と幸便に補強されては、この碁黒がひとりで全部打っている感じ、左辺も109と三間三立で安泰。
 □黒は111で左辺の白にもメスを入れる。
 □とどめは、下辺黒129の打ち込み。以下白154までの黒の花見コウ。
 □コウの代償白164,166の連打はたかだか21目の手なのに下辺のコウは出入り60目は下らない。比較しようもない差では白の投了もやむをえないだろう。
 
posted by 蔵山車理恵蔵 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月06日

第32期天元戦五番勝負第1局△山下敬吾棋聖対▲河野臨天元 280手完 黒3目半勝 2006.11.2 岐阜








 解説:彦坂直人九段
 □黒1、5、白2、6と序盤で四隅が星で占められるのは最近では珍しい。
 □黒3とカカリっぱなしにして二連星を敷き、黒7〜15と三々にフリ替わるのは、簡明だが、有力な布石に思える。(これはあおきひとしの意見なのでよい子のみんなは信用してはいけない。わっはっは)
 □白16のカカリに17のハサミはよくある展開。
 □白18、黒19となれば参考図Aが普通の進行。黒17がある以上右辺で白二眼はできないのだから、白20のケイマはタブーだった。
 □ところが山下は平気で、白20をうち、以下白22〜32と右下の白大模様の形成を期す。う〜む、山下“らしい”なぁ。
 □河野は黒33ツケをひとつ利かし、早速右下35〜39と三々入り。
 □が、この河野の行き方は控え室では不評だった。参考図Bが黒堂々としていて、白もこの白九子がいきてないので手が抜けない。
 □実戦は黒39で手を抜き、白40のボーシが絶好調。黒41も軟弱気味だ。
 □白42がけっこうきつい。
 □やむなく、黒は43、45と間に合わせ出黒の連絡した。
 □が、白44が来たおかげで、白48〜52と上辺が破れてしまった。
 □この上辺突破を防ぐために黒45では参考図Cの上辺からのノゾキを決めたいが、これは参考図Dの経過をたどり黒の破綻に終わる。
 □この時点で、形勢白良し、の旗が上がった。
 □黒の上辺は綻んだものの、黒は53、57、59と切り、67と左辺と中央〜下辺の二正面作戦を取るしか道はない。
 □ここで山下、68〜86と後手でも、右下の黒をともかく封じ込める。特に白86押さえなど中央の白との連絡を拒否する辛抱強い手で、これまた山下“らしい”。
 □ここで河野87、89、91と中央に手を入れた後93の地に回った。「中央はシノギ勝負、山下のお手並み拝見」というわけだ。
 □白94はこんなものとして、黒95が強烈な頑張り!「黒95がすごい手でした。黒95は白96の隙があって左下の黒の分断があって普通ありえない手なのだが、これが誘いの隙になりました」(彦坂P)
 □なんと黒107まで進むと白三子は黒の腹中に入り、隅はまだ生き残り。中央の白も薄くなっていて、大逆転。いっぺんに黒良しとなってしまった。
 □では、白96ではどうすればよかったのか?
 □彦坂Pは例えばと、参考図Eを推奨する。
 □がどうもこのあたりの一手一手はあおきの理解を超えている。この2〜3日何回もこのあたりを並べ直したのだがよくわからなかった。
 □いや、そもそも山下の右上白20のケイマからの白の構想のあたりから、その考えについていけない気がしていた。
 □普通は、短いコメントを参考にしつつ、棋譜を何回か並べ直していくうちに、一局の碁のアウトラインが見えてきて、空で棋譜が並べられる(棋譜を暗記してしまう)ようになるのだが、この碁は違った。
 □実戦は黒95に対し、直ちに白96と応じ、以下黒97〜107はなりゆきとはいえほぼ必然の応酬で、あっという間に中央の力関係が白>黒が逆の黒>白になってしまった。
 □以下は黒の勢力圏での黒の一方的な攻勢に碁は終始する。
 □いや、実際は「黒111は108の上から当てるべきだった」とか、細かいニュアンスの解説はあるのだが、あおきにはもはや理解不能である。
 □「白112で碁は闇試合になった」と『週刊碁』(2006.11.13)の記事にはある。そうであるらしい。
 □で、結局闇試合は黒95のナイスな手を放った河野の手に最終的には転がりこんできた、らしいです。以上。

 参考図A 二十世紀(1970年代)旧定石






 これがむかしは普通に打たれていた。

 参考図B 黒33天下堂々の一間トビ







 威風堂々の一間である。まあ、単調ではあり、感想のための感想、という気もするが...。

 参考図C 黒45ノゾキ







 黒45ノゾキに白がおとなしくツイでくれれば黒47で黒は国家安泰だが、白46では↓参考図Dの反発がある。

 参考図D 白46反発







 白46の割り込み一発で黒はギャフンである。

 参考図E 白96ではともかく中央黒を痛めつける







 「白96〜104と、ともかくも中央を攻めて相手の出方をうかがうべし」が彦坂説であるが、白98,100、102と下辺から中央に白の援軍が来ているものの、中央の黒もほとんど生きで実戦の白97(C-8)が狙える陽気でもない。このあたり、正直あおきひとしの棋力では手の是非は全く不明、一手先も見えずお手上げである。


 
posted by 蔵山車理恵蔵 at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月05日

第54回NHK杯2回戦第13局△高尾紳路本因坊対▲円田秀樹九段 白中押し勝 2006.11.5OA








 解説:石田芳夫九段
 □黒1〜5は大場。
 □白6〜20は定石。
 □「ここで黒21が珍しい」と石田芳夫九段。
 □白20となった局面で上辺と右辺は大場。下辺はモノが小さい。(白16があって、黒から打っても、盛り上がりようがない)ところが左辺は急場でここが白地になるか、黒が割り込むかの差は莫大で盤中最大(の筈)という。
 □従って黒21は左上星へのカカリは左辺から打つのが普通。ただし参考図Aは白不満で、参考図Bとハサム進行が順当だと石田P。
 □黒23の単に二間(隅へのケイマスベリは保留する=受けてもらえれば利かし、だが手抜きされる恐れがあるため。)は小林流。1980年代に小林光一が打ち出した。こうなってからの白からのコスミツケ〜立ちは甘受する、という発想。これは碁の考え方の進歩なのか?幅が広くなってきているということなのか?
 □先手を取った白は24、26と左辺を連打。
 □黒模様がふっくらと盛り上がる上辺は25と受けて不満はない。
 □しかし、先程言ったように、白16が睨みをきかしている下辺は価値が低く、白26には受ける気はしないところ。
 □だから27と左辺を割り、ここから黒は闘いにもっていきたい。
 □白は手抜きされて行きがかり上28と両ガカリする。
 □右下が現在主戦場であるが、ここはどちらがどう打っても圧倒的な差が出るところではない。であれば黒としては右下はそこそこに打って先手を取り、右上のコスミツケに回りたい。例えば参考図C。
 □実戦は黒29と下辺にツケ、白32から三々に入って、白が右辺、黒が下辺に地を持つ分かれになった。これは@黒は価値の低い下辺で地を持たされた(しかも左下と重複気味で、下辺全体を盛り上げるのはむつかしい)A先手を取った白は36〜黒43まで先手で黒の勢力圏であった右上隅に喰い込み地を削減B右下、右上とも白は小さいながらも確実に生きがあるため、その中間にある黒石27がボケてきた、の三点で黒面白くない。
 □先手で右下〜右上を処理した白は44と絶好点の上辺の消しに回って好調。
 □白44に対して、黒は上辺をケイマで受けるのは気合いが悪く、受ける気がしない。それで以下45〜144とちょうど百手打ってはみたものの黒の挽回はならなかった。
 □つまり白は32の三々入りから黒35まで先手で右下を治まり、その勢いで右上も
白36〜黒43まで先手サバいて、白44と上辺の消しに回った時点で既に形勢良し、たった44手で碁は終りなのである。恐ろしい。
 
 参考図A 白21左辺からのカカリにケイマ受けは白×







 黒23、25とアグラをかいて治まっては極論すれば白負け。したがって、黒21のカカリには参考図B↓

 参考図B 黒21左辺カカリなら白22でハサム







 白22と白は既に資本投下をしてある左辺を大事にしてハサムところだという。このへんが“1970年代囲碁理論”である。諸君は理解できますか?あおきひとしには理解できないのだが、わかったふりをしていた記憶がある。

 参考図C 黒29は上辺ツケからサバいて先手を取り、右上の攻めに回りたい







黒が右下隅で治まり、白が価値の低い(黒から大きな地所は見込めない)下辺で生きているようなら、黒は右上の白の攻めにまわり、一局の碁の主導権を握っている。




posted by 蔵山車理恵蔵 at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

第31期名人戦七番勝負第6局 △高尾紳路本因坊対▲張栩名人 275手完 白3目半勝2006.11.2-3 名古屋








 解説:大竹英雄名誉碁聖(NHK BS-2)
 □黒1〜白4は第2局と全く同じ布石。そして黒5は同じ左上のカカリでも高いカカリだった。参考図Aがそれである。それを黒から避けた、ということは高ガカリ以降の第2局の黒の序盤構想は失敗だったと、張は認めているということか?
 □とすれば布石構想では第4局まですべて高尾がリードしており、実質高尾の4勝2敗だというあおきの説は信憑性を増してくる。第5局が高尾の完勝だったことをさしひいても、このシリーズの流れはまだ高尾の側にある。
 □黒9は控え室の発想にはなかった手。常識的には黒9は左下白のハサミ(6通りあるが)か、左上の開き(二間と三間がある)。
 □とまれ、黒9がこの碁の骨格を決定する。
 □以下、白10〜22までこの二人、今回の名人戦にはそぐわないおだやかな布石である。
 □黒23の肩ツキは韓国流。参考図Bが黒の理想。
 □だから白も24〜30と反発する。案外落ち着いた形で治まった。
 □黒31、33のニ線の後手ハネツギはしぶい。参考図C参照。
 □従って白34の一間も上記に対応したシブい受け。
 □黒35、白36、黒37と意地の大場。
 □黒39、41とまたまたシブいハネツギ。
 □白42は立会い人の羽根泰正九段(中部本人所属。元・王座)が言いかけて「いや、無理か」と撤回したという手。「対局者が一番良く読んでいる」とはよく言われる言葉であるが、このシリーズはことにその観が強い。
 □黒55に対し、白その一間右に受けたいが、そうすれば幸便に参考図Dが先手になる。
 □左辺は黒59〜64とコウになったが、黒65〜69の圧迫が不気味で、黒コウは譲っても下辺を79、81と連打すれば面目は立っている。
 □黒83〜93と危なげなく下辺を割った分、黒リードかな?
 □白94が封じ手。
 □
 □
 □
 □
 □

 参考図A 黒5高ガカリ以下が第2局の張の序盤構想だった






 これは黒石が左辺に偏していて、しかも効率が悪いというのが結果論として出てくる。 

 参考図B 黒23は韓国流






 こうなれば、黒中央が厚く、左上も安定して理想的。

 参考図C 黒31、33ハネツギ






 ここは部分的にはニ線にサガリからの一線ハネツギが両先手4目だが、黒からはあえて後手を引いても先の狙いを秘めている。例えば白34と盤中最大の大場である上辺の開き(双方からの詰めが30目をはるかに越える価値がある)を打てば黒35〜39がこれまた後手ながら白の右下隅を荒らしてデカいし、右辺の黒が立派に二眼をもって生きた意味も無視できない。(実戦では白34と上記の狙いに備えて右下に白が手を入れたため、後に白56の厚いボーシに黒57と右辺の黒石は生きなければならなくなった)更にその後、黒が左上の詰め(盤中最大、30目)に回れば下辺白からのいっぱいの詰めで右下の白石の一団はにわかに影が薄くなる。まあ、この展開で白が悪い、というわけでもないのだが、碁は細かいながらも黒が先着の効を保持し、闘いの主導権は握っているとはいえるのである。

 参考図D 白56で一間トビ






 白56ではつい中央へトビ出すことを考えるものだが、このように黒から中央を連打されると下辺も守らねばならず、白56の値打ちが下がることになる。だから実戦の白58のようなところは双方の模様の接点という意味があり大きいのだ。








posted by 蔵山車理恵蔵 at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月15日

第54回NHK杯2回戦第10局△苑田勇一九段対▲金秀俊七段 208手完 白中押し勝 2006.10.15OA








 解説:森山直棋九段
 □黒5、7とカカリっぱなしにして黒9とシマるのは流行の布石。
 □白10〜黒13と大場を打ち合ったところで、白14と切る。
 □黒15ハサミ〜27と左辺〜左上隅で戦いが起こる。
 □白26のケイマは意欲的(その一路上の一間トビなら普通)だが、反面後に黒からツケコシの狙いが残った。
 □黒29と白30の交換は白46まで、左辺と下辺ともに白が頑張り、なおも白46で一子の切り離し(23目の手)が残った。
 □黒は47〜51の中央の切りに勝負を賭ける。
 □白52から二つに切れた白のシノギ。
 □白56〜70で左辺は一子を切り離して生き。
 □焦点は中央の白の帰趨。
 □黒71〜87と黒の攻めは“取りかけ”の気迫がある。
 □途中黒85は手筋で白が86で上辺を打ったりすろと参考図Aの手段がある。
 □それで白86の戻りはやむをえないが、黒87のノゾキが強烈。白はここをツイでも、上辺を封鎖されて大ピンチ。
 □白88は右辺への進出を狙ったものだが、黒91のノゾキがこれ又キツイ。
 □その前に黒89と白90も交換をしたが、ここは続けてツギまで打ってしまうチャンスだった。参考図Bだが、今なら先手だ。いつでも利きそうな利きではあるが、実はこれが最後のチャンスだった。実戦の黒99のタイミングでは、白全体の生き死にがかかっているため、利いてもらえない。
 □93の切りが拙速。敗着その@/2である。白94が旨い手で一手で中央をシノぐとともに、上辺へ進出できた。
 □黒99とこのタイミングで中央を利かそうとしたが、最早利いてはもらえない。参考図C参照。敗着そのA/2、決定打である。
 □実戦は白107まで先手で上辺に所帯を持ち、取って返す刀で白108と中央に手を戻し(しかも、これが中央〜上辺の白の生きと中央黒の地との兼ね合いで黒109の切りがやむをえない最後、最大の大場である)た上で、白112まで上辺の生きを確かめたのだから応えられない。白は中央の一子をもぎ取られただけで、中央から上辺を黒模様の中に10目の地を持って生きたのだから大成功、勝負はついた。(右辺は白132からの削減の手段が残っていて、黒地は不完全。)
 □黒113〜白130。形勢悪いと見た黒は右下をあえてコウにして白を挑発するが、白は“金持ちケンカせず”生き生きで充分と見る。
 □黒131のツギは23目だが、白132の荒らしはそれ以上はありそうで見合いでもなんでもない。
 □しかも、右上は152ハサミツケの手段がある。
 □黒153サガリから161とコウにしたのは非常手段(参考図Dツギや参考図Eでは負けと見た)。コウになった。
 □右上のコウは出入り73目。右下60目弱。ものが違う。
 □かくして白の勝利は最終的に決定した。
 □では最終的に黒91の前に中央を決めてから、93のところを切らずに引いた図を掲げる。参考図Fである。

 参考図A 白86は手を戻さなければならない






 白86で上辺進出の手を打っていたりすると、黒87以下上辺が切り離されて、しかも中央の白は二子をとってもまだ一眼しかない。これは白、必敗のコースである。

 参考図B 黒91では中央決め






 黒91(あるいは93)では中央(この図の91)を決めておきたい。今なら、受けるしかなかった。この図のように手抜きしても上辺の白は生きるのに二手かかり、その隙に中央を切られ、中央から右辺を大きく黒にまとめられては、盤面30目黒勝である。

 参考図C 白100に手は抜けない
 





 白100に手を抜いて、黒101と中央を切っても、白102の二子取りと、一手で上辺白が治まって(しかも先手。黒103、105の右辺の守りは、実戦のような白からの右辺削減手段があり、守りになっていない)いるのが、参考図Bとの違いである。これは白も106で中央の動き出し、右辺荒らし、と白からの楽しみのみが大きいようだ。

 参考図D 黒153ツギ






 白152にフルえて黒153とツイでワタリを許すようでは、盤面でも白が良い。

 参考図E 黒159でツいでのフリ替わりも同様、白良し。






 これは盤面でも白、圧倒のようだ。

 参考図F 黒93持久戦






 黒93で中央を決めておいて、95に引くのが黒からは白の上辺での手段を奪い又右辺も守った“しゃにこい”手だ。この後、色々やってもたが、どうも白は上辺では一眼しか出来ないようだ。とすれば中央をツイで右辺と下辺の黒を破る算段をしたければならないが、これはどうなるか、あおきひとし程度の棋力では想像もつかない。(なんだか、白死のような気もするし、コウになるような気もしないではない)。やはり、結果的に見て黒はこの図に従うべきだった、かもしれない。













posted by 蔵山車理恵蔵 at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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