2006年09月29日

第31期名人戦七番勝負第3局 △張栩名人対▲高尾紳路本因坊 208手完 白中押し勝 2006.9.28-29








 解説:レドモンド九段(NHK BS-2)、今村俊也九段(朝日新聞)、山田規三生九段(NHK BS-2「囲碁ジャーナル」)
 □右下で起こった戦いは、白36、38のコンビネーションが見事に決まった。控え室では「歴史に残る一手」(石井邦生九段=立会人)と評判だった。黒43は屈服である。黒43で44ツギは参考図Aで黒壊滅。
 □白52では参考図Bの強襲が検討されていたが、実戦は白52ツケとしたので、黒53〜白56と双方穏やかに治まった。
 □更に先手を得た黒は下辺黒57〜白62を先手で地を稼ぎつつ、「下辺の黒はまだ生きていませんよ」、と脅かしておいてその分薄くなった中央を黒63と安定させる。
 □この白6〜黒63までをどう形勢判断するかは、意外と難しい。
 □白36、38は白のあげたポイントだが、参考図Bの強襲からの白による中央突破を張栩名人は何か思うところがあったのだろう外して、あえて後手で中央を繋がって、右辺の黒の右上との連絡を許した。これは参考図Bと比較して地合いで30目は違うと思われ、白に傾いていた形勢の振り子はイーブンに戻った。
 □しかも黒57〜62で地を稼ぎまくり、確定地では、右辺21目+右下15目と大きく稼いだ(白の確定地は0目)。
 □しかも62まで右下の地を稼ぐと同時に下辺の白の死活を脅かしている意味もあり、黒63の構えは黒5の存在とあいまって中央から左下一帯の覇権を主張している訳で、いかにも“重厚戦車”高尾紳路本因坊らしい着手ともいえる。解説の今村Pは黒63を「おとなやねえ(大人の態度)」と評価した。(なんか、関西弁で言うと、からかっている感じもうかがわれなくもない。なるほど、俊也康子コンビは、囲碁漫才と称されるわけやねぇ、とヘンなところで納得したわいなぁ<これは、何弁?)
 □白64は参考図Cなら常識的だが、それは張の棋風ではないのだろう。
 □白64ツケに黒65とナダレた。黒65は参考図D押さえとの比較である。
 □黒の意図は下辺の白の攻めながら中央をまとめることにあるから、参考図Eの定石はこの場合ふさわしくないので、黒67、69と変化した。このほうが下辺の押さえ(白79)などが先手で利いて、下辺の白がまだ生きてない意味がある。ただし、この下辺の白の生きは微妙に多数手があり、それを攻めている黒も攻めあぐねると形勢が揺らぐ不安も出てきた。
 □とまれ下辺の攻めはいったん中断し、先手の黒は81と盤中最大最後の大場左上に向かう。黒81〜91はまあこんなものだろう。
 □先手をもらった白は、92と94、96のツケノビを利かし、100と上辺白模様を目いっぱいに築く。
 □100では参考図Fとこちらを囲ったほうが現実的とレドモンドPの意見。
 □実戦はしろ100と右辺を囲ったので、左上隅の荒らしは必定。要はこの上辺の白がどの程度まとまるかがポイントとなった。
 □実戦は黒101〜白130という、黒は打ち込んだ本体を捨てての尻尾の生還という分かれになった。この部分がこの碁のハイライトであり、感想戦でも一番時間が費やされた所だが、勿論結論は出るわけがない。とまれここが天下分け目の関が原であったのは間違いがなく、しかしながらその形勢判断は微妙に分かれた。対局者は白良しという判断であったが、解説のレドモンドPや今村Pは「形勢不明、どちらかといえば黒悪くないのではないか」ということであった。
 □いずれにせよ、両対局者のように白130の時点で白良しとは断定できないのではないだろうか?
 □黒131で参考図Gは検討に値する。参考図の進行を辿れば「黒良し、とはいえないまでも、白良くはない」から白は下辺を後手で素直に渡るのではなく、何か工夫をしなければならないところだ。
 □黒135でも参考Hが考えられる。この図は黒良し、と控え室では判断していたのだが...。
 □黒135,137と先手で左下白地を荒らしたのはいいが、白138の二間開き(16目の手)と本手とはいえ小さい(実質2目しかない)139の実と虚の交換を余儀なくされたのは痛いのではないか?
 □白142のスベリまで打てるのでは流石に最早白が面白いのだろう。
 □黒151となっては、下辺の白ははっきり生きで、形勢は逆転して白のものとなった。
 

 参考図A 黒43左ツギ






 黒43で左側をツギたいが、右下隅は例えば白44で手になる。

 参考図B 白52、右辺の黒を強襲







 参考図C 白64中央






 これがフツーというものだが、すぐさま左下黒65とつけられると、下辺の白の生き方がかったるいので白不満だったのだろう。

 参考図D 黒65は、第一感押さえ






 この図が第一感であり、黒が正々堂々と受ける高尾式横綱相撲の継承である。これでがっぷり四つ、形勢は全く互角である。だから実戦の進行はこの図との比較でその優劣が云々される。

 参考図E ナダレの一常型






 これはナダレの定石のひとつだが、黒はスミの白を固め、下辺の白の攻めも狙えず、さりとて中央の黒模様がまとまるわけでもないので、この場合はトリプルに甘い。

 参考図F 白100は左辺を囲うほうが現実的






 白100と左上で上辺を囲えば、上辺は白地になる確率が高い。右辺からの侵入はしろ114で阻止できそうだし、下辺の白を攻めても左辺〜中央の黒地も左上隅からの展開と中央の黒の囲いが兄弟喧嘩している意味があってそうは大きくまとまらず、この図は黒コミを出すのは大変そうであった。

 参考図G 黒131攻め






 黒131と攻めると白は左下隅で手入れがいる。といっても、後手で渡るのではつらく、中央を黒に囲われて、上辺の荒らしも黒の手番になる。

 参考図H 黒135左下隅攻め






 黒135では二の2からの根こそぎの攻めがあり、黒は中央がふっくらとしている。この図は下辺の白もまだ生きている訳ではなくもう一手かかる気配がある。ということは、上辺の荒らし(白が188に打ったところ=L-14の右コスミ)が最後の大場ヨセの両先手のようなところでバカでかい。この図なら黒勝ちだと控え室は見ていたのだが...。













posted by 蔵山車理恵蔵 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(1) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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