2006年11月12日

第54回NHK杯戦2回戦14局△山田規三生九段対▲本田邦久九段 白226手以下略 白3目半勝 2006.11.12OA 








 解説:結城聡九段
 □「両者力強い戦いの碁なので、激しい碁になるだろう」との結城Pの言葉。ただ、力強い碁といっても、かつての加藤、武宮といい、山下といい、そしてこの山田規三生とその棋風はそれぞれ個性があり、微妙に違う。勿論、本田邦久も一人一流の主、このNHK杯で優勝したこともあり、先の棋聖戦リーグにも入っているトッププロの一人である。
 □左辺黒11の詰めに山田は手を抜いて左下白12のカカリ。
 □対して本田は意地で13のボーシ。ハザマがあいてはいるが、そこを出てくるなら、左下とのカラミで急戦は歓迎ということだろう。つまり、本田の戦いの碁とは、そんな技巧派のニュアンスがある。
 □対して山田はまずは白14〜黒25と、よくある定石に従って左下を治まる。衣の下に鎧を潜め、一見鈍重な碁である。
 □山田は次に白26〜38と下辺を割って右下と左下の黒を燻り出して、後手でも充分と見ている。
 □白38が来ると、左下の黒は足元を掬われた観もある。放置して死ぬことはないだろうが、黒39の地点に白からハネられると、(左下の)黒は一方的に被告になる。
 □で、黒39と一着入れるのは本手である。ただ、これで下辺から左辺の黒がしっかりつながったかというとそういう訳でもなく、これは黒の模様とまではまだ言い切れないのがやや辛い。あちこちに味があって、それが今後の戦いにどう影響するか(しないか)が勝負の分かれ目になってくる。
 □白40とカカリ、布石に逆戻り。仕切り直し、ともいえる。
 □黒41は上記のように左辺〜下辺の黒の一団を補強しつつ、上辺の白を三線に押さえ込み、白40の(三線の)カカリを悪手にしようというもので、理にかなった判断である。
 □白42では出切りたいが、参考図A、Bのように白石が三つに分断されて不利な戦い。とすれば、上辺は双方生き生きとなる間に黒はがっちりと白8の一子を取り込んで左辺を制し、更に中央と右上の白をカラミ攻めにできるのでこの別れは黒良し。
 □やむをえず白42と這い、黒43と替わる。これは白辛い展開。
 □白44のハサミから50と右辺を盛り上げるが、黒51と急所の押さえは黒に回る。
 □黒51がくると左上隅、白は手を抜きにくい。参考図C。
 □それで白は左上を56まで打ち、先手を得た黒は待望の黒57に回る。この手は白40の一子を制して右上を黒地にして、バカでかい一手ではある。
 □ 黒57に回ったことにより、この碁は黒の主導権で打ちまわしている、とはいえる。
 □ただし、黒が主導権を握って戦いを進めているからといって、形勢黒良しというわけでもないところが、碁の面白い所であり、難しい所だ。
 □つまり、黒は右上は黒地になったといっても、白66〜68と(後手だが)値切る手が残っていて、その前に先手を取るために黒は左上で二子を犠牲にしていることもあって、地合い的には、まだどっちがいい、とも言い切れない。
 □つまり、地合いはほぼ拮抗。厚み、模様はまだこれから、といったところで、形勢判断の天秤はこれからの一手、一手でその都度揺れて、つまり<やじろべえ>のまま。それが、つまり、プロの碁というものだろう。
 □先手を得た黒番の本田はここで長考。
 □黒69は右辺の荒らし、と右下黒の強化を兼ねつつ、左上〜上辺の黒模様の拡大を狙ってはいる。常識的には、参考図Dのハネからの囲い合いだが、それは自信がなかったのだろう、と結城P。
 □黒69には白70と、互いに荒らし。相手の模様を削減し同時に自陣の強化を図る。
 □黒71〜白74を先手で利かした。
 □ここで黒75、77と白76、78の交換が敗着かもしれない。
 □上記の四手はいずれも後手ヨセで、その実質は不明だが、白の76、78は「いかにも大所」という感じがするのに対し、黒75、77は小さくないとはいえ、すでに削減している右辺に二手連打して、「いかにもこだわりすぎ」という気がする。その差は微小ではあろうが、この前後にはこれという問題になるような手は見つからなかった以上、黒の敗因はこのあたりではなかろうか。
 □いわば、白68まで全局面を睥睨し、先手先手と一局の主導権を握って打ちまわしてきた黒が、75、77の二手に限りやけに部分(右辺)にこだわって、ヨセの主導権を放棄した感がある。
 □黒79〜白84、黒85〜白98を先手で利かし、やっと99のツケに回ったが、白106、108を打たれてみると、中央の力関係は逆転、黒模様が白の餌食に変貌してしまっている。しろ112の突き抜けが決勝点で白勝ち。
 
 参考図A 白42出切り⇒左辺の白・死







 白42で出切りは、左辺、上辺、右上と三ヶ所の白がカラミ攻めにあい、とりわけ左辺と中央のどちらかが死ぬ。

 参考図B 白42出切り、別法⇒上辺の白・死







 とまあ、左辺と上辺の白は、両方の生きはない。

 参考図C 白は左上を手抜きできない







 手抜きは左上白全滅。

 参考図D 黒69第一感、囲い合い







 黒69で第一感は右上の双方の模様の境界線のハネであろうが、この展開は先に右辺に巨大な白地を与える上に、右下の黒がまだ生きていないという欠陥を抱えていて、中央の囲い合いに支障をきたす。

 



posted by 蔵山車理恵蔵 at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/27313125

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。