2006年12月03日

第54回NHK杯3回戦第1局△山下敬吾棋聖対▲趙治勲十段 256手完 黒6目半勝 2006.12.3OA








 解説:武宮正樹九段
 □なんてことはない布石であるが武宮正樹九段は白7は悪手であるという。すなわち、白12とハサまれた形は黒7が弱い、大きくとりこまれそうな形で「白優勢」とまで断言してはばからない。このあたりの武宮Pの発言は「成る程これがプロの感覚というものか」という“論理を超越した”一流プロの説得力がある。
 □ここで黒はどうするのか、と見ていると、黒13コスミとおっとりとしている。
 □黒13はなんかすましすぎのようで我々アマチュアには評判がよろしくないと思うのだが、武宮はこれがプロの常識、ふつうの感覚であって、「黒13と打って黒が悪いとするならば、それは黒13が悪いのではなく、それまでの黒の打ち方に問題があったのである」とする。
 □だから白14は参考図Aが正着だという。模様は囲うのではなく、広げて戦いを迎え撃つ(あるいは、敵が手をつけなければ大きく囲う)のが碁法だと武宮Pのご託宣。う〜む、真理っぽい。
 □ところが最近の山下敬吾Pは地に辛い。(張王座との王座戦第3局でも山下敬吾の地、張栩の模様という展開になり、山下が地で先行して勝った。)で、白14と上辺の白模様を地に囲った。
 □これには、武宮は露骨に嫌な顔。参考図Bを示し、模様をみみっちく囲うのは良くない、と諭す。なある。さすがは宇宙流本家宗元だけのことはある。
 □したがって白20で手抜きして左辺に割り打ちしたのは、白最悪の参考図Bを避けた賢明な態度ではあるが、黒21と押さえこまれては白良いわけがない。
 □白22〜黒25とまた大場先行の布石に戻る。
 □ただし、趙は黒23という一着にかなりの考慮時間を使っている。黒23はプロなら第一感のところであり、彼がその他の可能性を探ったということは、この23、25の時点で、趙が形勢必ずしも良くないと考え(もっとも、趙自身は昔から悲観派ではあるが)、方針変更した気配がある、という。
 □白26と衆目の一致する急場>大場であり、この時点で白はまだ形勢良かった。
 □だから、黒27〜33は必然として、白34とここで戦を起こす必要は白なかった。(形勢が良い時は、程々の互いに安全な別れで折り合いをつけ、盤面を狭くして安全裡に終局へと向かうのが大人の態度である)
 □黒35〜51となれば右下で(眼のない黒白大石同士の)けっこう厳しい戦いが勃発している。
 □白52は頑張った一着。参考図Cなら普通。
 □黒53は参考図Dのハネといきたい所をグっと押さえて自陣(右辺)を強化して相手に手を渡した“落ち着いた”(武宮)渋い一着。参考図Eの最悪の結果を事前に防止しているのである。
 □白54が黒53に輪をかけた好手。参考図Fの手段を防いでいる。
 □したがって、白54〜68は白が言い分を通した形。
 □黒71は参考図Gとの差で非常にデカイ。
 □白80はやりすぎの感がある。
 □というのも、80で愚直なノビは参考図Hのワタリがあって気がすすまなかったのが災いした。
 □なもんで、白80と頑張ったが、黒81、85とカケられては95まで黒一手勝ち。
 □攻め合いの途中、黒103は固ツギなら確実だが実戦のようにカケツギをするなど、対局者はよく読んでいる。武宮はそれについていけず117になるまで「白逆転か?!」などと騒いでいた。もっとも視聴者の我々だってそれにツラレて固唾を飲んでいたのだから、囲碁(録画)中継番組としては面白いミモノ(番組)にはなっていたんだから、武宮を責めるつもりはない。白114の時点で黒の次の一手を予想できる人は、早碁の生放送中という条件を考えればアマチュアにはいないだろう。
 □中央の攻め合いは右辺の白五子が取られて“つぶれ”たかにみえるが、白も一応はシボリ形ではあり、勝負は決したわけでもない、という。
 □まずは左上を白118〜黒125と脱出しておいてから、白128に詰め右下からの黒の大石に狙いをつけた!
 □だがその前に参考図Jの手段を講じておく必要があったのである。これなら黒の生きはむつかしかっただろう、と思われる。
 □かくして、白128の前のいつでも利くはずの白から中央黒へのノゾキを逃して、逆に黒から129にツケられてはここに節がついて、黒のシノギが楽になった。
 □黒147となれは、ここは連絡形である。勝負はこの瞬間に決まった。黒勝ちである。

 参考図A 白14模様は囲わない







 上辺の模様は囲うのではなく、広げるのが碁法というものだという。黒が例えば15などと動き出しても、それを迎えて敢然と戦うべし、というのが武宮Pのご宣託だ。この図は一例であるが、上辺は戦いになり、結果しろ半目白良し。w

 参考図B 白14悪手







 白14と上辺の白模様をいったん囲い始めてしまうとその保身的な態度の延長線上、@黒15〜白18A黒19〜白22が必然となり、 けっかとして白の上辺の白地は右上と左上の双方がコリ形という結果になっている。つまり黒23までの結果全体的に白地は上辺に偏在し黒模様は全体にバランスよく遍在という対照的な展開になっている⇒黒圧倒的に良し。

 参考図C 白52の頑張り







 白52は参考図Cのカカエが普通であるが、そうすると黒53のアテを利かされて中央の力関係が黒>白になるので、実戦は白52のツッパリで頑張った。だが、それが後に起こる大事件の伏線となる。

 参考図D 黒53ハネは







 黒53ハネの直接行動はこのようになればウマいが、実際はそうはならず、参考図Dの展開を辿ることが予想される。

 参考図E 黒が53ハネなら白54はカワす







 黒53ハネ白54トビの交換は、実は黒の強化にはなっておらず、四つに交わっての中央決戦になると、なんと右下、右辺ともに黒は絡め取られる仕儀に陥るのであった。

 参考図F 白54の効果







 白54があるおかげで、59の切りには60からこの黒が取れている。

 参考図G 実戦の黒71はこの図との差が莫大







 右辺は黒ぼやぼやしていると、このように白から四線で封鎖される可能性があった。だから、実戦の黒71〜白76は先手でそれを防いだ機敏な処置といえる。

 参考図H 白80でサガリは?







 この単純なサガリでも以下白86まで黒の二線でのワタリは許しても上部の黒四子を取っているようだが、黒87で逆に取られ!

 参考図J 白128はひとつ中央をノゾいてからなら事情は違っていた!







 中央の黒にノゾキがひとつあれば、中央と左辺の黒は繋がらず、黒は死んでいた?!














posted by 蔵山車理恵蔵 at 16:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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