2006年11月27日

第47期王冠戦挑戦手合△山城宏王冠対▲松岡秀樹八段 183手完 黒中押し勝








 解説:彦坂直人九段
 □黒1〜白4とまあオーソドックスに並行形に四隅を占めた布石から、最初の戦いは左上で始まった。黒5〜白16は一段落とは言いがたい。黒はここを先手で切り上げていったん右上のシマリを急いだが、この左上は黒も仮普請だし、上辺白も黒7の逃げ出しがある。早晩どちらがここに先に戻り策動を始めるかが序盤戦の焦点になる。
 □だから、ついで始まった右下の戦いも両者先手を取って程々でここを切り上げ、左上に戻るかを意識した攻防になっている。つまりここは主戦場ではないのである。
 □白20で参考図Aの定石は黒25の開き詰めが右上の黒模様形成にあまりりもぴったりでしかも先手では、白としても避けたい。で白は20、22とナダレた。
 □黒23の小ナダレを選んだのは、白が28でノビて下辺を間に合わせて白30の切りに回りたいのであるが、この場合は左上の配石が黒からのシチョウ有利にできているからである。参考図B参照。
 □白が実戦のように28のカケツギで応じるならば、黒29と隅を押さえて隅の攻め合いは黒の一手勝ちである。それでも白は30と切って38まで中央の形を作るしかない。
 □黒39のツケからの中央突破とは過激であるが、プロなら“一目(ひとめ)”の常識的な対応だという。黒は39〜51と中央を裂いたものの“団子石”っぽいし、左右の白はともに眼形豊富に見えるが...(うん、「それがシロートのアサハカさ」とはすぐに分かるんだけど)
 □その中央のふたつの白のうち、まずは右辺。黒51に白52の応接は黒から59のところのカケが先手でぬりつけられるのが嫌だから穏当なところかと思ったが問題だったらしい。
 □というのも黒55のシブイ一間詰めが先手で以下27、59までビタビタ先手で利かされては、ボクシングでいう“カウント8のダウン”を喰らったようなものでほとんどkO寸前の「殴られっぱなし」状態(彦坂P)。
 □下辺も後に左下との関連で85、89、91を先手で利かされるとほとんど“眼ふたつ”状態。かくて黒39〜51の中央突破効果は、右辺と左辺で白を壊滅的な打撃を与えていることが証明される。「プロ野球で言えば満塁ホームランでも逆転できない5点差をつけたようなもの」と彦坂P。
 □この碁を第二次世界大戦に譬えて見ると主戦場である欧州(大西洋)に気を持ち乍ら、“ついでに火事場泥棒”の気分で「先手で処理してしまおう」と安易に考えた枢軸国側が対岸の太平洋で“ちょっかい”を出して(日本が)太平洋戦争を起こしたようなもの、と言える。ところが、連合国側の親玉アメリカが本気を出して(?!)応戦したので、むしろこちらが世界征服戦略の主戦場となったキライがあり、「アメリカにとって、ヨーロッパの戦はいわばEUの内乱のようなものであり、長期的に見ると国境線は元に戻る類の対岸の火事である」事を読み誤まる(詰まり第二次世界大戦を世界を二つ(連合国と枢軸国)に割っての世界戦争と考えた)日本の判断ミスだった、ということになるね。
 □なもんで、白60まで右下の戦いをいったん切り上げて上辺61に回った黒のココロは「この碁の勝負は右下で決着した。とすれば大勢が決した後の左上は黒が命運をかけて戦う主戦場ではもはやなく、辺境地帯での彼我の小競り合いに過ぎない。だとすると、あたら事を荒立てるよりも、ほどほどの応酬で収めて、事態の沈静化を計ったほうが賢い」と言うことであり、それは「金持ち喧嘩せず」の態度であり、「5点差があるなら、アウトをひとつずつ取っていけばよい。4点与えても1点差で勝てばよい」という高校野球のような“守りの野球”だと彦坂P。
 □だから61〜67、白68には69〜73と戦線を二ヶ所ともに退けて敵に実質を与えてもしっかり自陣の守りを固め、下辺77、79に回れば天下の形勢は黒良しと見ている。(黒183で下辺は白の大石がまだ二眼無い!)明るいな、世界の盟主アメリカ。暗いぜ、ニッポン。

 参考図A 白20定石







 白20〜24の定石は黒25の開き詰めが右上の模様化に資して立派過ぎ(白にとって)論外。白26で24から中央に一間にトブのは如何にコミがある白とはいえ後手だしおっとりしすぎている。かといって、放置は黒から中央への打ち込みが強烈で根こそぎ追い立てられる。

 参考図B 白28ノビ、30切りは黒からのシチョウが成立する







 このシチョウが成立するので、黒は小ナダレを選んだ。




posted by 蔵山車理恵蔵 at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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