2006年06月29日

第26期NECカップ一回戦第5局 △山田規三生九段対▲羽根直樹九段 黒中押し勝 2006.6.17金沢








 解説:小林覚九段
 □白6は近年の発想。「昔とはずいぶん碁の考え方が変わってきましたよね。ボクが習った頃は相手に両ジマリを許してはいけない、って慌ててもう一方の小目にカカったものです」と小林覚九段。
 □黒7〜白16は右辺を先手で切り上げて左上17の両ジマリに回ろうというもの。
 □途中白10はこの一手だが、後に黒23に入ってごっそり荒されると地に甘い。この反省から、山田規三生九段は本因坊戦第5局で似たような状態の時、三線のケイマジマリを打っている。参考図A。
 □白20で山田の手が止まる。一局の骨格を左右する大事な一手だ。右下の白10を意識した三線の一間バサミも考えられなくはなかったが、20と最も地に辛い“石の張った手”を選択した。
 □対する黒21は二間開きなら普通だが、それだと白22の詰めがピッタリとはまる。それであえて四線の大ケイマに打って軽いサバキを目指した。「黒21ではM-3の右下隅の白10のケイマガカリまで迫ってみたい」と小林覚九段。この辺は両対局者間合いを計っている様子が窺える。
 □白22に黒23〜31と羽根はドライに地を稼ぐ。
 □白32では参考図Bのようにカラミ攻めにしたかった。
 □実戦は黒33がりっぱな一着で、参考図Bと比べると黒に余裕が生じている。実戦でも白86とカラミ攻めにあうのだが、その時参考図Bなら右辺は死んでいたであろう。それが参考図Cである。
 □白34〜40は白の攻めだが、黒は右辺に先程33が打ってあるのでシノギには余裕がある。それで黒41と左上から詰めて白42のトビを誘い、その調子で43と力を蓄えて逆襲すら窺う余裕がある。
 □白44の打ち込み以下黒47までは勢いというものである。
 □ここで、白は48と下辺の黒に覆い被さって、にわかに局面は慌しくなってきた。以下黒59まで戦線は拡大、ひと波乱起きそうな展開だ。
 □白64で参考図Dの上ハネは白左辺と連絡できているが、黒から左辺のワタリも残り、上辺の黒の地模様の幅が申し分ない。
 □白66で94なら穏やかな分かれだったが、66、68は最強の路線で、全面戦争に突入した。
 □白78〜82が“筋に入った”格好。
 □黒83、85で左上の白四子は取れるが、白86が大石ふたつを裂いた必殺のKOパンチ。
 □黒87〜93と逃亡を計るが、白は94と上辺黒三子のシメツケの味を狙いながら106と露骨に襲い掛かる。これで黒大石は“鍋に入った?!”
 □黒107〜白124で最低限の黒生きのメドは立った。(白108はF-4ハサミツケなら黒の生きは苦しかっただろう)
 □黒125には参考図Eの白118なら黒の苦戦=もがきは続いていただろう。
 □黒125に白126〜黒137となっては中央の黒は二重に生きてしまった。
 □中央と右辺の黒が相当の地を持っていきてしまえば、左上を取られた白は負けである。

 参考図A 黒23のケイマジマリは地に辛く隅を一手で済まそうという発想






 この対局(NECカップ)の12日後の本因坊戦で山田規三生挑戦者は参考図23と地に辛く隅を一手で済ましまった。普通は一間に開き、上辺左の白へのいっぱいの開き詰めと、右辺の黒5から中央に一間に飛んで右下の黒の地模様を固めつつ右上白の封鎖を見合いにする(あるいは両方ともに先手でうてるかもしれない)のが本格的なスケールの大きい発想であるが、この対局を教訓に、早い段階での白からの三々入りを嫌ったもののようだ。

 参考図B 白32では右辺とのカラミ攻めにするのが碁の法に叶っている






 実戦の白32は部分的にはこの一手だが、その前に忙しく右辺白32、34を決めてから打つとカラミ攻めになって棋理に適っている。

 参考図C 参考図Bを決めて以降実戦と同じ手順で進むと白94で右辺の黒は死ぬ






 参考図Bの白32、34の決め付けがあると、以降実戦通りの手順で進行すれば白94で右辺の黒は死ぬ。

 参考図D 白64上ハネは黒歓迎






 白64の上ハネは白、左辺と連絡ができるが、黒の上辺の幅が申し分なく、左辺の黒のワタリの味もあり、中央も厚いので黒満足。

 参考図E 下辺白108と中央白118なら、黒は生きるのに苦しんだ






 白108に打てば下辺はコウだし、中央も白118で黒の包囲網は成立している。






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2006年06月26日

第61期本因坊戦七番勝負第5局 △高尾紳路本因坊対▲山田規三生九段 黒中押し勝 2006.6.26/27








 解説:石田芳夫九段、王銘エン九段、加藤充志八段
 □黒の中国流から、白が下辺6、8と下辺を占め、黒が左上カカリから三々入り、すると今度は白が右上にケイマカカリから二間に開くという、やや古典的な布石である。
 □白20のカカリは上辺からが普通。白はそれだと黒47あたりのぼんやりとしたハサミツケを嫌ったものか?
 □それでも黒23などは隅を一手で打ち切るドライな現代流だ。普通23では一間に高く開き、上辺K-17と右上の白にいっぱいに詰める手と、右辺の黒5から中央への一間トビ(P-9)から右上の白の封鎖を両睨みにするところだと石田芳夫九段。
 □それで、高尾も地合いのバランスを考えて、黒25、27にいったん手を抜いて白28〜43と先手で中国流からさらに黒7と一手かけた右辺下の黒の地模様と見えた所を、コウ自慢をいいことに、先手で荒らし4目の確定地をもって収まり、白44と手を戻す。この右下の分かれは控え室でも評価が分かれた。王Pは「黒、面白くない」説。逆に加藤Pは「黒の我慢に感動」とさえ云う。
 □山田が左上(の黒地=三線で低い)とのバランスから右下は黒45とケイマに受けるのにあわせ、白46ケイマと名調子である。
 □ここで山田“ブンブン丸”は怒り、黒53、55と剛直に左辺をまとめようとするが、高尾は白56、58のツケハネから一転、60、62とこのライン(黒の四線と白の五線)で手を打つ算段。“三段扇子”のあおきの理解を超える高等テク?!参考図Aのカケツギではダメなのか?
 □黒63の意味がわからない。どうして普通に参考図Bと四線を引いて左辺を黒地にまとめないのか?これだけでは不満なのか?それとも白からなにか手があるのか?
 □とまれ、黒63と不可解な手の次の白64を高尾は封じた。
 □あおきの封じ手予想は白64でC-10アテ。参考図Cのコウはコウ材白有利なので戦える。白アテをふたつも利かしてツギツギの寄せ⇒囲い合い(参考図D)になればコミがかりで先番の白有利な半目勝負の一点買い。三連単で万馬券必死!(ここまでは、第一日目に記述)
 □[これより二日目]封じ手は予想外の右上白64ハサミツケ。だが、この手はT-16の一線での遮りと替われば白は右上隅で後手で生きねばならず、すると上辺の黒が固まり、その結果左上の白が弱くなるという理で否定的な声が高かった、らしい。
 □だが、高尾には高尾の言い分がある。(以下はあおきの結果論からの推測なので眉唾)「白64は左辺同様、様子見である。近い将来上辺で起こる戦いには、この時限爆弾が上辺の黒の目を内側から奪うことを狙った利かしと考えればよいのだ。黒が一線に下がるならいったんそこはおいておいて、他に回る。黒も二手かけてまで取り切る余裕、度胸はないだろうし、だったらここは寄せの最もよいタイミングで打てばよい。」という高等戦術。つまりは、上辺の頃の動き出しに備えた仕掛け作りであって、左辺も同じ発想だ。
 □案の定(ということは、高尾の目論見通りに)、黒は65〜69と動き出した。
 □とすれば、70と71を交換すれば、上辺の黒は目が怪しくなってくるので、白72ノビには後手で黒73と上辺を生きなければならない。
 □ということは白は封じ手の白64以降から数えて先手で右辺と右上隅が連絡したことになり、これは隅の黒地の目減りもさることながら隅の一眼がモノを言って右辺の白がいつのまにか立派に生きてしまったことを意味する。
 □されば右辺は上下に白石が完全に生きているわけであり、必然的に右辺の黒模様の断点(黒29と39の間)が黒の一方的な負担になってくる。
 □だから、遡って、白64の時直に黒65と動き出したタイミングが問題になってくる。左辺と上辺は睨み合いの関係にある段階で先に動いて旗幟を鮮明にしてしまったのは、敵に攻撃目標を与えて時期尚早ではなかったか、という論理である。
 □というわけで、白72と73の交換をした段階で始めて控え室では「白乗り」の声があがる。中空で揺らいでいた天秤棒が白側に始めて傾いたのである。
 □もっとも、白64〜黒73の間に、黒も65、67、69と一応不安定ながらも周囲の白も強固とはいえない中で打ってはいるわけで、、ここでの彼我の力関係を考えて白は白74〜黒85を決めてしまう。
 □つまり、左辺は黒模様の中でコウ(コウなら白は近所コウも多く楽生きはできる)で生きる道もあったところを、左辺は黒に地を与えて、そのかわり五線に六本這って外壁を固め、中央の黒の浮き石の攻め一本に絞り、あわせて上辺の白の薄みもカバーしてしまおうという心算だ。
 □ところが、この決め付けが外野の評判が芳しくなかった。高尾本人も「白74の前にG-14に両ノゾキ(参考図E)して黒の応対を聞いてからでも左辺の始末は遅くなかった」という反省の弁がある。
 □参考図Eと上をタケフについで戦っても黒芳しくないので、黒75では参考図Fと右側をツグ。これが、この時点での両者ベストの進行で中央はフリ替わりとなり両者は一気に安定する。ここの得失は両者まあまあで、先手の黒は下辺の打ち込みにまわるが、白は仮にふたつにわかれてもここでそう大きな被害を受けることはかんがえられず、となれば、左辺のコウ、右辺の切りとデカイ狙いがふたつも残っている白により楽しみの多い展開であったかと言われた。
 □つまり、実戦の白74〜85と白が左辺を捨てて取り組んだ中央の戦いは白に勝機はなかった、という断が下ったのである。
 □事実白74〜黒85を決めてからの白86、88のノゾキは左辺が決まった後なので黒87、93というこんにゃくのような対策も立てられて、これがなかなかなのである。
 □しかも、左辺は五線に六本壁といっても黒57に突き出した黒石ひとつが光っている。おかげで、下辺の黒89、91、95の荒らしも楽々と打て、しかも後に実現する中央との連絡(黒123)(の可能性)もあるのだ。
 □とにかくこのあたりは勝負に直結する、死活がらみの険しい読み比べなのだ。
 □なりゆき上白94とボーシするが、97とケイマに受けられて中央の黒は楽生きのムードが出てきた。黒57、95、97の三角形かなにやら左辺の白を包囲している観もありここでは「黒乗り」説が俄然有力になってくる。
 □その時に出た白98、100、102のコスミ、ハネ、切りの“三点セット”が白の用いた非常手段だった。白104の頭ツケが黒のシチョウを防いだ“鬼手”で、以下110まで黒は白104の一子を取りこみ、白は黒101、103を切り離した。
 □そこでいよいよ、黒は111とここを切断する。中で生きれるのか、上下どちらかの白と刺し違えるのか、その選択権は白にある。
 □白112は最強である。参考図Gの白112(実戦の黒117の所)に出ていくのがこの攻め合いの急所である。これは戦いではなく第一回目の和平策であるが、検討に値する有力策だった。といっても、これは形勢不明なのであるが。(局後の検討では高尾は「白悪い」と言った模様である。)
 □というのも白は実戦の白112と強攻策を取り続けたものの、結局黒123のツケにはふんばることができずに白126と取って妥協(白九子と黒三子の交換は明らかに黒の儲け)し、白130と上辺に手を入れて黒131のツギを許し(白130で131と切って先に儲け、上辺はシノギ勝負に出るという博打もありえた。その攻め合いの上辺白の生き死にの確率は五分五分)という具合に肝心の勝負所で後退策を取って、それで形勢白悪い(盤面十目黒良し)では話にならない。
 □いずれにせよ戦争か平和か、それを選ぶ権利は白にあった。
 □和平策の第二の機会は白18で参考図H上辺ツギである。
 □そして和平策の最後の機会が白122で左上を捨て、中央の白に手を入れようというもの(参考図J)である。
 □上記三つの和平策は112>118>122の順で、白により形勢が良いようである。つまり、どうせいつかは戦(いくさ)を止めて手打ち式を行うのなら、その機会は早いほうが、この碁の場合より有利な条件で休戦条約が結べたということだ。
 □ところが実戦はKO勝ちを狙って戦いを引き延ばした第4ラウンド、黒123のパンチが飛んできた時、白が行ったことは“転進”!太平洋戦争におけるガタルカナル島の攻防のように“矛先を他所に向ける”とは言葉のアヤであって、実際は降伏(無理に反撃すれば、参考図Kの経過を辿り、上辺の白が壊滅する!)だったのである。
 □ここで実質的に勝負は終わっているのだが、最後に白130で右辺の黒を切り取って莫大な利益をあげて地所で黒を上回り、上辺はシノギに懸けるという博打(確率は49%)が考えられた。参考図Lのようにコウになれば高尾も見せ場がつくれたのである。
 □実戦は上記三回の和平のチャンスをことごとく逸し、攻勢にあった筈がいつのまにかずるずると後退を余儀なくされ、一打挽回のバクチを打つ機会も逃してあえなく白は土俵を割ったのである。
 □なまじ、勝つチャンスがあっただけに優勢での和平、劣勢での乱戦、それらのどの戦機をも捉えることができずにジリ貧に回った、高尾にとっては悔いの残るゲームではあったのではないか?

 参考図A 白56、58とした以上、白60ではカケツいでコウ生き






 白60カケツギからは、コウになっても近所コウも多く生きは楽に見えるのだが...

 参考図B 黒63で常識的な(白の要求でもあるだろう)四線のヒキでは不満なのか






 黒は左辺が四線で37目の地がまとまるのは不満だというのか?それともここは白から手が生じるというのか?よくわからない。

 参考図C 封じ手は白64アテ、コウ自慢 コウ突入編






 白64のアテに黒もコウで対抗すると、白は左上と右上、それに近所コウもあり徹底抗戦して頑張り切れるとみたが...。

 参考図D 封じ手は白64アテ、コウ自慢 黒コウを避け、和平⇒囲い合い編






 右下隅への白の打ち込みでは、コウ材豊富を背景に白がコウを誘って黒はその挑発に乗らなかった経緯があり、ここでも白64アテにいくというのが第一感。ここでも黒が譲り、白カケツギと穏やかに治まった図。以下双方囲い合いになれば半目勝負の様相に。

 参考図E 白74では中央を両ノゾキして応手を打診する






 白74では、左辺を決めずに、こう露骨に両ノゾキして黒の態度を打診するのだった、と高尾。結果論であるが、黒も今なら黒75タケフにつぐしかなく、それなら白76と黒の二間の薄みをケイマで破り、先手を取ってここで開戦してしまおうという作戦である。ここが急戦になった場合、左辺は決めてないほうがダメの具合もあって白には都合がよい、という発想である。

 参考図F 検討結論=白74ノゾキに黒75ツギがベストだった。






 局後の検討では白74ではこの両ノゾキ、黒はタケフでは戦いきれないとして75ツギ以下のフリ替わりが、ベストの進行であり、白有望のラストチャンスだった、ということになった。黒先手で下辺の85打ち込みに回るが、下辺の白はサバキが楽だし、タイミングを見ての左辺をコウにして根こそぎ荒らす展開と右辺の二子切りという大きな楽しみが残っていて白望みが持てる図だという。つまり、実戦の白74〜85を決めた瞬間に白勝ちは無くなったという厳しい判断だ。

 参考図G 白112は有力な和平策






 白112は和平提案である。左辺に多大の投資(白二子を捨石にして左辺を黒地にした代償に白は左辺の第五線を六本塗りつけて壁をつくったこと)をしてから開始した戦いを、黒111と切られて決戦の火蓋が切られたトタン休戦に持ち込むというのは気合が悪いようであるが、白72黒73の交換で得た白の利得で全局をリードした状態で和平を図るのは、僅かなリードを確定して終局へ歩を着実に進めるという意味では大人の態度というものだったかもしれない。白が中央の白を生きれば、黒も中央を生き、白が上辺の安定を計れば、黒も中央〜右辺の嫌味を消す、という按配で、先手を得た白が下辺から大寄せに回れるのである。

 参考図H 白118徹底的和平策






 白118は117に次ぐ眼形の急所で、ここに一着あれば上辺の白の生きは容易である。仕方なく黒は中央を生きることになるが、そうすれば中央の白も生きて、参考図Fには劣るものの、これは優位のままに休戦に持ち込む第二の機会であった。

 参考図J 白122左上は捨てて中央をまとめる






 白122では左上七子は捨てて身軽になり、その替わり中央の白を強化すれば容易には負けない、かもしれない。(まあ、それは控え室の無責任な観測であって、高尾はとうに読んでいたのだろうが...)

 参考図K 黒124で反攻は白壊滅






 黒117、121という彼我の眼形の急所をふたつとも黒に占められてからの黒123の攻めの段階では中央の力関係が逆転([白>黒]⇒[白<黒])していて、白124、126と左辺の白を助けても、中央が決壊して上辺あるいは中央の白が大きく取り込まれる。

 参考図L 白130は右辺を取り切って上辺はシノギ勝負






 上辺はシノギ勝負に出て、コウにでもなれば勝負の行く末はまだ不明(勝率49%?!)ともいえる。少なくとも、実戦のように決戦を回避し続けて戦機を逸するよりははるかに可能性がある。






posted by 蔵山車理恵蔵 at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月25日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △柳時薫九段対▲金秀俊七段 黒中押し勝 2006.6.25OA








 解説:趙善津九段
 □右上隅が白4〜8となった時、金は手を抜き、黒9、11と左上〜上辺に展開する。
 □白12は省けないが、黒は13と白10を挟んで先制攻撃をかける。
 □白14〜18は黒の攻勢が効を奏している格好。
 □黒19のカケにこれ以上の屈服は耐えられないと白20、22、24と出切るが、黒25の突き当たりが落ち着いた“場合の一手”。封鎖と左辺のツケコシを見合いにしている。
 □白26〜36は白30が重複気味で、上辺左上隅を制してはいるがコウ残りで気持ちが悪い。
 □黒37〜白40はこんな相場。
 □黒41〜57と右上の白に手をつけていく。
 □白60と肩ツキで白を寛がせたとき、黒63〜65が険しい攻めで、白も66割り込みで応戦するが、黒67、69で左上隅が懸案のコウになる。
 □結局コウは白がツギ、黒は77、79の連打となる。
 □白も80と上辺の白を動き出し、上辺から中央にかけて黒白ふたつづつの弱石どうしの険しいつばぜりあいが起こる。
 □途中黒85とついだのが頑張った手。左上隅の白への手段を見て左辺〜中央の攻め合いの味を見ている。
 □白86〜91と先手でシボリ、92、94と左上隅を一応制した格好。(だが、後に実現するが、左辺の白が一手かけてセキにすると、それは左上隅に波及して隅の黒石の逃げ出しが残ることととなった)
 □そこで黒も95とトビ出して一息ついた。
 □すると白は96=上辺、98、100=中央とシノギに忙しい。
 □黒101と左辺を生きにかかったとき、白108、110という右辺と中央の白の補強は必要だが、その前に白102〜黒105の割ツギをきめたのが大問題だった。
 □ここのダメが詰まったため、上辺は白106〜122とあがいても、黒123の打ち欠きで死んでしまった。
 □白124〜黒131は左辺の白をセキにして黒地をゼロにしたものだが、その間に黒127に石が来たことによって左上隅の白地に黒からの手が生じ、中央黒29のコスミがきたことで中央の黒がずいぶん楽になっている。
 □黒131の時点で形勢判断。黒地は上辺42目+左辺10目+右下9目の計61目。白地は左上6目+中央6目+左下10目+右辺22目+α+コミ6.5目の計50.5目。
 □結果論からすれば、上辺の白が死んだ時点で勝負はついている。しかし、この時点では確定地で黒のリードは10.5目に過ぎないともいえる。
 □次の手番は白であり、中央の薄みを睨み(中央の黒石は死ぬことはないが、攻め合いになれば、上辺の白を取るのに10手手数がかかり、これは是非とも避けたい事態である)つつ、右辺の白の地模様の拡大を計りながら右下の星の黒を攻める、という一石三鳥の手があって、傍目にはまだまだ先行きはわからないと思えた。
 □事実、白132のカカリに、黒135と中央の黒を寛げ、白138の両ガカリを許した時点では右辺と下辺の白の地模様がぐ〜んと盛り上がり、地合いでは白逆転したかに見えた。
 □しかし寄せでの黒の頑張りが凄かった。
 □黒149は解説の趙善津Pも驚く踏み込みであり、白176となってみると黒は先手で右辺の白地を大幅に削減(黒149で右下169あたりに手を入れて、白150押し上げから先手でまとめる34目がなんと22目に目減りしている!)してる。
 □また白180の時点では30目近いかと見えた下辺が、黒213の飛び込み(白214で参考図Aと左側を押さえても右側と攻め合いになる先手寄せとなり、無駄はない)と、233のケイマという鮮やかな寄せの妙手によって24目にまで目減りし、その裏では左下の黒地が当初見込みの10目から22目と大幅に増加しているのだ。ということは左下一帯で黒は出入り18目の利を得たことになる。
 □黒253を見て柳は投了したが、この後寄せれば10.5目差で黒良しとなる。

 参考図A 黒213は無駄のない先手寄せ






 白が214で左側を遮っても、右側との攻め合いにもちこんで、無駄のない先手寄せになっている。


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2006年06月21日

第15期竜星戦本戦Aブロック10回戦 △小林光一九段対▲羽根直樹九段 白9目半勝








 □先番の羽根がジックリと手厚く打ち進めるのに対し、小林は全局を足早に立ち回る作戦。
 □羽根が黒43まで右下に手をかけている間に、白30,38、44と大所へ先行。全局的には白に不満がない進行。
 □黒67,69、71と上辺で白を分断していったので、急に険しい局面に。
 □白は90までと黒四子を飲み込み、黒は99までと左上隅の白を制する派手なフリカワリとなった。この交換は白地18目と黒地26目の交換で、黒儲けたようだが、白が黒を完全に取り切って安定しているのに対し、白は72のところに切りが入っていてこれが動き出すと中央の黒三子が浮き上がる仕掛けになっているのが白の狙い目。
 □ここで、形勢判断。黒は左上隅26目+右上隅10目+右下12.5目で計48.5目。白は上辺18目+右下隅2目+左辺16目+コミ6.5目+左下と中央の味で、計43.5目+左下と中央の味ということで、この五目差と白の権利の“左下と中央の味”が今後どうかかわりあってくるかが見所だ。
 □果たして白は102とただちにこの白を担ぎ出す。狙いが下辺の黒とのカラミ攻めであるのは言うまでもない。
 □白114(これがF-14引きではなく、ノビであるところがプロの凄みだよなぁ)までで上辺での戦いは一段落。
 □先手を取った黒は115とツケ、戦いは下辺へ移った。
 □白124、136と白は中央〜下辺の黒を上下に分断する。
 □黒137のアテに手抜きしての、白138と封鎖したのが強手。これで下辺の黒は白の包囲網の中に孤立することになった。白の勝着である。
 □だから、黒137では参考図Aととにかく下辺を逃げ出さなければならなかった。
 □白138と封鎖されては下辺の黒は苦しい。
 □黒139ではともかくコウを決行したかった。参考図Bである。これなら黒は中央に最低ふたつは近所コウがあるからこのコウは黒勝ちになる。そのかわり中央は白に与えることになるが、白の得た20目以上のものを黒は下辺で得ている筈である。
 □つまり、下辺の黒は出入り50目なので、参考図Bは黒楽勝である。
 □ところが実戦は黒139、141,143を使ってしまってからコウに入ったため、下辺は白のもの(白50目得)、コウガワリの右下隅の白取りは黒42目得、この差し引き8目差がそのまま勝負に直結した。

 参考図A 黒137トビで下辺を逃げる






 黒137と下辺を逃げておけば、中央は白138の切りが来ても、黒139ノゾキがうまい手で下辺、中央の黒はともにシノいでいる。

 参考図B 黒139ではともかくコウ






 黒139の時点でコウに持ち込めば、黒は中央に二コウある。白は144のノビの一コウしかないから、このコウは黒勝ちになる。そのかわり白156、158の連打を許し、白は中央の黒を取るが、このフリカワリは黒悪くない取引のようにおもえるのだが、どうだろう。



 


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2006年06月19日

中日囲碁交流功労賞受賞公開早碁対局 △聶衛平九段(中国)対▲藤沢秀行名誉棋聖(日本) 白中押し勝 2006.6.4 北京








 解説:坂井秀至七段
 □黒23では「凡人だと、黒24にノゾいてしまいそうですが、23のほうが石に張りがあるのです」と坂井秀至七段。
 □「黒31まで突っ切っては黒がいいはずです」
 □黒47は秀行得意の“ポカ”。参考図Aならば「黒断然良かった」

 参考図A 想定図=黒断然良し?!






 黒が上辺を普通に生きれば、白は左上にもう一手かけなければならないので、先手が黒に回り、「断然黒良し」と坂井Pは言うのだが...。
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2006年06月18日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △加藤充志八段対▲苑田勇一九段 黒1目半勝 2006.6.19OA








 解説:武宮正樹九段
 □「碁がキレイな二人」と武宮正樹九段
 □右上の折衝で黒が先に打った3と関連させて11と大ケイマに締まったため、白は手を抜いて、左下隅星を占める。M-17に押さえるのはQ-17と両方利かされるのを嫌った。
 □その白の手抜きを咎めて黒13、15は後手でも地も確定し(14目)厚い。
 □白16のカカリに武宮は上ツケ(P-5)を推奨する。既に黒が先に展開している右辺に白を追いやり、左下の白の星と右下の黒の小目が対峙している下辺が、どちらからも先着したい第一級の大場なのだ。
 □その意味では、白18では参考図Aのyぽうにナダレて、下辺を白の勢力圏にするのも有力だった。
 □白20で参考図Bのように白が上辺で根拠を持つのは良くない。白は上辺に遍在しているが、そこは黒1、9と黒の先着してある場所で感激が薄く、上辺で孤立している白石との連絡もできていない。又、下辺に黒21と先着されているのも痛いのだ。
 □ここでは白20が、22の肩ツキと関連して、右辺〜上辺一帯にふんわりと大きく構えた、全局的見地から見た好点。
 □勢い黒23〜27の出切りになるが、この戦いは白も歓迎。28に白石が来て自然に上辺の白が厚くなっている。
 □黒29は右辺の地を気にしたもの(ここに白石が来るのとの差は確かに大きいが)だが、白30と変わって中央の力関係で白が優位に立っている。
 □黒31、33に白32、34とかぶさってきて、中央は白が一方的に攻めているように見える。
 □黒37のトビツケが鋭い。
 □白38のハサミツケは非常手段といってもいい。
 □黒43がかっこうのつけすぎ。愚直に48のところにツいでおけば何のことも無かった。
 □白44、46、48、50が絵に描いたような手筋で上下いずれかの黒が取れている。
 □黒はやむなく下方を見捨てて、49、51、53と上辺に猛攻をかける。
 □白は54〜61と右上を利かし、64〜72となんなく治まれば、白成功ムード?
 □右下はひとつの定石。
 □白88ツメは左下の黒に迫る急所ではあるが、黒からその右上あたりにカケられるとシチョウアタリになる。
 □しかし、黒は冷静に89とおとなしく受け、90のシチョウあたりを防いでのカケと替わる。
 □これは白成功の図だが、「黒は形勢良し、と見ている。しかし、ヌルイともいえる」と武宮P。
 □黒は91から左辺で策動を開始。
 □93ヒキから95アテを利かし、97、99と変則的に白を裂き、黒101、103も際どく利かし(隅と左辺をフリ替わる図もあったが、左辺の黒が取りきれるとは保証がなく、白は形勢有利と見て安全策を取っている)、105、107、109の三連発が鮮やかに決まり、113が「ビューティフルな」(武宮P)仕上げ。黒は余裕を持って左辺の黒をシノいだばかりか、上辺白の大包囲網が完成しては、はっきり逆転だ。
 □白178はダメ詰まりから、182の置きを狙ったもの。下辺の攻め合いの味もあって黒183はやむをえないが、左下隅はコウになった。
 □白はコウ代わりに中央を大きくまとめた(3目の地が20目に膨れ上がった)が、黒は中盤の貯金がモノを言って、辛くも1目半余した。



 参考図A ナダレ







 参考図B ありえない






 白20、22と右辺で治まるのは、「プロでは、ありえない」と武宮。黒が1、9と先着している上辺に後から地を持つのは感激が薄く、その間に黒21と処女地の下辺に黒から先着されているマイナスと合わせて二重に悪い。






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2006年06月16日

第15期竜星戦Fブロック9回戦 △園田泰隆九段対▲宮本義久九段 黒1目半勝 






 

 □白18では下辺に一着入れるのが定石。左辺をいそいだのは全局を足早に打ちまわそうという積極的な意図。
 □黒21と押さえ、白の手抜きを咎めにいったのは当然の気合。
 □白22と辛抱したので、黒23と二立三セキの穏やかな別れとなった。
 □白24〜26は大場。
 □黒27白28は根拠を固める大事なところ。
 □先手を得て黒は29と白模様の急所に打ち込んだ。
 □白44、46と黒の根拠を奪って54と急所に迫ったのは、右辺と下辺の黒をカラミ攻めに持ち込もうという作戦。
 □黒は下辺を二子を捨石にして先手でサバいたのがお手柄。黒71と右側の四本柱がほぼ連絡形なのが自慢である。
 □その先手で黒81以下右辺の白をキリキリと攻めあげ白94まで先手で目二つにされた形はつらい。
 □黒97、99は後手でも双方の根拠に関する要点で、下辺の白はまだ完全な生きではない。白100に匹敵する厚い一着である。
 □中央黒101〜105は中央の黒の厚みを地にしつつ、左下の白に睨みを利かせている。
 □たまらず白は106とコスんで左上一帯の白模様に芯を入れる。
 □黒107と打ち込み111、113を囮にして左上隅で無条件でコミ分の地を作れば満足だろう。
 □白122が中盤戦の手止まり。
 □形勢判断は黒左上6目+左下16目+右上22目+下辺1目+中央13目で計58目。白は左辺7目+α+上辺15目+下辺左5目+下辺右17目+右辺3目+コミ6.5目で計54.5目+α(左上中央の余禄)と微細ながら、やや黒リードか。
 □その問題の中央〜左上を黒123〜白132と先手で荒らす。白132と受けなければならないのは辛いが、先に黒97、99と打って左下白がまだ生きてない名残りなのでやむをえない。
 □そこで出た黒133、135という二つのコスミが俗手ながら確実な先手寄せ。このふたつを先手で確実に打てたことで黒の優位は確かなものになった。


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2006年06月12日

第61期本因坊戦七番勝負第4局 △山田規三生九段対▲高尾紳路本因坊 2006.6.12/13 佐賀県唐津市








 解説:結城聡九段、黄翊祖七段、大竹英雄九段(『本因坊戦』NHK BS2)
 □白8で参考図Aと打てば部分的には第3局の再現である。山田規三生九段には是非ともそのように打ってあの判断(第3局の黒21の立ち、参考図Aなら白22、L-5)は正しかったと居直り、因縁勝負、“本因坊戦定石”を創り、坂田三吉のように棋戦史上に残る浪花棋士の伝説を作って、本因坊戦シリーズを盛り上げてほしかった。
 □黒9では参考図Bが基本的な定石。
 □実戦の黒9大ケイマは参考図C白10スベリならR-7の開き詰めまで歩を進める意図。
 □黒13で最も穏やかな手は上辺の治まりであろう。参考図D参照。しかしこれは碁が細かくなって、白も一息つき、そのまま寄せ勝負に進めばコミの負担が大きい。それで、実戦黒13と上辺右の白6、8の二子の根拠を奪い、厳しく攻め立てる手を選んだ。
 □白14の打ち込みは気合である。
 □黒も他の手ではワタリがあって甘いと見て、剛直な黒15のサガリで対応。
 □自然、白16〜黒35と、上辺で黒白ともに二群の弱石同士が中央へ激しい鍔迫り合いを開始した。
 □白36のコスミは左辺の白を安定させつつ上辺の白に応援を送る“よさげな”コスミ。
 □ここで黒は37とノビ、白はコスんで黒39の中央進出を許すが、その代償に40と形よく黒の頭をハネる。
 □黒41は渾身の気合を込めたハネ出し。
 □白は当然42と切り、チャンバラだぁ〜!
 □と思ったら、黒47〜51と左上隅の実利(出入り30目)を取り、白は50,52と要の黒一子をポン抜く(と〜じぇん、“ポン抜き30目”)。険しい戦いになるかと思いきや、意外な妥協?!は“大人の態度”(?!)
 □このフリ替わり、局後の感想では双方ともに「よくわからない」。まっ、え〜加減の別れということか。ただし、控え室は大竹、結城といった面々=“厚み派”だから、白52とポン抜いた白持ちの空気が流れていたようだ。ここらあたりが、対局者とは違う。
 □そこで、形勢判断。黒地は左上15目+左下6目+右上12目で計33目。白は左辺14目+右下6目+コミ6.5目+全局的な厚さαで計26.5目+α。次は黒番だが、確定地6.5目のリードとそれに対応する全局的な白の厚さをどう判断するかで、次に打つ手が決まってくる。
 □黒53は長考したであろう。
 □中央で頭ひとつ抜き出た黒39の顔を立て、92(M-9)にケイマして右上の白を圧迫するのも気持ちのいい一着であるが、そうすると白を右辺の黒地、Q-11あたりへ追い込んで良いか悪いか分からない。
 □もうひとつ目に付くのが、中央の黒と白の大石同士の競り合いはひとまず置いて、布石で手を抜いている右下の黒を動き出す常識的な展開である。参考図F。だが、これは自然と右辺に白石が来て、右上の白も安心させてしまうことになる。
 □そこで、黒53では右辺の実質を取り、実利で徹底的にリード(上の形勢判断よりも10目増えて、16.5目黒リード)、上辺、右下(および左下)はそんなにシノギに不自由はしないという作戦。この時点であおきは黒乗り。
 □で、当然白は“宇治川の先陣争い”、56〜60と中原に一歩先んじて駒を進め、黒61の備えを見て封じ手。
 □しかし、局後白の山田規三生九段は封じ手の62〜84を悔やんだ。
 □白は中央から下辺へ先行して進出しているものの、右下、中央、左下の三方の黒に圧力を加えたものの、いまいち迫力に乏しく、気がつけば後手で、右下からは83とトビ出されて中央と右下は裂かれていて、おまけに中央と下辺の切断さえある!
 □それらの傷を睨みながら黒は右下を悠々と生き、おまけに黒103右辺開き(両先手気味30目)の大場さえ打たれている。
 □ただし、控え室はこの時点では形勢不明説が主流で、白76では下辺の黒に喰らいつくのではなく、左辺に開き詰めを打って白優勢、という説が有力だった。参考図Gである。
 □白104、106は白必死の反攻。
 □黒111の出切りから、115、117と左辺の白に大攻勢をかけたが、城122が妙手。参考図Hのコウは黒にコウ材がなく、中央の黒が死ぬ。
 □やむなく、黒は129まで中央に手を入れたが、黒は中央、左下ともに生死は微妙。その間に白は128を打ってしっかり左辺を立派な白地にしては形勢不明か?
 □白は190の黒一子抜きと、左下黒C-1ハネの生きの先手交換をいつでもできた。(実戦は逆に黒167〜171の逆寄せ後手3目<=倍の6目の価値がある!>を打たれてしまった)
 □白148は参考図Jと打っておけば勝負は分からなかった、と山田Pの反省。
 □というのも、参考図Kが山田Pの読みだった。下辺の黒全体の目を狙っていたからこそ、上記の190の黒一子先手抜きも保留し、右辺の両先手6目もあえて許したのだ。誤算は黒157の妥協でここの黒二子は白に取らせ、その間に先手で下辺を安定させて(黒159〜白166)おいてから黒169の逆寄せに回った高尾の読みが山田を上回った、ということである。
 
 参考図A 白8なら本因坊戦定石?!






 白番の山田規三生九段が白8と打てば部分的には第3局の再現(白黒が逆で、対偶が小目ではなく星という違いこそあるが)となって、黒21まで進んだ時、どうするか?興味があった。強情に中央を立ってあの場面はあれで悪くなかった、と居直るか、第3局の反省を踏まえて新機軸をうちだすか、見ものだったのである。というのは、過去の名人戦では両者が部分的に同じ所を同じ形で打ち続けてお互いに自分は悪くないと主張しあうケース、所謂“名人戦定石”が多く発生したからである。そんな“名人戦定石”は、七番勝負の勝負所の焦点を絞り込み、一箇所の戦術の帰趨が七番勝負全体の行方に直結するという意味で、七番勝負の醍醐味であったのである。

 参考図B 黒9ケイマが基本定石






 白8コスミなら、黒9〜11がもっとも固い(黒11では一路広いQ-10の三間開きもある)定石。

 参考図C 黒9、11は足早な“橋本宇太郎”定石






 黒9、11は関西棋院の創始者、第2、5、6期本因坊橋本宇太郎(第6期本因坊昭宇)の草案になる足早な布石作戦。解説の結城聡九段も関西棋院の所属である。橋本師以来、関西棋院には小目に一間高ガカリ、二間高バサミの時、定石の大ケイマではなく、大々ケイマに開く(?)という足早、軽サバの棋風がある。

 参考図D 黒13で最もおだやかな手は上辺開き






 黒13で最も穏やかな手は上辺を開いて治まる位だが、以下双方囲い合い⇒寄せと進んだ場合盤面でも白良しとなる。

 参考図E 黒21では上辺で早生きが秀行説






 藤沢秀行は黒21で上辺での早生きを勧める。というからには、白52ポン抜きまでのフリ替わりを白良し、と見ているからなのだ。ただ、その表現が微妙で、「白52とポン抜かれてはやる気がせず、その前になんとかしろ」ということでこの、参考図Eの早生きをすすめているのだが、上記の一文には後があって「(白52となっても、高尾は)平然としている。これは大変なことです。」とある。この「大変なことです」の意味がわからない。「黒悪いはずなのに、そう思っていないのは、たいした自信だ。」⇒「結果的には、逆転して勝ったのだから、文句も言えない」ということなのか?


 参考図F 黒53もっとも常識的な展開






 黒53で最も常識的な展開は、上辺の大石同士の中央への脱出はほぼ一段落と見て、序盤でやりかけたままの右下を治まることである。これ(参考図D)はまあ、ひとつの展開例だが、黒53でも、白54でも双方この図との比較で着手を決断しているはずである。

 参考図G 白76では左辺を打って白良し?!






 控え室では白52ポン抜きで白有利説が主流だったようで、それを踏まえて実戦の白76〜84では、後手をひいてまで下辺にカラムことなく、先手(ほおっておいて白にもう一手打たれると、左したの黒石は死にそう)のこの図の白76と左辺に開き詰めしていたら白面白かった(優勢を維持できた)という見方だった。

 参考図H 白122妙手






 このコウは黒勝てない。中央の黒が死ぬ。

 参考図J 白148では切り込めば勝敗不明だった(と、山田P)






 白148が敗着と山田規三生プロは信じているようだ。なるほど、この進行は実戦とは違い、右辺で白先手のハネツギができて、細かそうに見えるが...

 参考図K 黒157が山田規三生の勝手読み、黒番高尾がこう打てば白勝ちと思っていた






 なるほど、黒157で高尾が釣られて中央の黒二子を逃げていたら、左下で大博打を打って白170コスミを先手で打ち、下辺の黒を殺すという高級大詰め碁があったのか(感嘆!)。一分の秒読みのさなかにこんな詰め碁を考える山田規三生プロも流石だが、それを見抜いた高尾紳路プロも当代現役本因坊だけのことはあるわいな。





posted by 蔵山車理恵蔵 at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月11日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △清成哲也九段対▲山田規喜九段 黒中押し勝 2006.6.11OA








 解説:横田茂昭九段
 □最近流行の黒3、5カカリっぱなしから7と左下に先着する布石で始まったが、白も8と穏やかに一隅を占めたので、黒は先着の利を生かし、左辺に9〜11と“変則ミニ中国流”(横田P)のような模様を張る。これは20世紀のオーソドックスな布石に戻った格好である。
 □13〜23と黒が大場に先着し、白がジックリと後を追う。
 □白24打ち込みから戦いが始まった。
 □白26は左下を軽くサバキながら黒23の一子をハサんだなかなかの趣向と見受けられる。黒は下辺を三線に低くワタルのは利かされと見て黒27ケイマと反発。
 □ならば白28黒29と互いに自我を貫く。
 □白は左辺の一子(白24)は死んだふりをして下辺を白30とコスミ、自らを安定させると同時に、孤立した黒23に圧力をかける。
 □で、黒31〜37はひとつのシノギ。ハザマが開いているが白慌てて突っ込むと、逆に取られる。なかなかの構えみたいだ。
 □で、白も直線的な攻めは無理と見て、左辺38打ち込みと戦線を拡大する。
 □しかし、清成本人は局後「白38は打ち過ぎだった。正しくは参考図Aの専守防衛」と反省。実戦の白38の戦線拡大策を自己批判している。
 □黒39〜53と左上の黒の逃げ出しからめつつ、左辺の黒を中央に追い出す。
 □ここで白は様子見をかねて白54〜62と下辺左の白の蠢動(しゅんどう)を図るが黒63、67、69と最強の対応。白64〜66とこのラインを切り、下辺も68、70と黒の弱石に襲い掛かる。
 □黒71が筋違いの弱腰に見えてなかなかの手。強圧的な白の攻めをスルリとかわそうという意図。
 □白強引に72、74、76と切断するが、黒77と一手入れられてみると下辺の黒も弾力性に富んでいて、逆に白の薄みを狙ってさえいる。
 □で、白も78、80と手を入れて、下辺の白を中央脱出を計るが、これはいささか問題の手だったようだ。というのは後に実現した黒107のアテが下辺の白石(26、28)の切り取りと白一子(白54)のポン抜きを見合いにしており、おかげで中央の黒石に保険がかかっていることになり、以下の中央の競り合いにおおいに影響を及ぼすことになった。
 □つまり、白は下辺と左辺とふたつの大石が裸で逃げ出しを計っているのに対し、黒は中央と下辺の黒は保険がかかっているので、上辺の黒石さえ凌げばいい、という黒有利な戦いになっている。
 □その中央の競り合いは81〜96と熾烈に展開する。
 □ここで黒97がよさげな黒の治まり手。白86から左上の切りはゲタで取られ、ノゾキも幸便に整形される。
 □白98〜106と強引に攻めるが、ここでかねて備えの保険を降ろす。黒107で中央の黒は左下に連絡。しかも黒107で切断した上下の白数子のおみやげが保証されているのでばかにならない。
 □勢い白108、110の連打で黒109の取り切りと大きなフリ替わりを演じる。
 □ここで形成判断。黒は左下40目〜中央12目+α+上辺5目で計57目+α、一方白は左上15目+中央〜右上10目+右下25目+コミ6.5目で計56.5目。接近しているようだが、次は黒番で黒111と中央の白の切り離された弱石を狙いつつ右辺を安定させて黒地約10目が見込まれるのと、中央〜下辺の厚みの+α(実戦のコウの余禄)が心強い。
 □勢い白は左上の黒大石を激しく責めるが、全部殺すのは無理。白112のノゾキから行ったが、黒117、119、121、123で筋に入ったシノギ。シボリが利いて、白126まで左辺の黒数目は捨て(白地20目増加)ても先手でここを切り上げた、というのが魅力。
 □その先手で黒127としっかり右辺を黒地(15目)にしつつ中央を狙っているので、白は128、130と中央に手入れをせざるを得なくて、黒が先手という状態は変わらず。
 □確定地だけで言うと、この間に逆転して白が4.5目リードだが、上記の中央白の薄みは白130までの手入れでも解消されていないので、黒からの攻めの余禄(下辺と中央左の白数子の取り込み)を見込んで、先手の黒が有望。
 □だから、黒が131と両先手6目の手(数字としてはさほど大きくないように思えるが、中盤の終りで大寄せに入る手止まりの時に、両先手の6目得の手が打てるのは決定的に有利なのだ。参考図Bがその証明。)を打てれば、黒有利の形勢は変わらない。
 □黒131につきあっていてはジリ貧と見た白は、起死回生狙いの博打を打つ。それが、白132とトビ込んで黒139までの大コウ(出入り30目)だ。
 □白140のコウ立てが利いて白コウを取り、次に黒143とコウ立てをした時、白は受けたいが、すると参考図C白146で、白コウ材がない。
 □それで、やむなく白は黒143のコウ立てに受けず白144と抜き、黒145のアテと替わる。
 □すると白は下辺で二眼持たなければならないので白146の二眼確保はやむを得ない。
 □次の黒147が寄せとしては大きかった(後手ながら、次に白161から170の荒らしが先手で20目を越える値打ちがある)ので、白146では147のところに当ててから、二眼持てば良かったという解説があったが、それは間違っている。その証明が参考図D。下辺に先手で二眼できて、先手で黒131の受けに回れば下辺のコウ大成功にみえるが、どっこいそうは問屋が卸さない。実は下辺は黒の取り番のコウなのだ。しかも、この図は中央の白が二眼無いのだ。
 □だから、参考図Eのように白148のアタリに黒149と受けられると、白150を決めて先手で中央に二眼つくっても、下辺の白は下辺に白は一手手入れしなければならず、左辺の黒131からのトビ込みは黒に手が回る。この図も黒勝ちになる。
 □だから、白147まではやむを得ない。
 □解説の横田Pは「白148はヌルイ」と言っていたが、それも間違いである。参考図F、Gがその証明であるが、ここまでくればどうやっても黒勝ちの図は導けない。
 □結局黒107、109が冷静な勝着だったわけだ。


 参考図A 「白38は下辺の逃げだった」と清成の反省







 参考図B 黒131に白受ける順当な寄せは盤面10目黒良し







 参考図C 黒143に付き合うと次に白146で白に適当なコウ材が無い






 白146でコウ材といえば146、148位だが、黒147とコウを解消されれば、下辺と中央をフリ替わった計算だが、下辺(出入り33目)の方がモノが大きくて引き合わない。右上の取りは黒107、109と白108、110のフリ替わりをする前とは違い、単純な寄せ(後手15目)の価値しかない。しかも手を抜いた黒131からのトビ込み(後手20目)には黒が回り、この図は負けを早めるだけだ。
 
 参考図D 白46、48は必然






 白44とコウを解消した以上、実戦の白46の目作りはやむを得ない。それで問題は、「黒47のノビが寄せに関してバカデカイの(後手30目)で、参考図のように白46のアテを決めて、右下隅の白地を確保しておいてから白48と当ててツガせ、50の押さえに戻ることができれば理想的」(横田P)だが、そうなると、黒47の抜きがきているため、白49のツギとあいまって下辺の白はコウになってしまう。これは出入り30のコウで白にはコウ材がなく=負けの図である。

 
 参考図E 下辺はどうしても手入れが必要  






 黒149受けが来ると、白150を先手で利かしてうまいことやったようでも、下辺がコウであることには変わりはない。

 参考図F 白148手抜きで左辺を打っても、結局よりが戻る






 白148で手抜きして左辺に回っても、可変中央のツギは中央の白に対して生きを催促して先手であり、又白148が来たことによるM-12切りからのけっこうデカイ寄せを消しており、右辺白への厳しい攻めも先手で、結局大きいところは黒が先着するので黒勝ちは動かない。


参考図G M-12切りから打つと逆に白取られ






 白が148で下辺を抜かずに左辺を受けても、黒が中央に153と手を戻すと中央の白の生きを確保せねばならず右辺の寄せに回られる。M-12からの逆襲は逆に白が取られる。






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2006年06月09日

第15期竜星戦本戦Eブロック9回戦 △久島国夫九段対▲武宮正樹九段 白9目半勝ち








 □武宮が先番を引き寄せ、模様を築く展開が予想された。
 □しかし、黒13に手抜きされて白14から26と曲げられ32までと中央をトバれると右辺は大模様にはなりにくい。
 □黒も右上19〜25を決めたものの普通は良くないとされるこの折衝も、白が中央を32までトビを決めているため、いまひとつさえない形。
 □結局白42まで穏やかな滑り出しとなった。
 □黒43と上から利かしたのに対し、白44と反発したのは勢い。
 □黒51まで互いに気合で分断。激しい競り合いが始まった。
 □白82と連絡し、右辺の戦いは一段落。
 □先手を取った黒は83と左辺に先行した。
 □黒105のノゾキに白110までを利かし、白112に向かったのは地を稼いでシノギ勝負に持ち込もうという意図。
 □手抜きされた武宮は黒115、117と左辺の白を二分し、寄り付きを狙う。
 □白150は見損じ。この手では白172とオサえておけば無事だった。白176までコウになっては大事件。
 □コウの代償に黒95、97と連打され右辺の白一団は死に残り。
 □白の中央も薄く、武宮のパンチが決まったように見えた。
 □白200はやけくその頑張り。黒105では参考図Aのように白四子を取れば生きていた。
 □実戦の黒205が大チョンボ。右下の白が取れると錯覚したのだが、白206と打たれると、この後どうやっても参考図Bの手順で黒が逆にやられる。
 □おかげで白は208と黒一子を噛み取って一眼確保、しかも白214まで先手で治まると黒は215のツギが欠かせない。
 □それで白は白216と待望の右辺を上辺とワタり白のシノギは大成功。
 □中央はなおも黒217が欠かせず、白218と打って黒模様を荒らしながら白二眼確保できては白見事なサバキで大逆転、久島が勝利した。

 参考図A 黒205黒生き







 参考図B 白107でこのあたりをどう打っても黒が逆に取られる











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2006年06月07日

第61期本因坊戦七番勝負第3局 △高尾紳路本因坊対▲山田規三生九段 第1日目 2006.6.7








 解説:羽根直樹九段、石井邦生九段、清成哲也九段、井山裕太七段(『本因坊戦』NHK BS2)、林海峰九段(『囲碁ジャーナル』NHK BS2)
 □左上黒5に白6と二間高ガカリして黒7とハサミ返し、以下20となる手順は今年2月に上海で行われた農心杯決勝で李昌鎬(韓国)が依田紀基(日本)を相手に打った手順と全く同じ(李昌鎬が黒番)だ。
 □黒17でコウツギは参考図Aが想定されるがこれは黒不満。
 □黒21では黒三線のワタリが普通の進行だが、本手の(常識的な)シチョウから、黒上辺二手連打される参考図Bは、白の厚みが働かなくなっていて、白不満である。
 □だからこそ、依田はシチョウを手抜きして上辺に開いた。参考までに△李昌鎬(韓国)対▲依田紀基(日本)戦を掲げておく。このシチョウを手抜きして、急場の上辺に先着し、手を抜いたシチョウのところは後手でも戦えるとの形勢判断は有力だった。参考図C。
 □それで、山田規三生九段も上記のことを踏まえて黒21と工夫した、と見られる。
 □解説の羽根直樹九段が言っていたが、山田Pの打った黒21とノビる手順は韓国で流行中らしく、研究書も発刊されているという。
 □しかし、二日目の解説によればこのあたりは両者共に考慮時間をいっぱいに使っていたというから、研究しつくしてあった、というわけでもないようだ。
 □感想戦でも、このあたりのことが検討されていたが、李昌鎬(韓国)VS依田紀基(日本)戦の手順にもさらりと触れてすぐに図を崩したトコロを見ると、黒21で李が打った三線C-11の這いは黒気合が悪いと見ている点で両者一致しているようだ。
 □でも黒21〜白36となった別れは左上を白地にされて大きく(36目)黒不満らしい。
 □局後の検討では参考図Dあたりが論議されていた。このレベルの論議は高級過ぎてアマには理解不能。
 □実戦の進行に戻り、黒31では参考図Eと左辺の白を取りかけにいきたいが、白32と急所に置かれると逆に黒一手負け。
 □左上の黒を取られるのは嫌だと、黒35では参考図Fと出切りたいが、これは黒つぶれだろう。
 □また、黒35では隅の黒を動き出すのも考えられるが、参考図Gの手順を辿り、中央に手が戻り黒全滅。
 □だから黒は隅の生きは諦め、実戦の黒35と中央に力を蓄えるしかない。
 □このまますんなりと寄せに入ったのでは、左上の白地が大きい。“地に辛い”棋風の解説の林海峰名誉天元は、このあたり形勢判断は<白良し>説。
 □なんにせよ、実戦はこの後もこの部分のアフターケア―を震源地としながら激しく動いていく。
 □つまり黒39は左辺の白一団を遠くから睨んでおり、左下から左辺、中央にかけて黒模様を形成しつつあわよくば白との攻め合いに持ち込もうという意図である。
 □それに対し、白40と左辺の白から中央に一間にトんだ手は上記の黒の目論見を外し、左辺の白を寛がせた、不急ではあるが非常に厚い、いかにも“重厚戦車”高尾らしい一手ではある。もしも、仮に白が40で他のところに打てばどうなるのか、というのが参考図Hである。天王山とも言うべき黒41(実戦の白40)を黒に制されると、先に打った黒39と呼応した黒の左辺白の包囲網はギリギリと白をシメツケ、白は包囲網の中で生きることはできるが、その間に左下と中央に広大な黒の確定地と模様が完成してしまうのである。
 □黒43も左辺の力関係に関して手厚いところではある。ぼやぼやしていると左上の白が攻められることにもなりかねない。
 □だから、白も反発、白44、46と力強く出切った。
 □ならばと、黒47と当てて白48と替わり、黒49にかぶせる。これは黒17、21、35の三子の動き出しを見ながら、同時に左下を大きくまとめて黒模様にした壮大な構想だ。
 □で、左下がこのまままるまる67目の地になってはたまらない。白は左下黒模様の真ん中にドカンと50に打ち込み白58が1日目の封じ手。
 □封じ手は白58のフクラミ。
 □黒は白60のアテを利かされてはたまらないから、黒59ではアテなり、立ちなり右側を受けたいところだが、とするとここはコウになり、コウ材は左下の白の生きを促すなど、近所コウが無数にあるから、ここでのコウは容易には仕掛けられない仕組みになっている。一例として参考図Jをあげておこう。
 □白64では参考図Kのツギの一手だった、というのが秀行説。う〜む。
 □実戦は外野には予想もつかない意外な展開を辿り、白68までこちらのコウになる。これは天下(利かずの)コウだ。
 □コウは天下利かずで黒69取り、71ツギとなり、その代償に右上を白70,72と連打する。
 □この別れをどう判断するか。
 □井山裕太七段は明解に白良しと断言する。というのは実戦の左下は黒にコウをつがれて大損したようにみえるが、参考図L(これは左下が67目の確定地になっている)と比較すると実戦で後に黒132となって実現したように左下の白三子の逃げ出しが残っている分、黒は甘い、というのだ。Oh、何と言う高度な形勢判断であろうことよ。
 □対局者二人は局後の検討をこの後の上辺の折衝に最も時間を費やしていた様子からして、このコウの決算は互角と見ているようだ。ふ〜ん。解説の羽根は「いいかげんの別れ。勝負は先に持ち越した」という風な表現をしていた。
 □右上は黒73〜白76はこんなものとして、その直後に打たれた黒77がどうだったか。「これは(上辺黒の)開きというより、(右上白の攻めを見た)詰めという感じの強い手です」と羽根P。
 □というのも、白78と黒地と見えた所のド真ん中に打ち込まれるという強烈な反撃を食らい、黒この一子を持て余してしまうのである。
 □黒79とカケたものの白80、82と動き出されててみるとこの白はなかなか生命力に富んでいて、かえってそれを囲鐃(いにょう=取り囲むこと)する黒の断点が目立ってくる仕掛けになっている。
 □いきがかり上、黒も振り上げた拳を降ろすこともままならず、黒83、95と中央で死んだフリをしていた黒17、21、35の三子をいよいよ動き出し、白46、48、84の白の要石と刺し違える覚悟だ。
 □この戦いがこの碁の決戦、主戦場になる。しかし、局後の検討では黒95の攻めは問題だった=黒に勝ち目がない、と結論が出た。そうなる前の上辺の黒(黒77の開き詰め?)に問題があるとして検討はそのあたりに集中し、それ以降の手順は無視された。
 □だから、黒91では参考図Mの和平策はどうか、というのが林海峰九段の提案である。上辺は捨てて中央と右辺を安定させ、左辺の白をうかがいながら、チャンスがあれば下辺の白を取り切るというものでなかなか有力ではある。
 □だから、以下は蛇足。どのようにして、白が的確に黒を仕留めたか、を述べる。
 □白100〜108は効果的な捨石で、左辺からの白石を厚く=絶対安全なものにしている。
 □こうなれば、黒も109と黒37の一子を救い出して中央の白五子を攻めるしか手立てがない。
 □その攻めも上辺の黒が意外に薄いので黒113、117と右辺の黒との連絡を見て、右辺の側から攻めざるをえないが、白110、114、118とタケフになって伸びやかな白に対し黒は117などそのタケフの両ノゾキになっていて悪手を打たされている。
 □黒119も、その左下一間トビなら下辺との連絡は果たしているが、逃げるだけで迫力がないと見て少しでも中央の白に迫ろうとして119にコスんだが、白120とかえって幸便にトビを打たれると白はほぼ右下と連絡形になってしまう。
 □となると、中央と右辺の連絡が心配で黒は泣く泣く121とここに貴重な一手をかけたが、白126ハザマの必殺パンチ(といっても、ビデオを再生しながら「右辺の黒に手があるんだけれど、何処だと思う?」とヒントをつけたら実力9級の我が女房でも発見できたから、そんなに凄い手でもないかw)が用意されていて右辺は破れる破目に陥る。
 □ここで白は意外にも火急と見える右辺から右下をパスして、忘れていたコウの焼けボックイの下辺白三子を助ける。勝利宣言である。後手18目の寄せではあるが、白124からサガリがくれば中央〜下辺の黒の大石もまだ生きてるとはいえないから小さな手ではない。
 □それで黒は133、135と中央切断に全てをかけるが黒136ツギが冷静な一着。で白は中央と右下が連絡形。
 □黒137と下辺を取り切れば白138が名調子の開き詰め。黒139の連絡も140のメスが入ればどちらかが死ぬ。
 □黒141、143は最後の抵抗だが、白144とかかえて何事も起こらない。
 □黒49は158とツグところだが白から149に出てこられると右隅の黒地はいくらにもまとまらない。それだと右辺中央が生きたとしても、盤面白良しという超大差。
 □なもんで、黒149と当ててコウにしたが、これは投了の前の形作り。白は150〜158と当てて逆に黒をまとめて御用にしてこれでホントのジ・エンド。
 
 参考図A 黒17でコウツギは気合いが悪い






 黒17ツギは白18と替わって黒19の卑屈なワタリが欠かせず、白20位で白がノビノビとしていて、威張っている感がある。

 参考図B 黒21で黒は三線をワタリ、白22でシチョウに抱える本手は白不満






 白22でシチョウ抱えが本手であるが、左上の白の厚みを働かせたい黒に上辺に先着されると、いずれシチョウアタリを右下に打たれるのを嫌って白シチョウポン抜きがこれまた本手である。本手の連打は立派だが悠長すぎるとのソシリもまぬがれず、肝心の上辺を黒に連打されてはシチョウをポン抜いた左上の強大な厚みもサパーリである。
 
 参考図C ▲依田紀基(対△李昌鎬at農心杯決勝戦)はシチョウは足が遅いと見て、辺への展開を急いだ






 黒の依田は辺へ足早に展開、手を抜かれて怒った白の李昌鎬は白26(本因坊戦の山田Pの黒21と同じ場所)と立って戦をしかけたが、この接近戦は依田が勝った。

 参考図D 黒23では露骨なカケから絞り、とにかく左辺は生きる






 実戦の白34と左上の黒を取られては大きい、というので黒23ではこのようなカケも考えられる。これなら、左辺の黒は23の一子はポン抜かれても生きており、中央に浮いた黒もそうそう急な攻めを食らうこともなく、これはこれで一局だったろう。

 参考図E 黒31で白を取りかけに行くのは無理






 黒31取りかけは白32急所の置きで、黒は逆に一手負け。

 参考図F 黒35出切りは黒無理






 白34で左上の黒が取られるのは辛いと黒35ではここを出切って一戦交えたいが、どうやら黒無理のようである。

 参考図G 黒35で隅を生きようとするのは破滅への道






 黒35で隅の生きをはかってもいずれ中央への揺れ戻しがあるので黒は両方ともは打てず、破滅することになる。
 
 参考図H 黒41(実戦の白40)は天王山






 黒39、41と連打されると左辺の白は攻めあいと封鎖を避けてあばれるが、例え左辺は生きて、下辺も破ったとしても、左下の黒の確定地と中央の黒模様の壮大さは少々の白の利得を上回るということらしい。う〜む。


 参考図J 黒59でコウ仕掛けは黒無理⇒白生き容易






 黒59でコウを急ぐのは自分の首を締める結果になる。
 
 参考図K 白64秀行説






 白64ツギでここは生き、というのが藤沢秀行説。う〜む、この人が言うとワケはわからん説得力はある。


 参考図L 白50、52と右上連打なら、左下は黒51で67目の確定地






 仮に、もしも仮にだよ、このように黒51と囲って左下が実際に67目の確定地になる(あおきが白で井山Pが黒ならそうなるだろうし、あおきが黒で井山Pが白なら、左下は白5目の白地だろうねw)ものなら、実戦の白50〜黒71は白がボロボロ石を取られているようだが、下辺の三子を引き出す余地があるだけ、利かしになっている?!というすんげえ発想。

 参考図M 黒91では和平策があった






 上辺は半分捨てて身軽になり、中央の寄せに勝負を持ち越すという“二枚腰”林海峰ならではの粘り強い発想。あおきレベルではその先はといてい読めない。



 




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2006年06月06日

第27回JAL杯世界アマチュア選手権8回戦 △唐韋星(中国)対▲平岡聡(日本) 黒11目半勝 2006.5.31長崎








 解説:石田芳夫九段
 □白30を見て「この子は勢いがいいね」と石田芳夫P
 □黒31を迎えて戦いに突入しそうな気配もあったが、白32〜44と全体的にゆったりとした碁形に落ち着いた。
 □黒45が平岡選手らしい厚い手。ジックリ打って走らない棋風である。
 □白46のハネ一本から48打ち込み、そして50ツギと唐選手の手が冴える。白48と黒49の交換を利かしと判断しているのだ。つまりそこには白46,50の逆寄せ12目(倍の24目の価値がある)を早々と打ってしまって唯一の黒の大模様の下辺に打ち込んだ48はそんなにひどい攻めを食わなければ、白は地で全体をリードという形勢判断があるのだ。
 □事実、黒は51のボーシから威圧的にこの48を攻め立てるが白58となってみれば攻めは空回りの気配が...
 □これではならじ、と黒59の打ち込みは気合の一手。ここから下辺をにらんだ競り合いが始まった。
 □この競り合いに白60上ハネから66まで力強く動き出して激しい戦いに突入。
 □この間に白は右上の黒を制し、白は右辺と中央の白を攻め、フリ替わりの様相も...
 □黒85で天下コウとなり、黒は103と最大限の地を持ってコウを解消したかにみえたが、実はこれは手残り。正解は白14のトコロ(R-8)のコウツギだった。これが後の大事件の発端となる。
 □とまれ、この大コウで右上(40目)と下辺中央(4目)は白地となり、右辺は黒地(45目と地だけでいうと互角のようだが)だが白からのコウ残りとなっている。
 □コウ残りを知っている白と知らぬ黒。
 □白104〜110は中央の黒の攻め自らの左辺の石の安定を見たものだが、その黒は調子に乗って黒105〜111と中央と左辺の白を分断し、あわせて自らの中央の黒を安定させているつもり。
 □黒123まで白の左辺と中央が充分寛いだと見て、白は124〜134といよいよ右辺のコウを実行する。これは出入り60目は下らない天下コウで、しかも白の花見コウ(白はコウに負けても実害は6目程度で痛くも痒くもない)である。
 □ここで勝負あったかに思われた。
 □黒135白136は50目強で、コウツギ(60目弱)のほうが価値が大きいのだが、なにせ花見コウなもんで白も受ける。余裕である。
 □で、白138にたまらず黒はコウを解消する一手だが、白138は141が優った。参考図Aであるがこれなら左辺の黒が死ぬ。この図は白勝ちである。
 □だから、左辺のコウ材には黒受けなければならないが、そうなると白に右辺のコウを抜かれた時、黒には適当なコウ材がなく、参考図黒141、143と連打しても下辺の白は簡単に生き、すると右辺の黒はさまよえるオランダ人かユダヤ民族となって世界を漂流しなければならない哀れな運命をたどるのであった。嗚呼無情。参考図Bである。
 □実戦は白138のコウ材に黒139と抜きコウを解消、白は140と上辺を連打する分かれとなった。
 □ここで、形勢判断をする。黒地は右辺54目+左下7目+左辺9目で計70目、白地は右上36目+左辺3目+中央4目+左上16目+コミ6.5目+上辺の絶対的な厚みで65.5目+上辺の厚みだから、白はたかだか上辺に5目の地をつくるだけで勝ちという構図だったのである。
 □絶体絶命の黒は気を取り直し、黒141とマゲ、上辺のシノギと左辺白への攻めに一縷の望みを託す。
 □しかし、この手(黒141マゲ)が残っていたのは平岡にとって非常な僥倖だったといわなければならない。なぜなら、白138では白141黒169が必然のコウ立てで、本来ここは白石が置かれてあってしかるべき場所だったからだ。(その意味で白は138ではここに、コウ材を立てるのが彼我の力関係を決定付ける意味において二重に絶対だったのである)
 □黒141、143となって黒にもかすかな希望が甦ってきた。
 □白は上記の形勢判断もあって安全策を取り、白144とかかえてここに7目をつくれば2.5目勝ちという目算をたてたのである。
 □しかし、その安全策がヌルかった。というか、いったん勝ちを意識して震え出すと、過剰に臆病になるものらしい。黒153には白154と卑屈に屈して黒155のシチョウのカカエを許し、更には白156、158と打って黒159のアテに甘んじるという情けない有様ではせっかくの勝ちもフイになってしまった。
 □せめて、158では黒159の右(J-11)に打っておけば左辺と中央の白は連絡形であり、又白152の逃げ出しもあって、まだまだ形勢は混沌としていたものを...。
 □黒163亀の子60目の抜きがきては白の名局もここにジ・エンドとなりにけるかも。 

 参考図A 白138では左辺の黒に狙いをつけてコウ材を立てる






 白138に黒139とコウを解消すれば白140と打って左辺の黒が死んで、この図は白勝ち。

 参考図B 黒は左辺のコウ材を139と受けなければならないが...






 白138のコウ材は絶対で、放置すれば黒死だから139と受けるしかないが、そうすると、白140と右辺のコウを抜かれた時、黒にはどこにもコウ材がなく、それどころか、右辺の黒は死にまで生じるので黒141、143というほとんどダメのような手をうつしかないが、いうまでもなくこれは右辺の白=生き、中央の白=生き、右辺の黒=まだ生きてない、ので逃げ出さなければならず、【黒の勝ち無し、=白の負け無し】の展開しか待っていないのであった。

posted by 蔵山車理恵蔵 at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月04日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △山城宏九段対▲坂井秀至七段 黒中押し勝 2006.6.4OA








 解説:中野寛也九段
 □「坂井秀至七段は緻密、山城宏九段はオールラウンド、長い時間の碁なら両者ともにじっくりとした棋風だが、早碁だけに気合いがものを言ってくるので」と中野寛也九段。ようするにわからない、と。
 □白4ですぐかかったり、黒5、7と打っただけで手を抜いたりと忙しいのは、最近
の流行。
 □結局右上は黒が手厚く打ち、その分左上は白20と厳しくハサんで黒を攻める。ここは黒41までで一段落で、白は上辺(27目)と左辺(12目)にけっこうな地を確定している。
 □ただし、その間に黒は二手パスをして、右下黒25大ケイマシマリと黒33〜37の寄せ(白からの三々ツケと比べて後手34目)と大きい所を打って、右上〜右下に巨大な黒模様を築いている。
 □黒39の時白40ケイマは問題だったかも知れない。同じケイマでも白41のほうから迫っている方が黒への攻めに迫力が増しただろう。
 □というのは、白41なら黒43とトんでも白40で止まっていて脱出にはまだまだ手がかかるから、白はまだまだ追撃が利いている。
 □ところが、白40と黒41の交換では、後に黒43と白44の交換が利いたため、左上からの黒一団が一挙に寛いでしまった気配がある。だとすると、上辺と左辺の白はこれ以上の攻めの機能を果せず、こじんまりとした窮屈な地に治まっているだけで不満なのである。
 □白は42と盤中最大の大場を打つが、黒も49と模様を引き締めて左下は大きな地模様になって不満はない。
 □50は当然の打ち込み。以下62は相場。
 □黒63と左下の白模様に打ち込めば、白も64と開いて左下の黒地を削減しつつ、自らも安定させる。
 □ここで天下の形勢を判断してみると、黒は右上30目+右下15目で計45目、白は上辺25目+左辺10目+左下5目+コミ6.5目で計46.5目と地は接近している。しかし、黒は左上の大石が治まり形であり、白は右辺、下辺、左下星と三つ治まっていない石をかかえている。次の手番が黒でそれらを睨みつつ、左下の星の白に存分に攻勢がかけられることを考えると黒の余裕のある展開であろう。
 □黒65の両ガカリに白はお荷物(右辺と下辺のふたつの白の弱石)をかかえているので、白66、68とツケ押さえから72、74のツケノビと治まり第一を心がけるのは致し方ない。
 □対する黒の攻め方も71のサガリから75のトビ肩付きととコンビネーションに工夫が感じられる。よくわからぬが、“なにやらゆかしすみれ草”の風情がある。
 □というのは、黒75は白76のケイマから78ケイマと白を好形で治まり形にさせるが黒79、81が白80、82と先手交換できるのでは中央黒が厚く、おまけに黒85コスミ(両先手8目)と白86(後手5目)は実と虚の交換に近く、ここにはっきり黒優勢になっている。
 □黒87は先の黒71サガリと関連して実質の大。ここに最低6目の地をつくり、左上からの黒を安定させつつ、上下の白への侵分を睨んでいる八方ニラミの好点で勝利宣言である。
 □事実、その後の経過は黒87に由来している。
 □白88と黒89のトビコミは見合いのようだが、黒93に94と引いて95とワタリを許す(白94ではC-4とアテてコウにすることもできるが、コウ材は黒が多いので、白はコウにいけないので妥協せざるをえない)ようでは、白の損失のほうがはるかに大きい。
 □白100ツケはかすかな中央の黒の薄みを狙った手だが、87、99と手厚く二手かけられた後では効果がなく、黒101と一子噛み取られて損失を広げたようだ。
 □白108に黒109と押さえられてこのラインは止まっている。白125切りは黒124と出て中央の黒はいっこうに痛痒を感じない。白125は持ち込みになるのである。
 □かくして黒117と一子ポン抜いて中央が治まってしまっては黒大差の勝利で、白投了もやむをえないであろう。
 □参考図は、無い。つまり勝負の分かれ目とも言うべき険しい局面は出現しなかった、ということで、終始一貫して黒が局面をリードした一局だった。
 □しいて白の敗因をあげるとするならば左上の折衝であろう。黒に二回パスをされてそれでもくどく攻めた割りには戦果に乏しかったこと。白40と黒41を交換して黒を安心させた(白41黒43ならまだ先があった)というあたりじゃあるまいか。
 

posted by 蔵山車理恵蔵 at 15:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月01日

第26期NECカップ一回戦 △小県真樹九段対▲河野臨天元 黒中押し勝 2006.5.20山形








 解説:石田芳夫九段
 □黒39打ち込みに白40黒41と当然として、白42は疑問だった。
 □黒43、45が好形で、J-18とへこんで左右のハネを見合いにして簡単に二眼できるのだ。
 □だから、白42では黙って50と治まっているくらいだった。白42は黒87のところに弱みがあり、実際に後に黒87を打たれて碁は一挙に敗勢にむかっていったのである。
 □白48は肩に力が入った頑張りすぎだった。黒49、51と咎められると白は応手に窮している。参考図A。参考図B。
 □やむを得ず白52とかかえたが黒53、55と出切られると形勢は白良くない。
 □もっとも、黒61は59の下(G-14)にそうべきで、白への圧力が違う。白は64、66と形につき、一息入れることができた。
 □黒65、69の地取りに白も68、70で対抗、地合いのバランスを取る。石田「地合いい勝負だが、黒厚い」
 □黒83、85から87はかねての狙いの筋。左辺の白を攻めながら中央にふっくらとした20目近い黒地を作り、局面をリード。
 □しかし、中央は必ずしも完全な黒地とはいえない。参考図Cのような手段もあるのだ。
 □白104黒105が先手で利いては白嬉しい。P-4フクラミと黒その下受けはいつでも利くので白はこの黒二子をウッテガエシで取れているので右辺の白はもう完全な生きである。
 □白106、108は次にR-15が両ノゾキだが、手を抜かれては後手10数目の寄せであり、s-18サガリからのハネツギ(黒受ければ白先手になるので、やはり黒は手抜きしただろうが、その場合はR-15に迫力が増し、白地も得である。)を見たほうがよかった、とあおきは思う。
 □黒109からこの白を攻める。
 □白126がなかなかの手。
 □黒127も強い手。うっかり白が黒一子をかかえたりすると参考図Dと経過を辿り、白ギャフンとなる。
 □白134〜138ともうけ、かなりの戦果。
 □ここで出た黒139が渾身の反撃、有無を言わさぬ鋭い割り込みで白参った。白はK-11ノゾキと黒その右ツギ(白166と黒167)をいつ(110,116と二回チャンスはあった)でも利かせたのに打ち惜しんだのがいけなかった。
 □黒149とカケ、取りかけムード。
 □しかし、黒153が誤まった。白154とハネられ、次に白157が利く関係でこの白は取れない。
 □実は、黒153で参考図E黒153コスミとすればこの白はキャンと鳴いて死んでいた。もっとも、実戦でも黒163まで下辺で得をし、左辺の損失は充分回収している。
 □あとは寄せだが、盤面十目は固い。黒の寄り切り勝ちである。

 参考図A 白52ヒキは黒53出で白取られ






 白52でヒキは黒53サガリで簡単に白取られ

 参考図B 白52出は白66まで黒を取れるが、後手で左右の黒が厚いので白良くない







 参考図C 白104で手をつければ中央黒地は消滅






 白104に黒が抵抗すれば中央の黒が逆に死ぬ?!

 参考図D 黒127は強い手。白128と取れば逆に丸どられ







 参考図E 黒153コスミで白は取られ







 黒153コスミなら白154〜158と抵抗しても黒159アテコミが手筋で白はキャンと鳴いて死んでいる。






posted by 蔵山車理恵蔵 at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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