2006年10月07日

第13期阿含・桐山杯決勝戦 △張栩名人対▲羽根直樹NHK杯 160手完 白中押し勝 2006.10.7








 解説:王銘ワン九段、小林光一九段(日本棋院副理事長として対戦に帯同、表彰式に出席)
 □黒5とこちらをシマったのには理由がある。それは下辺の白の配石に関係している。つまり、参考図Aのように、白6で白もシマると、実戦の黒11(参考図の黒7)が絶好で左上隅〜左辺に黒模様が出来て、その後に白が最後の大場右上にカカっても黒一間のハサミが左辺の模様を背景にしてドンピシャで黒良すぎる。したがって、実戦では白も参考図Aを嫌い、白6とただちに右上にカカっていった。
 □白12のカケツギ〜白14ケイマと右上への圧力が弱いので、黒も13のハサミから15、17と左辺の模様を重視する作戦に出た。白12が参考図Bの固ツギなら黒も右辺を一間に受けるのが相場。
 □が、張栩九段は黒番、白番を問わず、定石になずんで相場で形を決めるのではなく、形を決めないまま、戦いの碁にもっていくのがお好み、性分と見えて(それにしては白18の一間がおとなしく、意外だが)、黒19まで左上一帯に及ぶスケールの大きい黒模様の形成を許す。
 □黒19の二間は参考図Cの一間との比較で良し悪し。
 □実戦はしろ20とただちの打ち込み。ここが急所らしい。「しかし、今すぐとは厳しいね」(王銘ワンP)
 □白20は参考図D白24のボーシなら常識的。
 □控え室が大きく首をひねったのが白26のコスミ。張栩の岳父の小林光一九段は「白26が白苦戦の原因。参考図Eが形。」まあ、張とはこういうグチャグチャしたところに戦機を見出す天才なのだね。失敗すると今の名人戦のように滅茶苦茶になるけど。
 □黒27が厳しい。対してすぐ30(参考図Fの白28)のハネは二段バネがあって白窮する。
 □白の対策は白28のツケだ。黒が参考図Gなら白はシノギ。
 □羽根は黒29、31と厚く打つ。白は30〜38と絞るが、この白は黒39とノゾかれると、まだまだ被告の身分。このあたり控え室は黒の楽しみな碁形と見ていた。
 □黒41〜白52と上辺の白を封鎖形にした上で、53に取って返し、“壁攻め”を続行。白54〜72とほぼ治まり形。ただし白はまだ一眼で、周囲の黒がもう少し固まれば、強行な取りかけ(G-12)も成立する。
 □黒は左下73〜77を利かして、右下三々に入る。黒好調の流れに見えた。ところがーーー
 □黒89のコウ構えは左辺白一団へのコウ材を見て悪くない。
 □しかし、黒93のコウ立てを局後羽根は後悔する。というのも、白96の切り込みがコウ材であるとともに、白の大石の命綱にもなるという手になったからである。黒93は左辺に打つべきであった。参考図H参照、つまり左辺はコウ材に関して“両先手”だったのである。
 □白96の切り込みはシノギに強い張の面目躍如たるものがある。黒97に白98、100と捨石を大きくし、利き筋とコウ材を残した。ここで96〜100、106〜108、110と三回白からコウ材が立ち(黒先なら同様に黒から数回コウ材が立った!)これで、右下のコウは黒勝てなくなった。
 □黒はやむなく右下のコウを白に譲り、右辺を黒113、115と連打した。
 □それでも白は116と動き出してきた。「こりゃ、黒いけない。張さんがやっていく以上、ここは手なのでしょう」。張の信用は絶大である。
 □白116〜152でこれは白有利黒不利な一手ヨセコウとなっては、白の大逆転勝利が決定した。
 □ただし、張にもミス手抜かりはあって、白120は参考図Jとするべきであった。 □というのは黒121では参考図Kが厳しかった。
 □とはいうもののこの図でも白良し、は変わらないということなので、要は左辺のコウ立てが全て、それまでの黒良しの流れを黒93の一見フツーのコウ立てが敗着、一挙に羽根は奈落の底に転落したのである。

 参考図A 白6で左下シマリ






 この進行は黒9のハサミが左上〜左辺の黒模様を背景にしたいっぱいの詰めで、黒序盤作戦大成功の図である。

 参考図B 白12固ツギ






 白二立三析に黒一間開きはもうひとつの定石で、白は上辺で黒を左右に割って安定した勢力を持って治まっており、ゆっくりとした局面に持っていきたい白としてはお奨めの形だ。“ゾーンプレス戦法”を唱える王銘ワンP好みの戦法である。

 参考図C 黒19一間






 一間は堅実で、白も荒らし方に悩むところだがスピードに欠けるきらいがある。二間はのびやかでスケール大だが、隙だらけ。要は後の打ち方次第ということになる。

 参考図D 白20常識的なボーシ






 白20のボーシが消しの急所。まあ、白が張だから、これでも戦いにはなるのだろうけれど...。

 参考図E 白26シノギの形と小林光一説






 白26引きがシノギの形と小林光一。多分、張はこの図を“ヌルイ”と感じている筈で、それが埋まることはない世代間の溝。大袈裟に言えば、二十世紀の碁と21世紀のGOの違い。

 参考図F 白28ハネ






 白28でただちにハネるのは黒29の二段バネで切断され白ピンチだが...。

 参考図G 白28シノギの手筋






 白28〜32で鮮やかなシノギ。う〜ん、サスガ、張栩!

 参考図H 黒93は左辺にコウ立てすべき=両先手






 
 参考図J 白120はトビが正解






 白120はトビが正解。以下126まで生き生きが穏やかな分かれで、白優勢。

 参考図K 黒121が厳しい






 実戦の120ハネでは黒からの121ノゾキが厳しい。もっとも、これも慌てないで図のように対応すれば白勝ちは動かないらしいが...。



























posted by 蔵山車理恵蔵 at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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