2006年07月29日

第31期碁聖戦五番勝負第3局 依田紀基碁聖対張栩名人・王座 2006.7.27静岡県浜松市ホテル九重 黒2目半勝








 解説:今村俊也九段(『囲碁ジャーナル』BS2)、淡路修三九段(立会人、大盤解説)
 □黒3とすぐカカるのが張栩流。依田の攻撃的な白4,6に我関せず、黒5、7と“韋駄天”を貫く。
 □右上、白8の大斜ガケに黒13と外回りの簡明定石を選択、黒21シマリまでが張のの布石構想。色んな布石を大事な実戦で常に実験する張名人ならではの一着か。黒21は右上の厚みに遠くから応援を送っている、という意味もあるのだが、右上がスソ空きの右辺を地にしようというのは違和感がある、と今村P。黒21では武宮ならずとも下辺の三連星がバランスが取れていて良い、と。
 □で、白22は当然の割打ち。黒23、25の詰めに白22から中央に一間(K-5)に飛べば普通だが、依田は黒21に対抗するかの如く左上星からの白26ケイマ。大盤解説で立会人でもある淡路修三九段は「棋風が反対になったみたいですねえ」と面白がる。
 □黒27がなんともいえない玄妙な利かし。70年前に出現した呉清源の地獄谷みやげの新布石を彷彿させる。「突然新布石の気分になった」と呉は言っていたらしいが...。
 □白28のツケに、控え室では参考図Aが論じられていた。これはこれで相場らしいが、黒39まで実戦の進行のほうがやはり新布石の気分を継承しているようだ。
 □途中白336の三々は微妙な利かし。この先黒からF-5、F-7のノゾキが決まれば左下の黒が強化されて黒37ではなく、B-5とケイマで取りかけにこられる。今なら黒37だから最低コウ生きが残っている。「用心深い依田さんだから、保険を残しましたね」と淡路P。ただし、アジ消しの意味もあり、だから微妙な利かしなのだという。
 □白は右上の貯金が大きく確定地では白が走っている。
 □右辺から中央にかけての壮大な黒模様の真ん中にドカンと打ち込んだ白40。これを見て「荒らし25%で、攻め75%」とは1949年生まれ団塊の世代、全共闘流元祖ゲバルト淡路修三九段らしい表現。
 □黒41のボーシに白は42ツケ以下56とまずはシノギ。
 □黒57は強い手。56の左に押さえて右上と41を連絡しようとするのは、参考図Bとなって黒が一方的な被告になる。ならば、黒57と白の連絡を元から絶って生きていない石同士の競り合いの中から勝機を見出そうという張栩の強い意思の表明である。
 □それで、白58のトビから60のカケが厳しい。
 □それで、黒61とツケ、白62以下を誘って67まで中央に先行し、白が68と一手右辺に手を戻した時に黒69を利かす。
 □対する白70、72が強烈な反発。
 □ここで黒73〜77と今押さえたばかりの69を見捨てて五線を押し切ったのは損を先にする控え室を驚かせた非常手段だったが、続く79〜83が上辺から中央の黒をがっちりつなげ、右辺の白を84と後手で生きさせるなかなかの巧手だった。張栩は「こう打つしかありません」と言い切り、依田も「(右上の黒をせめていたのに、わずかな上辺の実利に惑わされて逆に自らが)白84と生きさせるようではダメ」と、ここの攻防が一局の焦点であったことを局後双方が認めた。
 □続いて黒が85〜89と下辺からの白の根拠を奪って攻めあげたとき、白90〜黒99が黒からのノゾキを避けながら自らを補強した手。先手で一眼を作り、左下隅にはなおコウの余地を残している。
 □しかし白の100はやむなく、その瞬間の黒101〜115が“韋駄天”張栩の真価を見せつけた光速の寄せ。この進行は一方的に黒が寄せまくっているようだが必然で、例えば白114で参考図Dと左下隅のコウを敢行するのは白にコウ材がない。
 □この後も黒は白につけいる隙を許さずがっちりと2目半余した。


 参考図A 黒29大フリ替わり






 控え室ではこのフリ替わりも検討され黒白共に大きな地模様を得て互いになかなかの別れという声もあったが、それは張栩の意図にはなかった。

 参考図B 黒57押さえ〜おだやかに生き生きでは黒コミが出ない






 おだやかな生き生きでは、右上の白地がものを言い、下辺からの白にそれほどの不安がないのなら、白右上で地をリードしているだけに逃げ切りの可能性が出てくる

 参考図C 黒57押さえ〜なまじ強行に黒65、73などと攻め合いに出れば逆に黒取られる






 白62に反発して攻め合いに行くのはかえって黒の取られに終わる

 参考図D 白114で左下隅のコウをしかけるのは白コウ材が続かない






 白114で左下隅をコウにはいけないのだ。











posted by 蔵山車理恵蔵 at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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