2006年05月30日

第26期NECカップ一回戦 △趙治勲十段対▲三村智保九段 白中押し勝 









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2006年05月29日

第61期本因坊戦挑戦手合七番勝負第2局 △山田規三生九段対▲高尾紳路本因坊 白中押し勝 2006.5.29〜30 三重県鳥羽市








 解説:武宮正樹九段(『本因坊戦』NHK BS2)、王立誠九段(『囲碁ジャーナル』NHK BS2)宮川史彦七段、藤沢秀行名誉棋聖、山城宏九段、羽根直樹九段(『週刊碁』2006.6.12)
 □黒1、3、5の布石はかって張栩名人が試みた布石だという。で、“張栩流”というんだそうな。
 □白6と黒7を交換したまま白はここを手抜きして白8と右上隅の小目に一間高ガカリしたのは趣向。
 □気合で黒は9とハネる。
 □白10〜黒19はこんなものとして、白20で今度は一転20と戻る。毎日新聞ウェブ版では「これ(白20)には控え室からも驚きの声が」とある。白20では右辺の折衝はまだ一段落していない、と見ていたのだろう。
 □だから、黒21では黒22ヒキで白にこれといった継続手段がなく黒充分という控え室の一致した声だったが、その白が手を抜いたところを咎めて、気合の黒21切り。山田は局後これが痛かった、と悔やんでいた。とすれば、白20は悪手だったか?
 □山田が先行して高尾がそれを追う展開に。
 □白22〜26とここを動き出し、黒27を誘って白28とハサむ。この左上の進行は控え室は勿論、両対局者にとっても想定外の進行らしい。「殺風景になったね」と武宮P
 □黒が29と更に高く鎌首をもたげるのに白30、32といったんこちらを治まる。
 □黒33〜39と左辺の白を上から威圧しておいて、一転せちがらく黒41と三々に入り白50まで先手で隅を掠る。かように現代碁は地に辛い。「高尾さんらしくない」と山城宏九段。控え室の評判は様々である。黒41ではO-15のノビが上辺確保して右上にへばりついた白数子を睨んで手厚い(上辺黒地35目)が、そうすれば白は左下をE-3とコスんで30目の白地が出来る。それを高尾は嫌ったものだが、局後「でも(三々入りは)悪化させちゃったかな?」と反省している。まっ、結果論ではあるのだが...。
 □黒51から戦いは上辺に戻り、白は52から58と黒を上辺に閉じ込めようとするが黒59とここにメスが入ったところで封じ手!
 □封じ手は控え室や武宮の予想通り白60からのアテ。白は8〜14の白数目を用済みと見て、捨ててそのかわりに中央に新たな模様を張ろうとしている。スケールの大きい構想ではある。
 □白60〜黒69と右上は白の思惑通りに進み、高尾もそれを承知で乗っている。
 □白70から74と上辺を突き破ったようにみえるが、ここは黒53と55の間(N-15)の割り込みからO-18のサガリからの絞りを見てM-16が利きになっていて、そういう意味で白72と73の交換が悪手になっている。つまり74の整形が中央の白も厚みとしては緩んでいる(白74の下L-13の黒からの切りが脅威になっている)ので白の作戦は詰めを謝ったともいえる。だから正解は、白72では押しとヒキを決めずに黙って
参考図A白72ツギが優った。後が違うのである。
 □中央の白の厚みは完全ではない(上記の傷がある)のだが、黒は天下の形勢芳しからずと見て黒75まで駒を進めた。中央はお互いに傷があり、どちらかが一方的に攻勢に出ることもできないだろうという判断である。(この時点で、黒白ともに自分が形勢面白くない、と見ている)普段の“重厚戦車”高尾なら、形成不明と見れば、H-8(参考図B)あたりに構えて天下を睥睨していたろう、とこれは武宮らしい感想。もっともな意見ではあるw。秀行センセイの見方は又変わっていて、白74まで黒優勢だからこそ、参考図B黒75とどっしりと構え、白76の稼ぎにも黒77と黒地をふやしつつ白を追求していて形勢は変わらないという見解だ。
 □黒81はその中央の白の厚みを意識している。普通ならその右下ツギだが、この際は少しでも中央に近づきたいのだ。
 □で、白86とここまで踏み込んだ。非勢を意識した山田の勝負手だ。
 □いざ鎌倉、というワケで高尾も真正面から勝負を受けて立った。黒87のトビは白の上記の傷(L-13)のノゾキになっている。左上からの黒が攻められているのに対し、「左上の白がまだ生きてないよ。被告は僕じゃない、お前さんだよ」と主張しているのだ。はたしてどちらの言い分が正しいのか?
 □ここで出た白90のツケが平凡なようで黒に策動の余地を許さない強硬手段だった。
 □黒91〜95と白一子をポン抜くが、白はそれを囮にして92〜96と中央を突き抜けてしまう。となればせっかく踏み込んだ87の要石は呑み込まれてしまったワケで、、互いに一子同士を取り合った格好だが、この勝負中央の厚みを完全なものにし、自然と左上の弱石とも連絡形になった白に軍配が上がること言うまでもない。
それは一瞬の間の出来事であるが、たったの9手前の黒の絶対優位=勝負を決めるチャンスが、あっという間に白の不敗形にひっくりかえってしまっている。
 □黒97、101、103はヤケッパチになった黒の白陣の中での居直りだが、戦いの済んだ戦場で今頃戦陣を組んでみても残念だがそれは“孤立”でしかないのだよ、高尾クン。
 □左辺と中央にあえて不安定なふたつの大石群を晒して、白の攻めに乗じての乱戦⇒あわよくば大逆転をという狙いの黒=高尾に対し、参考図Cの展開、“ぬきさしならぬ相打ち覚悟の殲滅戦”もありえた。
 □しかしそれは紛れると見た山田は白104〜黒109という保険(左上の白が孤立した時に白120サガリが利いて、生きる足しになる)をかけておいてから、白110、112と中央に圧力をかけると同時に、実は右辺に巨大な白地を画策するより安全そうに見える道を選んだ。
 □なもんで、黒もふたつの大石を同時に生きるのはむつかしいと見て、黒113〜117と上辺を出切り、左上隅の白と刺し違える覚悟。
 □が、この白は↑上記の保険が利いていて白120が先手となり、126、128と生き形へ持っていく。
 □左上の白と黒が生き生きでは、黒は中央の黒の生きにもう一手かけねばならず、それでは次に白に手が回って右辺の大きな白地が完成してしまうと見た黒は、とりあえず黒129と右辺の白地を荒らして地合いのバランスを保ち、左上方と中央の黒は成り行きに任せることにした。
 □その結果はご覧のように白130から黒159まで黒有利な一手寄せコウ。
 □その途中黒には一度だけチャンスがあった。黒133では参考図Dのように打てばなんと黒先の生き!これなら黒勝ちは明らかである。まあ、白142は手を抜くだろうが、それなら@下辺には白が一手打つだけで、二手連打した実戦とは異なり、黒が死ぬことはないだろう。A左上は黒から放り込めばコウで左上の白死にが残る。(もっとも、このコウは白が三手連続で打てば黒が逆に死ぬわけだから黒も恐いだろうが...)だから、これは黒勝ち。
 □で、白134ツギから大シボリを食っての大コウになる。
 □ここで山田はコウ睨みの白160とコウ材のような手を打つ。
 □本コウ=天下コウになってはたまらぬと見た黒が161と打ってコウを解消すれば、白162と中央を連打して、これは“やらずのコウ”のカタチ、キャンと鳴いて中央の黒が死んではあわれ高尾クン一巻のオワリ。

 参考図A 白72では黙ってツギ






 つい手が出てしまう実戦の白72黒73は決めずに黙って単に白72(実戦の白74)とツいでおくのが秘訣。黒は黒73のカカリだろうから、その時74の割り込みから決めると黒85まで必然で先手で上辺が割れる。ということは白86の置きが絶妙で白は左上が先手生き、黒は後手で目二つという悲惨な結果になる。この手は三重県が実家で帰省していた前棋聖(帰省との掛け言葉であることに注意)の羽根直樹九段が発見した。これなら、白大勝利確定である!

 参考図B 藤沢秀行の形勢判断は黒75白76黒77で黒良し







 秀行センセイの形勢判断では白74まで黒良し。ならば慌てず中央を厚く黒75と構えて左上の黒をしっかり安定させて中央の白の薄みを睨む。白76と下辺に地をとっても、右辺を77と掠りながら更に白を追いつめて黒悪くない、とみている。

 参考図C 相打ち覚悟の殲滅戦






 黒109となったところで両者の読みは参考図Cのこの白110以下の取りかけに集中している。白122まで左上の黒の大石は一眼しかないが、それを包囲している白にも断点が多く、これは一例であるが白も恐い闇試合といってよく、非勢を意識している高尾の歓迎する図柄ではあったろう。

 参考図D 黒133敗着、実はこの手で黒先手生きがあった






 冗談のような話だが、当然の利かしと見えた黒133が敗着。黒133では参考図Dのように黒133、135と打って白が一線をワタっている間に、いつのまにか黒先で生きてしまえるのだ。これなら次に黒が下辺に手が回り、白が二手連打した実戦とは異なり、黒楽勝だった?!
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2006年05月28日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △三村智保九段対▲小林光一九段 黒1目半勝 2006.5.28OA








 解説:大矢浩一九段
 □黒21でカケツギをえらんだのはノビだとシチョウに取られるから。参考図A
 □黒25で白が手を抜いたところ(Q-6)を切りたいが、切らずに黒25とじっと構えて遠くから睨んでいる。
 □黒が切らないところを補強する必要はないと白も26と構えて、左下隅に地をとりつつ右辺の二子に声援を送っている。
 □さらば黒も依怙地になって27に構えて今度こそ切るぞ、と脅しを掛けた。
 □それで白28とやっとここに手をかけた。ただし、Q-6にジカツギするのは重いだけで眼形に乏しいと見て、“軽サバ(軽いサバキ)”の気分で柔軟に対応するつもり。
 □黒29〜40はこんな相場。
 □黒41でやっとここ(Q-6=白8で手を抜いたところ)に切った。
 □白42、44が“軽サバ”。黒45で参考図Cのように強硬に全体を取ろうとするとかえって相手に“軽サバ”の手段を与えることになる。
 □で黒25と立って白46には黒47として“二子捨て”の筋と、双方テクニックの応酬。華麗な高等戦術に見えるが、プロとしてはジャブ程度(よくある戦い)なのか。
 □右辺の折衝は白が二子を取ってもまだ終わりではない。白56に直ちに63押さえは手抜きや切り違えなど策動の余地を与えるので、黒57〜62と右上を固めてから丁寧に黒63に受けるのが“プロフェッショナルの流儀”。
 □それでやっと右下の白のアフターケア―に入る。白64は白4、6をしっかり取り切るかどうするかを問うている。以下79までここで双方技を凝らした必死のせめぎ合い。
 □戦いの真っ最中に白80と微妙な時期に微妙なトコロをハネる。寄せとしてなら白80はその一路上(O-3)に引いておけば、黒に切られてもカケが成立して一眼の
余地があるところなのにこうしてワザと危険な二段にハネたのは、下辺黒との攻め合いになる可能性を見て、黒の出方を窺った高等テクニックに見えたが...
 □黒はそれに反発して黒81、83とまとめて御用と居直った。これで下辺が取れていれば右辺〜下辺の右下の黒はまとまれば45目という巨大な黒地になるが...
 □右下で時限爆弾を抱えて拡大した戦線に白黒決着をつけるべく、白84〜98と双方正規軍は土俵中央で正面衝突、卍に切り違えて引くに引けないのっぴきならぬ戦いに突入した。
 □決戦となるイクサの途中黒99は微妙な一着だった。結果から言うと、この後中央の戦いは白が黒の要石八子を召し取るという大戦果⇒白大勝利確定を挙げて終わるのだが、実戦はあれよあれよという間に進んでしまって解説の大矢Pのコメントする隙もなかった。それでここはあおきが自己流で検討してみた。参考図D、E、F、G、Hである。ご笑覧ください。
 □黒107で参考図Jは無駄な抵抗。既に小林の首は飛んでいる。
 □白112では参考図Kと上を切り違えて左辺の黒を取りにいくのも考えられた。しかし、実戦はもう充分勝っていると見て自重した。その判断自体は正しかったのだが、このあたりから勝利を意識した三村は“石橋を叩いて”の気分、守りに入っている。
 □“石橋”は白120にも現われている。その前に上辺O-18サガリからハネツギと、下辺K-3の絶対先手は利かしておかなければならなかった。(実戦では黒から手をつけられている=逆寄せ)
 □黒137〜145は黒悪い、と見ての小林必死の頑張り。解説の大矢Pは「“負けの前の形作り”。白146でブツカリから行けば黒中央か左辺どちらかはつぶれていた。」と言っていたが、これは大矢Pの間違い。参考図L(あおきが発見した。えっへん)の手段があって、黒は綺麗に両方シノいでいる。
 □白178は黒がその左に受ければハネツギで先手寄せになるところ。小林(黒)はそれを利かされと見て、気合で黒179と打った。
 □黒179は白からその右のノゾキなどを封じていて受けてもらうだけで1〜2目得をしている逆寄せっぽいトコロ。三村(白)もまた利かされを嫌い手抜きをして白184トビ込みと打った。実戦の気合、反発の応酬である。
 □白184が後手7目、黒187がこれまた後手7目とほぼ同じ価値で損得はないように思えるが、これがすぐ後に起こるハプニングの逆転劇の導火線となった。
 □三村の“石橋”とは逆の“先手のトコロは全て先手で打たねば”という焦燥感からくる見損じが白の202。参考図Mでコウ含みながら「アタリアタリの両アタリが成立する」と思ったがこれが錯覚。参考図Nでなにごともない。
 □後手1目半の白202と後手ながら実質7目弱(む〜ん、あおきには後手5目としか思えないが...orL)の黒203では比較にならない。あっという間の逆転劇でさしもの名局を三村は一瞬の油断と焦りがフイにしてしまった。

 参考図A 黒21でノビは、白32からのシチョウが成立する






 黒21でノビは白22の切り込みがあり、白32からのシチョウが成立する

 参考図B 黒25切りは逆効果






 黒25で白がつがなかった所をきるのは気合いのようでもあるが、白26、28の調子を与えるのを嫌って、実戦のようにじっと腰を落として構えて遠くから大きくにらみを利かしている。もっとも参考図の進行もこれはこれで又別のりっぱな碁だという気があおきにはするのだが。要は好み、ということかしら。


 参考図C “軽サバ”






 黒45などと強硬手段を取ると逆に白からサバキの筋に入ってくる。

参考図D 黒99で中央白の取りかけは、逆に白100出切りから黒が取られる






 黒があわてて中央を取りかけに行くと、白100からの出切りが成立してユルミシチョウで逆に黒が取られるので...


 参考図E
 黒99ではツギの方が中央の戦いでハタラいている






 黒99と根本をしっかりついでダメをひとつ詰めておくと、黒101に白が左方を受ければ攻め合いは黒良し。

 参考図F 黒99ではツギの方が中央の戦いでハタラいている(続き) 白が102で右の白石を逃げれば






 白が100、102とここを逃げても、黒103に切れば左方いずれかの白が取られる。仮に、白104と下方の白を助ければ上の白三子が取られる。(つまり、中央の黒と左方の黒が連絡して生きることになる)その後に下辺の白が一子を噛みとって下辺の黒との攻め合いにいっても、この黒は生きる。すると白は中央の白と下辺右の白のいずれかが死ぬことになる。

 参考図G 黒99ではツギの方が中央の戦いでハタラいている(続き) 白104では上の白を助けると






 下の白が取られ、これで中央、下辺、左辺と3つあった黒が連絡して生きる理想形で圧倒的に黒良し。白は中央は大丈夫だが、下辺右の白は先手でも、生きない。


 参考図H 黒99ではツギのほうが中央の攻め合いに役立っていた?(続き) 白102で中央の白を捨てて勝負に出る。






 黒99ではツギの方が、中央白のダメを詰めてハタラいていたかもしれない。これは一例だが、中央での攻め合いは黒がぐっと有利になる。


 参考図J 黒107は無駄な抵抗






 黒101、103は安易な手だった。白104、106が鋭いカウンターパンチでこの時既に小林の首は飛んでいる。黒107としても以下以下118まで必然で攻めている黒は取られている。


 参考図K 最強の応対白112






 最強の応対は白112と切り違えることである。こう切り違えて左辺の黒数子を取りに行く図である。左辺の黒五子は周囲の強力な白の包囲網の中でいかにも頼りなげであり、これへの攻めは充分に成算ありと思われる。また仮に万が一黒が生きたとしても、その時点で攻めを収めればよく、それだけでも攻めの効果はあがっていると思うが、中央で大戦果を得た三村は“窮鼠猫を噛む”アクシデントを怖れて、これ以上戦線を不用意に広げる必要はないと見て、穏便に白112と左隅の地を確実に確保した。その計算は間違ってはいなかったのだが...

 参考図L 対局者が一番読んでいる 白146ブツカリでも黒はシノギあり






 放送では大矢Pが「白146ではブツカリから黒は左辺、中央が分断され、両方ともにシノぐのは大変」だなんて言っていたが、これは大嘘。ブツカリでも黒鮮やかに両方ともにシノいでいる。やはり、“対局者が一番良く読んでいる”

 参考図M 白206錯覚






 白206は黒手抜き、例えば黒207ハネ(後手7目弱で最大の寄せ)なら、コウ付きながら208から212で両アタリとなると思ったが...

 参考図N 白206錯覚(続き)=黒211抜きで手にならない







 





posted by 蔵山車理恵蔵 at 17:12| Comment(0) | TrackBack(1) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月26日

寄せの手筋論

 寄せの手筋問題 正解図A 白地5目 ただし実は寄せの手止まりで黒が後手のハネツギの逆寄せ(本来白からのハネツギが片先手の権利のところ)を打つ、という非現実的なケース






 黒1〜11となり、白12パスに黒13白14となったところで、問題。黒先15でどう寄せればいいか、という問題。正解は黒15R-3(三々)切りに白16とカカエ、そこで黒17アタリを先手で利かして白18取りと交換すれば正解。ここで終わればよいところを、黒19白20黒21と後手のハネツギを打ち、白22黒23(白先手)まで書いてあるから話はおかしくなってくる。

 失敗図B 白地7目






 これは黒15で一線のハネツギからいった失敗図である。黒17で後手を引いたところで白先手で白18黒19を決めて終了、この部分の白地は7目である。
 正解図Aでは、この失敗図Bとできる白地を比較させたいがために態々黒19、21の後手寄せ(と白22黒23の先手寄せ)まで打たせ白地を5目と確認させて正解図の手筋の効用=「2目の儲け」を証明させているのであるが、これはためにする比較であって机上の空論に近い。
 
 実戦の寄せ想定図C 白先の場合 白地8目






 白16で白先の場合、白16黒17白18のハネツギは黒19が必要で(普通)先手になる。白20黒21もタイミングを過たなければ先手になる。この図が一般的な実戦の想定図である。


 実戦の寄せ想定図D 黒先の場合 白地6目






 たまたま手番が黒であるケースに限り、黒15と三々にひとつ放り込んで相手の様子を窺うのが寄せと言わず手筋である。というのも、黒15に白手抜きすれば黒はどちらかをサガリ、白全体を屠ってしまうから白は16で手を抜けない。白16はこのようにR-2かS-3かのいずれかに抱えなければならない。すると黒は他方を下から先手でアタリにすることができるわけで、本来上記の想定図Cのように白地8目となるべきところを白地6目に減らしているのが手筋“三々一発切り”の効用である。実戦だとこの後黒はここは放置して他のもっと大きい寄せに回るだろうから、普通ここの一線の寄せは両方白の権利になる。





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2006年05月25日

NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △小県真樹九段対▲倉橋正行九段 黒中押し勝 2006.5.14OA








 解説:今村俊也九段
 □「倉橋九段は先行型、小県九段は追い込みタイプですから、どちらも棋風通りに打って細かくなるでしょう」と解説の今村俊也九段。
 □白10までの布石はよくあるが黒11のケイマ開きは珍しい。
 □白12の割ウチも珍しい。
 □黒15はこうハサミたくなるところ。これで、D-15のコスミでは白15のケイマが好形で白に満足されてしまう。
 □白16に黒17と固く構えたのは、上で強く戦うための準備だが、白も24のコスミで迎え撃つ。
 □黒25のカケツギに白26のハサミは最近の流行。この碁では左辺の価値が低いのでこう打ちたくなる、という。
 □白28の打ち込みに黒31〜39とコウにいったが、これは準備不足。コウに行くなら黒29の時に上辺を一間にトンでここを大きくしておいてからやるべきだった。
 □白42についで白厚く、黒41、43の連打では引き合わない。
 □だから白は44〜62とここから大きく動いていったがこの所はとりあわず、右上のR-14のツメあたりがクールでよかった。
 □黒63〜73と黒は左上の一子を動いていった。
 □白74から76の切断は碁を決めにいった手だが、何気ない90のノビが緩着。ここは91のトビが互いの急所で、一気に碁は険しい戦いへ入る。
 □黒101、103がツボに入った。
 □白104、106、108とシノギをもとめるが黒109の切り返しから111、113のハネツギがさすがの決め手。これで左辺か左下のどちらかの白が死んでいる。
 □碁はあっけなく終わってしまった。
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2006年05月24日

第11回LG杯世界棋王戦二回戦 △河野臨(日本)対▲李昌鎬(韓国) 黒1目半勝 2006.5.17韓国ソウル








 自戦解説:河野臨九段(自戦解説)、大矢浩一九段(『囲碁ジャーナル』2006.5.27)
 □白6のハサミに7、9のツケヒキから11のハサミ返しはこの場合肯ける作戦だ。12〜18の塗りつけは許しても足早に左下星を黒19と制し、黒が地合いで先行する。
 □「白48で迷った」と河野P。「時期尚早だったか」という。黒49〜白52で間に合わされ、白からの有効な二の矢が見つからないのである。
 □白48では参考図Aが普通の行き方。下辺を重視したいのである。
 □白56ではもう一路上のO-6の二間トビも考えられた。次の黒57のボーシが双方の模様の接点であまりにもぴったりだったからである。
 □白58、60と下辺に打ち込むが、黒も59、61としっかり受けてうろたえない。
 □白64、66と囲えば、黒65、67と李は実利と厚みのバランスを考え打っている。
 □白はここで68から上辺を脅かし、その調子で白72、76と右上中央に40目のふっくらとした地をつくる。
 □が黒は77、79と打ってあわてない。
 □白は80〜88と左辺から右辺中央を強化、まとめて収束を図る。このまま波乱無く終われば白面白いが...。
 □その瞬間の黒89から95、99まで捨石にしての125までは隅の白のシメツケを見たおおがかりな黒の作戦が見事に決まった。
 □実戦では黒123〜125と後手を引いてこの隅を収束したが、参考図Bのように黒123で隅から手をつけていけば、ここは黒先手でのシメツケが利き、その先手を中央へまわすことができた。白が126で中央に回った実戦とは一手の差がある。これなら黒はっきり良かった。
 □が実戦でも左上のシメツケで黒が盛り返して形勢は混沌としてきている。白半目か1目半良し、とのこと。(大矢P)
 □白126に黒129が黒のミス。白130からの出切りが成立しては下辺の黒地が大幅に減った。白再び優勢。
 □白148、150は左辺の白地をまとめようとしたものだが黒151(気がつかない好手である)のトビ込みがあってできる白地は意外にたいしたことがなかった。(結果的に白地4目)それなら黒149の白六子アタリを接いでいたほうが優った。後手9目の上に、白179と押さえる手が大きくなり(黒180で手抜きは白181サガリで左右の黒の取りが見合いになる)、将来左下隅のハネツギが権利となる。
 □この一連の折衝でせっかくの白の絶対優位は吹っ飛んだ。白まだリードしているが差は縮まった。
 □白156が後手で小さい。白156では露骨に白157を先手で決めて(黒ツギ)白252のところが左下隅の手段と179押さえ=アタリを見合いにしていて先手でばかでかい。
 □その瞬間、黒は中央各所を先手で稼ぎ、左下の逆寄せ9目(つまり実質は倍の18目。ここは両先手4目でもある。受けるのは口惜しいので白は手を抜いたのだ)の黒173ハネと黒179のワタリ6目を両方打ってしまった。この間に白が打ったのは上辺白174の押さえだけというていたらくである。これでは形勢不明。
 □白180、182とコウにしたのが白の誤算である。コウ材は黒が多い。ここで白は先手ハネツギのところを10目は損をしている。右上の白196、198の連打は6目でコウの代償としてはひきあわないのである。
 □黒197に打ち抜いて勝利が確定した。
 □河野の善戦というよりは、李昌鎬の不出来な一局というべきだろう。序盤戦が無造作という李の悪い癖が出て、白76と中央を囲ったあたりでは白が地も多く厚くて面白い。それを黒89〜125の捨石によるシメツケで一気に挽回するあたりは流石李(もっとも、東京で張が発見した黒先手のシメツケを李は見逃してはいるが)だが、黒129がらしくない手拍子で大チョンボ、黒の一等地が破れて破綻したかに見えたが、白148に黒151がすごい頑張り、これで二十目近くできるかに見えた左辺の白地がシャボン玉のように消えてしまった。最後は河野の焦りからくる判断ミスで崩れるが、一局の流れの基本は李昌鎬がひとりで転び一人でリカバリーした一人相撲の観が強い。黒89〜125といい、黒151といい、後からだったら「プロなら一目」の手段かもしれないが、少なくとも直前までの河野には見えていなかった手であり、さすがは李昌鎬という気がする。彼は若い時からこういう勝ち方をしていたものであった。


 参考図A 白48では下辺重視が吉






 白48では下辺の黒模様に臨むのが常識的な作戦。参考図Aとなれば白が理想的で、黒もどこかで反発するだろうが、それはそれで一局の碁。

 参考図B 黒123では隅から打てば黒先手でこの部分のシメツケができていた






 黒123で隅から打てば損を大きくして攻め合いは白勝ちに変わりはないが、これならここは黒が先手でシメツケることができ、黒123〜125となった黒後手の実戦とは大違い。これなら黒は先手で中央に戻ることができて、白が中央に先手で戻った実戦とは一手違うことになっていた。この進行は形勢黒良し。





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2006年05月23日

第26期NECカップ一回戦 △趙善津九段対▲王銘ワン九段 黒半目勝








 解説:武宮正樹九段
 □黒5から7と引いて厚みで一局というのは呉清源が開発し、王立誠、王銘ワン等に伝えられた“21世紀の打ち方”
 □白12とハネたのは参考図Aが白番趙の注文。これはこれで穏やかな進行だが、王は13、15と打って初志を貫徹する。
 □黒17、19の構えに白20とトンだ。「落ち着いた冷静な手ですが、感覚的に緩い」と武宮P。白が左上隅に凝り固まっているのが実利の重複なのだ。白20では参考図Bと上下の黒模様を堂々と裂いていく所。
 □黒は21、23で模様のスケールが大きくなった。
 □白24はこの一手だが、25は厳しいハサミ(K-17の三線のハサミは左上が裾空きでつらい)のようでいて白26から42、44となった結果は甘い。ここでは相手に反発を許さず、参考図Cのカタツキからビシビシ決めてゆくのが“ゾーンプレス戦法”の王銘ワンらしくてこの際は適切だった。
 □実戦は白26トビに黒27とぼんやり受けている間に機敏に白30〜41を利かされて先手で左下を荒され、とって返して白42、44と好型におさまっては白満足だろう。
 □黒45の打ち込みはこの一手。
 □趙は白46、48をちゃっかり先手で利かして、白50〜56と上下を打って自在にうちまわしているように見えるが、これは薄い打ち方。参考図Dが「品のある打ち方」と武宮P。
 □ここからの黒の攻勢は一本道で見もの。それなりの構えと見える左下、右辺、上辺、右下の白集団を順番に撃破あるいは制圧してゆく。
 □まず、黒57〜61が存外に迫力ある攻めだった。
 □白はいったん下辺に手を抜き、上辺白62と黒模様に打ち込むが、黒63にボーシされると64、68と腰砕けで遁走せねばならず、調子で黒69と攻めながら左辺を大きく黒地にされるのが辛い。しかも黒は先手だ。
 □次に、71〜75、77と上辺と右辺の白を切断して、白80と愚形で連絡しなければならないのが辛い。しかも白は後手だ。
 □黒81、83、85と敵を脅かす手がイコール味方の陣を固める実質のある手になっているのが快感。連続先制パンチだ。
 □黒87〜白96も先手で右辺の白を四方八方から包囲圧迫して、これまた先手のままいったん攻撃をやめ、右下に移る。
 □先程白が狡っからく先手で得をして切り上げたかに見えた白48を手厚く噛み取る手が何と先手12目というからこたえられない。
 □黒57に始まった黒の怒涛の大進撃の仕上げが黒123の筈だった。
 □が、白124〜134の捲りが白の逆襲のテクニックで、これで局面はにわかに接近した。
 □左辺の仕上げでしくじった黒は焦る。上辺黒149は先に黒141白144の交換をしてしまったため、後手なのだ。(黒141白144の交換がなければ単独の黒149はほぼ先手が約束される)
 □黒149では参考図Fがお奨め。後手だが、後に狙いがある。こうしておけば必勝型。実戦のように運天の半目勝負にはならなかった。

 

参考図A 白12は白の注文







 参考図B 白20では黒模様をボカす






 白20では20とかかって黒模様を堂々と割ってボカしたかった。

 参考図C 黒25ゾーンプレス戦法






 白25では相手に余裕を与えず25のカタツキからビシビシ決めるのが“ゾーンプレス戦法”の王銘ワンらしくてこの場合良い。実戦は白26一間トビから42、44が絶好の消しで黒模様を左右に割って自身は治まり気持がいい。

 参考図D 白46〜52王道






 白46〜52と後手でもしっかり下辺を構えて黒45を睨むのが王道。白22は軽い(黒55と互角だからサバキには不自由しない。何しろ上辺と右下の白が厚いのが強力な援軍なのだ)。

 参考図E 黒123兵法=勝ちきりの術






 勝ちが目の前にちらついてきた黒はにわかに弱気になる。左下の黒はアジが悪いのは確かで、左辺からの侵入と絡めてC-3ノゾキあたりに白から打たれると、タダではすみそうにない。だから黒123としっかり錠を掛けて「勝ちました」としたのだ実戦だが、白124からのマクリは強烈だった。ここでは黒123と利かして白124とノビさせ、その調子で黒125とコスむのが一見緩んでいるようにみえて実は最も堅実な戦術、兵法の極意というものであった。

 参考図F 黒149でお奨めの必勝法






 黒149〜153が後手八目ながら厚い。将来この白は、黒169のように出口が止まると白171ツケが狙いで、猫はキャンと鳴いて氏むでしまうのだった。
 



  










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2006年05月22日

第26期NECカップ一回戦 △王立誠九段対▲小林覚九段 黒中押し勝 2006.5.13大分








 解説:武宮正樹九段
 □「小林さんの手厚い碁に対し、王さんの変幻自在が見もので、訳の分からない世界に入りそうです」と武宮P。
 □白8と二連星の真ん中に割り打ちしたのに対し、黒9とただちに詰めて、白10と三間に開く。
 □黒11〜16は比較的珍しい形という。このカタチは未完成で将来黒からQ-16からの出切りが手になるところ。
 □黒が17、19と下辺に展開すると、王は早々と白20と三々に入り、アマシ作戦。
 □白34ツメは上記の出切りを牽制している。
 □黒が39に押さえたのも、やはり上記の出切りを強調しつつ、隅を固めた大きい手ではある。
 □その瞬間の白40オキ一本が王マジック。これは後に出てくる右辺白の死活の足しになる一着だったが、実戦では王はこれを生かしきれなかった。
 □白42と黒43を交換して下辺の黒模様の谷を深くしてからの白44消しに対し、武宮からクレームがついた。「深すぎる。L-6と一路浅く六線から臨むべき」という。
 □確かに黒45のボーシは絶好のカウンターパンチに見える。
 □ところがこの後の白46〜64で黒は下辺と右辺にそれぞれ数目の地を得たが小さく、一方白は白64とノビきって安定した。これは白のシノギ成功である。
 □深すぎる44の消しに対して黒はどのように咎めればよかったのか、参考図も一行の記事も『週刊碁』(2006.5.29)は伝えていない。おおらかな武宮がカタチだけをぱっと見て直感的に悪いと断言したものか、「アマチュアでもその程度のことはふつう分かりそうなものだ」ということで記事がそのくだりをカットしたのか。序盤の最初の大きな戦いだけにその記述がないと我々底レベルの読者には訳がわからないのである。
 □だから、その後で「白60と62の両バネが厳しく、黒は63と切って辛抱するしかなかった」と云われても困るのである。武宮も「王さんはこうやってシノぐのが上手なんですよ」と笑ってごまかしている。さては正解(黒45以下の黒からのあるべき正しい攻め)は図では示してないな、こりゃ。このあたりの参考図もふたつあるが、説得力がないのでカット。
 □下辺で一本取られた黒は65〜71と出切っていくが白70ツケでここはシノいでいるかに見える。
 □黒は右辺にいったん手を抜き、黒73〜77と上辺に力を貯める。
 □王がそれにつられたか、78とおつきあいをして上辺に一手かけた時、小林は79歩割り込みという奇手から右辺に手を戻す。
 □白80で86と一子を噛み取っていると黒に下辺に渡られ白は一眼で中央に逃げ出さなければならないので白80に接いだものの、黒に81と逆に一子噛み取られ、白は命からがら中央突破を図る。実は、白にはこの部分だけで生きる手段はあったのだが。
 □黒81〜111の攻めに、白はいったん手を抜き白112と下辺を突き出したのは気合いでもあるが、将来のカラミ攻め(黒109のノゾキでこの白は目無しになる可能性が出てきて、ヒッジョーに危険が危ないのだ)を事前に避け、又後に実現する白126、128からの下辺黒を取る狙いを秘めている。
 □白に手抜きされて怒った黒は113、115と猛チャージをかけるが白116を犠打にした白118〜黒125が先手のうまいシノギが決まった。
 □実は黒119が緩着(?!)。参考図Aの黒119ノビが正着で、これなら白困っていたかもしれない。
 □中央をくつろげ、しかも先手を得た白は待望の前述の白126〜132と下辺黒をコウ攻めにする。
 □黒133のコウ材は無効で、白は手を抜いて下辺M-3とコウをついで良かった。出入り30目の大きな手である。この図は白大勝。
 □続いて黒がG-12(白134の所)と切っても右辺の白大石は参考図Bの手段で巧妙に生きているのだ!(両対局者ともにこの手段を対局中は知らなかった、と後で告白した。)
 □白124とここに接いでは残念ながら白からはコウ材がない。やむなく白136、138のハネノビで妥協する。これは中央の白との攻め合いと下辺左側の黒三子の取りを見合いにしたものだが、これには落とし穴があった。
 □続いて黒139に打たれると、中央は白140に黒141とかかえられると白142が必要で黒143と中央を黒地にされてしまう。では、とばかりに下辺を白144、146と出切っても、黒は参考図C黒147のサガリでよかったのだ。
 □ところが黒は安全を期した(G-4からの出切りが恐かった)つもりの黒147コスミツケが重大なミスだった。
 □白150にコスミツケられるとつい参考図Dのようにいきたくなるが、この図は白先手で白の下辺と左下が連絡してしまう。しかも黒が157で手抜きすれば左下の黒は取られてしまうのだ。
 □だから153で中央の白を切り離すことにして、白154以下左下を白地にすることを許す。黒155〜167による中央白大石の撲殺に命をかけたのだ。(参考図Bの手段があって、白が正しく打てば中央の白は生きるわけだから、これは寄せ勝負参考図E)
 □ところが、白168が敗着。正しくは参考図Eで、こうなると後は寄せ。むつかしい寄せが続くが若干黒が厚いような気がする。

 参考図A 黒119はノビが正着






 黒119とノビれば右辺からの白の大石は封鎖できる。白120でこの黒が危ないようだが、黒121が妙手でこの黒は白を取って生きる。ただし、こうなると白130の一子抜きが先手となり、黒135まで白先手でこの部分の白石が生きてしまう。実際は両対局者ともにこの白132〜黒135先手白一眼が分かっていなかっただけに、その良し悪しばビミョ―である。

 参考図B 黒133無コウ⇒白下辺のコウを抜いて大勝






 黒133は無コウ。白は134と下辺のコウを解消して30目の利と危なかった下辺白の安定を得ることができて大勝であろう。ただし、黒135と切られて、白136、138の先手一眼(黒139で隅に手を抜けば白渡って隅に更にもう一眼できて合計二眼で後手生き)に気がつけば(実際は両者気がついていなかった)という仮定にたてば、の話であるが。白140で後手生きとなる。蛇足だが、黒141に突っ込むと逆に黒が追い落としにあう。
 
 参考図C 黒147サガリで黒勝ち







 黒147ではこのサガリで白二子を取れていた。黒は白148からの出切りを心配したのだろうが、手にならない。とすれば、白は148でG-8(実戦の黒153の所)に打って上下の白を連絡するしかない。(黒からその下に割り込めば、アタリから追い落とし含みで中央の黒が落ちる)これは黒勝ちだろう。

 参考図D 黒151アテは利敵行為






 151手で黒はついこのようにアテたくなるが、この図は156まで下辺の白と左下隅の白が先手でつながって、白を安心させてしまう。黒が157で手を抜けば、下辺の黒は158以下で簡単に落ちてしまい部分的には大損だ。

 参考図E 白168で正しく打てば黒のやや厚い寄せ勝負














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2006年05月21日

NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △本田邦久九段対▲今村善彰八段 白6目半勝 2006.5.21OA








 解説:苑田勇一九段
 □解説の苑田Pは「本田さんは足早に行って頑張るタイプ。激しい戦いが予想される」と言う。
 □序盤まず右下隅で戦いが起こった。白8のハサミに黒9とカケ、白10の出切り以下黒29まで典型的な白の厚みと黒の実利という分かれになった。40年前1960年代流行の定石だという。
 □「先手を取った白は右下にできた厚みを活かす意味で、右上で激しく戦いたい」という苑田Pの言葉通り、白30〜黒39という展開になる。この折衝は黒35と中央に向かって突き出した黒が遠く右下の厚みを消しており、また右上の白地の中の黒一子もまだ動き出す余地が残っていて黒不満なし。
 □白40〜42と趣向を凝らす。
 □黒は左下ではなく43と打ち込んだ。
 □白44〜52と左辺の黒を白攻め上げる。
 □ここで黒53、55と白54、56の交換。黒は左上の黒地を確保したのに対し、白は左辺の白石を強化、左辺の黒との力関係で優位に立った。
 □ここで白は単に左辺の黒を逃げているだけではダメだと黒57、59と下辺に打ち込む。二正面作戦である。
 □白も58、60とボーシで対抗、黒を上下に分断する。
 □黒は61〜69と左辺〜中央の黒のシノギを図る。
 □ここで白は一本調子の攻めは続かないと見て、いったん70と隅の白地を確保しつつ下辺の黒の出方を窺う。
 □黒71〜77と上下の連絡を図る。
 □白78、80のコウは非常手段。
 □黒81で90に切れば天下コウだが、白取りに黒コウ材がない。
 □やむなく黒81とついで謝る。白一本取ったカタチ。
 □白コウ取りに、黒85とワタって下辺の黒を右側に連絡させる。
 □白87、89と攻め上げ、黒コウ取りに白もいったんは90と接ぐ。これは譲歩したようだが、黒も93のヒキと左辺〜中央の黒を生きねばならず、結局白94のハネ出しに回り、以下黒101まで先手で左下の黒四子をとりこんで手を打つ。
 □その先手で白102を打ち、懸案の右上をしっかり白地にすれば形勢は白面白い、かと苑田P。
 □黒103一目噛み取りは左上三々打ち込みを牽制して小さくはないが、黒53、55、103と序盤から中盤の大事な時に三手かけるだけの価値があったか、どうか。これで左上がそっくり黒地になれば大きいが、実戦はこの後白106のツケから上辺を楽々割られているのである。
 □白104の押しが双方の模様の必争点でばかでかい。勝着ではないか。
 □黒105と白106は双方の模様の荒らし合いで、いわば見合い。
 □以下寄せだが、無難に中央をまとめた白が6目半あました。
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2006年05月19日

第3回中野杯U20選手権 予選1回戦 △田尻悠人院生対▲関達也初段 白中押し勝








 解説:大淵盛人九段
 □黒1の小目から黒5、7と大ケイマと構えるのは珍しい。「研究してから打つのならいいが、思いつきなら許さん」と大淵P。悪手ということか?
 □「黒15では、参考図Aと大きく構えてR-7の打ち込みを睨んで右辺の白にプレッシャーを与えたいところ」と大淵P。
 □黒27と白28の交換はだけしてやめたのは悪手。途中でやめるなら保留すべき。
 □黒29悪手。黒27と白28と決めて右辺の白を強くしたのならなおさら下辺の整備が急。参考図Bと下辺に一手かけるべき。実戦は白30のツメ、白32のケイマが絶好になっていて、この時点で最早黒悪い。
 □白は黒51まで右下の黒を攻めたところでいったん矛を収め、白52と
こちらに圧力をかける。
 □黒53、55は形勢不利を自覚した黒の頑張りだが、無理気味。
 □白56、58とこのラインを裂いていく。当然とはいえ、厳しい攻めだった。
 □黒59切り違えが敗着。参考図C黒59のフクラミから丁寧に決めればまだ勝負は続いていた。(非勢であることには変わりはないが)白60と受ければシチョウだから、参考図Dの進行となる。これなら被害は最小限にとどめることができた。
 □実戦は白60のアテを食らい左辺と中央、それに右下の黒と三方ガラミの攻めを受けることになった。
 □黒61〜79で左の黒を逃れるが、その間に白72、74、76と中央を厚くされていて、次の白80が中央と右下の黒を裂いて急所の一撃。
 □黒は83〜95と中央の黒を脱出させるがその間に白88、92、94と右下の黒が封鎖されている。
 □結局96〜120で右下の黒はジ・エンド。碁もジ・エンド。やはり、序盤の黒27と白28の交換はマイナスに働いたのだ。
 □この後、黒は左上と中央の白にくいついて暴れるが白132まで中央の白がまず生きた。
 □黒は133〜145と左上の白を攻める。
 □白は左上の白をただ生きるのはつまらないと、白146と上辺を出て、上辺の黒地を荒らして寄せながら、攻め合い含みで生きようと頑張る。
 □だから黒も怒り、黒147と左上の白の目を奪って攻め合いに行く。
 □白148〜黒165で黒は上辺は荒らされたが中央〜上辺をまとめた。
 □左上隅の白と黒の争いは白に二眼はなく、黒は目持ちとE-14(白166)の連絡が見合いで黒勝ち。
 □白166は投了の前の形作りと言ってもいい。次に黒が左上隅に一手入れて生きれば、自動的に左上隅の白は死んでいるがそれでは足りない(その証明が参考図E)と見て黒はあえてパス。
 □結局、左上はコウになり、白は192のコウ立てで充分。ここで黒は投了した。
生きる、左上の白と上辺の黒の攻め合いは本コウ
 参考図A 黒15での序盤構想






 実戦の進行は白16に黒17一間とヒキ、右上の黒模様がペンチャンということか?

 参考図B 黒29では下辺の備えが肝要






 白30、32と左右から先手で“開きヅメ”を食らっては黒もたまらないだろう。これは賛成だ。

 参考図C 黒59フクラミに白60の受けはシチョウ






 これは白悪いので、参考図Dになるが、

 参考図D 参考図Cの白60ではヒキ






 ボロボロ石を取られて“乞食ワタリ”するようでは悪いとしたものだが、仕方がないという。

 参考図E 黒169で左上隅に手を入れ寄せると...






 やや、たったの一目半白良しだ。
















posted by 蔵山車理恵蔵 at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月17日

第15期竜星戦本戦Gブロック八回戦 △清成哲也九段対▲中村秀仁九段 白中押し勝








 解説:森田道博九段
 □黒19白20は決めないのが普通。これで黒9、13は重くなり、黒27から中央でのっぴきならない戦いが始まった。
 □黒35、白36で一段落したと思ったら、黒37が鋭いエグリ。
 □白38で39は身を食い荒らされてサッパリと見て、38、40、42と押さえハネ接ぐ。
 □黒49まで白三子を切り離して、黒は地合いでリードを奪う。
 □白は50から中央の黒一団を攻めるが、黒55、57と反発。弱石を二つかかえている(白は48の下から黒の出切りを見られている)白はここで強く出れない(白58でK-10ノビなどとやっている余裕はない)。
 □白は58の出からこの白のシノギをはかるが、白68黒69が互いに気合の反発。結局白七子と右辺のフリ替わりになる。この結果は黒が得をしたようだが、「元々右辺は黒の石数が多いところ。白石の取られ方はひどそうに見えますが、黒模様を荒らしたのも大きい。激しいねじりあいですが、ほぼ互角のワカレになりました」と森田P。
 □黒77と打ち込み、戦場は左辺へ。
 □黒103まで黒は白模様の中でほぼ生きたが、白も102、104と連打して中央が厚くなった。
 □黒105〜白120は黒の左辺と中央の大石の死活、右下白の復活を巡るハイレベルの戦い。解説はないので、実のところあおきのレベルではついていけない。(´Д`)
 □とまれ、中央の黒ふたつはともに生き、右下の白も黒が取りきった代償に白に残ったのは上辺の模様。
 □そこに黒121と打ち込んで勝負に出た。
 □ここの戦いもかなり程度が高い。プロなんだからあたりまえだ、といわれればそうだけど。
 □白132と上下を分断し、カラミ攻めに持ち込んだのが決め手。
 □白176までと上辺の黒を仕留め、清成が中押し勝ちをおさめた。

posted by 蔵山車理恵蔵 at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月12日

第5回CSK杯アジア対抗戦三回戦 △李世j(韓国)対▲古力(中国) 黒中押し勝 2006.5.3別府








 □序盤黒5、7と左上、左下をカカリッぱなしにして古力は黒9、11と上辺に先行する。白12のツケにも黒13と上辺〜右辺に模様を敷く。
 □白14の打ち込みに対する黒15のいっぱいのツメに、こんどは白が手抜きして16、18、20右辺を割る。
 □で、黒は21〜29と左上の黒を上辺との連絡形にして白30までの模様と替わる。
 □更に左下も黒31〜39と三々の実利にフリ替わる。
 □勢い白も48〜50と中央から上辺の模様に芯を入れようとするが、黒も反発して51から61と左上単独での生きを確保したうえに上辺も63から出切った上に67、69のノビきりと目いっぱいの頑張りを見せる。
 □こうなれば李世jも怒る。白70と黒を真っ二つに断ち切り土俵の中央で白黒卍巴の決戦が勃発する。
 □そんな李世jの気迫に流石の古力も正面衝突を避けて中央の67、69、71三子を犠牲に黒73,75と上辺を確保して、無難な分かれで戦いは一段落したかに見えた。
 □しかし、白が白76と打った瞬間、黒77、79と“凄いところを切って”古力が仕掛けていった。
 □この石と石がぎしぎし音をたてて絡み合う接近戦は一本道の展開を見せて展開したが、白102となってみれば、切りを入れた中央の黒の要石十一子は哀れ丸捕られとあっては、黒は何をやったのかわからない。潔い日本武士ならここで切腹して果てるところだが、ユーラシア大陸で四千年の民族レベルの生存競争に明け暮れてきた獰猛な人種は民族が根絶やしになるまで戦いを放棄することはない。
 □白地の左辺に黒3〜15と手をつけていくと、白は左辺に手を抜いて(どうして白が左辺を手を抜いたか、またどうして白が放棄したかに見える左辺の白六子を黒31とわざわざ一手をかけてとりきったのか非力のあおきには不明。ひょっとして寄せの問題なのか)白116と最後の大場に展開。
 □ここで、黒が117とカケて中央を絞りにいったが、白力強く118、120と出切っていき逆に白130と黒117以下の黒が今打った要石四子を絡め取ってしまう。
 □それで黒131の意味不明の手があって...
 □白134〜142と下辺黒を出切って中央の黒八子を取ろうとしたのが欲深の打ち過ぎだったらしい。
 □黒143と急所に一手入ると...
 □白144で149(P-9)に打てば白勝っているように見えるが、黒N-10放り込みからのシチョウという奇手がある!参考図A。
 □黒153で李世jは投了したが白154でR-11と抵抗しても参考図B。

 参考図A黒145放り込みの奇手






 白146で黒145をとればシチョウだ。白全滅

 参考図B白154の攻め合いはダメツマリ






 ダメ詰まりの関係で、白が中の黒を取っている間に、右下の白が落ちている。これを取れば地合いで大逆転。黒奇跡の生還である。


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2006年05月10日

CSK杯アジア対抗戦一回戦 △依田紀基(日本)対▲李昌鎬(韓国) 白2目半勝 2006.5.1 別府








 □白8に黒9と手を抜いて大場を占め、白10の攻めにも黒11とハサミ返す。
 □白12から黒と右上で互いに力を貯めた後、今度は白が20と右下に打ち込んで虚々実々の駆け引き。
 □黒23〜25と間に合わせて白26を誘い、その調子で27〜29と右上に手を戻す。
 □白30のツケに手を抜いて黒31、33から35とノゾキを利かそうとしたのが生意気。
 □白36〜40が的確なカウンターパンチで黒が41で42のところに切っても攻め合いは、黒の取り番のコウになる。参考図A参照。今は白からのコウ材はないが、将来のコウ材ができた時、コウにされるのが黒にとっては恐い。また、コウになるだけでも、白はシメツケていて厚い、という意味もある。
 □コウを避けて、やむなく黒41、43と後手で乞食ワタリをして生き、白は黒を右辺に封じ込めたうえ、下辺も白44開きと模様化しては勝勢と言っても過言ではない。
 □下辺は黒73からコウになったが、手厚く白76と打ち抜いておくのが勝着。
 □コウ替わりに打った黒75、77から79と迫っても白80と切り替えして攻め合い白良しでは黒は無コウを打ったに等しい。
 □黒が99、101と必死の挽回を図っても、白102〜114と根拠を持って治まり、白悪くないと言っている。日本人の碁は明るいのだ。野暮な乱戦は嫌いなのだ。えっへん。

参考図A 黒41切りからの攻め合いは黒の取り番のコウ











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2006年05月09日

第61期本因坊戦七番勝負第1局 △高尾紳路本因坊対▲山田規三生九段 白中押し勝 2006.5.9札幌








 解説:小林光一九段『囲碁ジャーナル』BS2 2006.5.13、藤沢秀行名誉棋聖、石田芳夫九段、秋山次郎八段『週刊碁』2006.5.22、淡路修三九段『第61期本因坊戦』BS2 2006.5.9
 □黒7〜11まで反発しあい、乱戦も予想されたが、高尾長考で12、14と穏やかに治まり、典型的な白の厚み対黒の実利という分かれになった。言い分が通った分、白に不満なし、とあおきはみたが...
 □左辺に白石3つ、黒石2つがバラバラに混在していてこれを収めるのには、先手の白が12とまず左上の白二子を連絡して黒7の一子を圧迫するのは異論のないところ。
 □黒13が欲張り、と小林P。参考図Aのワタリが穏やか。
 □だから、白も14で実戦のように左上にもう一手かけるのではなく、参考図Bのように力強くサガリを打って、力関係で優位にある白(二子多い)は左辺で急戦に持ち込むべきだと小林は主張する。意外にも藤沢秀行Pも同意見。
 □というのも、白24までとなった実戦の左辺での進行をあおきは「白不満無し。なぜなら、白の可能性豊かな厚みに対し、黒は3線に7本這わされて“ペンチャン”(黒地14+4目)でつらい」と判断した。これは立会い人の石田芳夫Pも同意見で、手割りから左下の分かれは白良しを主張する。参考図Cである。
 □それに対し、小林P、藤沢Pは黒の実利に軍配を上げる。理由は二つ。@白が二子多い左辺で互角の別れ(ほ〜ら、互角とは小林も認めているんだ)に終わったのは、のっぴきならない急戦にもちこんでもっと大利を得られる筈が、互角の線で妥協してつまらない。(決戦を回避=先延ばしした)A左下の寄せはあおきは互いに両先手(だから黒地+4目とした)と見たのに対し、小林は「タイミングはあるが、ここは黒からの片先手。白手抜きは参考図Dがばかデカイ(黒地21目)。(この理屈、あおきにはいまひとつ分かっていない)」である。
 □う〜む、プロって、ミクロの単位であらそってるんだなあ、とあおき感心。でも、石田P=あおき、小林P=藤沢Pと意見が分かれるほどの微妙な形勢ではあるらしい。ちなみに両対局者は1日目の進行を黒良しと見ている。もっとも、それは左下というよりは、この後の右上の進行をさしている(主導権をとっていた高尾が反省しているのは意外)のだろうが。
 □で、問題の右上である。黒29のツメに平凡な二間の開き(R-13)では高尾不満と見たか、白30と三間に開いて黒を挑発する。
 □黒33は当然の打ち込み。
 □黒35を見て、白は36と三々に打ち込み隅を荒らし、黒47の攻めにも白48、50と打って、こちらもシノぐつもり。普通は参考図Eのヒキ。これが21世紀の碁なのか。コミ6.5目の時代、激辛い韓中流の影響もみてとれる?!右上隅が黒地30目⇒白地8目だから大きいっちゃ大きいんだけど...(もっとも高尾本人は局後、三々が良くなかった、と反省している)
 □黒49がすましすぎ、と小林。例えば参考図Fのようにぐいぐい右上から迫るところ、と小林P。秋山Pもほぼ同じ意見。ただし山田が49とおとなしく打った背景にはそれまでの進行が黒良しという形勢判断がある。
 □黒51(封じ手)は当然の切り、らしい。誰もコメントしていないからだ。あおきには「おとなし路線継承で黒51ではQ-9とじっと我慢のヒキで相手に手をわたすほうが白も整形に悩ましく、黒が大物に見える」と思うのだが...。
 □白52、54と居直りを計る。
 □ここで山田が打った黒55が敗着。参考図Gとじっくり構えてこれからの碁だった。
 □参考図Gの白56では最強のラッパツギもある。参考図H、華麗な藤沢秀行説である。
 □実戦では白56のツケコシから62の逃げ出しが成立しては白面白い。参考図Jのように強引に黒65と取りに言っても、逆に黒が取られ。
 □しかし、黒65、67と3線を二本這って卑屈に連絡し、白66、68と白に中央にトビ出されたのは評判が悪かった。記録係の少年達からも参考図Kはどうか、という意見が出たほどだ。これには秋山Pも賛成した。参考図Lの裏付けがあるからである。
 □白80、86と上下の両方の白が安定しては高尾優勢は動かない。
 □「本因坊になる人は、明るいんだね。白84は85にアテたくなるけど、(それだとあたら優勢の碁が紛れてくる可能性もあるので)、実戦で充分という判断ですか。」と淡路修三本因坊元挑戦者。
 □黒121からコウを仕掛けるがコウ材は白が多い。
 □結局、下辺にコウ移ししたものの、こちらも白勝ち。
 □先手を得て白158の分断に回っては、上下どちらかの黒大石が死ぬ。

 参考図A 黒13ワタリが相場






 実戦の黒13ツケは欲張った手。黒が一手少ない左辺ではこの図のように孤立したふたつの黒石をとりあえず連絡しておくのが相場というもの。

参考図B 白14ではサガリで左辺で白が主導権を持った戦い






 左下に限定して言えば白黒二子づつある互角の状態だから、先手の利を最大限に生かしてこのように白14サガリから忙しく戦いに持ち込むべし、というのが小林の主張。

 参考図C 左下は手割りで考えると白良し=石田芳夫P説






 手順を変えて考えて見ると左したは白4の星に黒9とカカリ、白10の手抜き(左上ツケ)に黒11三々入り、以下白18まで進んだとき、黒は当然D-7とアテるところをおとなしく、3線に三本、それも後手で這った理屈になる。

 参考図D 左下の実利は黒21目







 参考図E 白36ヒキが普通の進行






 黒33、35は地に辛い打ち込みだが、黒の勢力圏での白としてはおとなしく白36ヒキと打つのが被告の立場にある者のやむを得ない打ち方だと従来(小林)の考え方。

 参考図F 黒49は激しく二段にハネて右辺を盛り上げる






 実戦の黒47はじっくり構えて相手にサバキの調子を与えまいとする手だが、落ち着きすぎというのが小林説。この図の黒47のようにハネ上げてぐいぐい露骨に右辺を盛り上げるのが実践的という。

 参考図G 黒55=腰を落とした攻め(小林P)






 参考図Fと逆のケースで、攻めを焦りすぎた。実戦は白56のツケコシを食って参っている。ここは鈍重なようでも黒55とヒキでまずは右下の自陣を固め、じっくりと右辺の白をにらむのが高尾も対応に苦しんだろう、という。むつかしいものだ。

 参考図H 黒55=藤沢秀行説






 白56ではラッパツギが最大に頑張っている。それでも黒は57とカケて、白58には黒59とトんで白を攻めながら、左下の白模様を消す雄大な秀行構想も魅力ではある。黒57でP-9と切っても下からアテシボリ、左下の白模様を立体的にまとめれば、白は五子ともに捨てても白良しという高度な戦術なのである。(ここの記述は5.15のエントリーではシチョウと間違えて記述していたので、5.16訂正しました。
m(_ _)m)

 参考図J 黒65見損じ






 黒65の取りかけは成立しない。白66のコスミが妙手で黒が逆に取られてしまう。
石田芳夫Pは「これで我慢して右辺からの白の中央進出を遮断し、出来た黒の壁を背景にH-4に打ち込んでやっていくしかない。遠い話だが、右辺の白はT-9にスベれば白一眼ということもあるし...」というが。

 参考図K 黒67では中央先行すべし






 黒67ではちまちまと隅を守るのではなく、とにかくも黒67と中央に先行したかった。黒75までとなれば、中央の攻防が一手違う。この一手の差は大きい。

 参考図L 出切りは無理






 「参考図Kの白72で、白72からの出切りには黒77の押さえがナイスで、この一子を犠打にして攻め合いは黒の勝ち。とすれば、黒は参考図Kでがんばりたかった」と秋山P。
















 



 

posted by 蔵山車理恵蔵 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月01日

第10回LG杯世界棋王戦決勝五番勝負第5局 △陳耀此蔽羚顱紡弌、ジ杜蓮蔽羚顱法々・羃,珪 。2006.4.21ソウル








 解説:M・レドモンド九段
 □先番の古力は序盤から走る。黒29まで足早に展開して四隅を占め、戦いは受けて立つ構え。
 □誘われれば白28、34と真正面から攻勢をかける。
 □白42と急所に切りが入って、局面は急に険しくなってきた。
 □右上隅で白が生きる白48は大きいが、参考図Aのアテが有力だった。
 □白48と隅を生きたため、黒49〜53に白54のトビが余儀なく、調子で黒55に石が自然と来る流れになれば黒好調。両側の白も弱いところをかかえているので、右辺の黒はそんなに弱い石ではなくなった。古力の作戦が功を奏し、主導権を握った。
 □白の誤算は上辺の黒の死活を読み誤まっていたことである。白72で参考図Bが成立すると思っていた。
 □黒61と二子の頭を叩かれては白がいい理屈はない。
 □白88までの局面を形勢判断すると、碁版の上半分では白が実利で僅かにリードしている。しかし黒は右下隅と左下隅を確保しているので、全体では黒の実利がやや上回っている。さらに中央の白一団が弱いため、黒がかなり打ちやすい。
 □黒89、91は白模様を消しながら左上の薄みを補強し、更には中央の白を狙う一石三鳥の好手。
 □白98まで、中央はあつくなったが、今度は右辺が薄くなってしまった。
 □白は右辺のシノギを間違えた。白106では111が正しく、この地点は双方からの死活ガラミの大きい手で両先手4目だった。参考図Cである。
 □右辺は黒129まで厳しくイジメ、古力がリードを広げた。
 □黒155が気付きにくい妙手。黒161が先手になって、黒の勝利がはっきり見えてきた。
 □黒173がトドメの一着。参考図白174の逃げ出しは成立しない。実戦はしろ178までと黒四子を取ったが、タネ石の白三子を取った黒が得をしたのは明らか。
 □最後は盤面20目以上の大差になり、黒の中国NO-1古力が念願の世界タイトルを獲得した。

 参考図A 白48では隅は捨てて外勢とフリカワるのが手厚い






 白48とアテ、以下白54まで二つポン抜いて隅を捨て外勢を取りたい。この厚みは壮大で全局を威圧している。O-12の連絡が先手で利いている。寄せでR-18やS-12も利くのでこの隅は存外小さいのだ。

 参考図B 白82勝手読み






 白72から76でP-16とQ18が見合いで黒死にと考えていたが、黒77が切りとワタリを同時に防ぐ返し技、勝負所で古力が読み勝ち、一本取った。

 参考図C 白106ではコスミ返しが正しい






 白からの106コスミに手を抜くと108でワタリと黒七子の取りが天秤に掛けられるので、黒も107ではR-11(白108のところ)と接ぐしかない。逆に言えば、黒も105で106のコスミを打ち、右上の白の生きを催促しておくのだった。

 参考図D 白174で抵抗はできない




















posted by 蔵山車理恵蔵 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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