2006年04月27日

第15期竜星戦本戦Hブロック7回戦  △石倉昇九段対▲大淵盛人九段 黒3目半勝 








 □二連星から黒5、7に白は手を抜いて8とカカリ、黒9のハサミに三々に入って黒模様対白の実利という分かれ。
 □黒19〜23に白は左辺の3線に既に6がきているので27に這うのは利かされ、と見て24とこちらから逆に利かす。
 □黒は25と白26を交換しておいてから27と押さえてしまう。
 □ならば白は28と左下を大事にし、黒29のサガリは許しても、白30打ち込みでここに戦機を開く。
 □白32に黒O-4押さえと封鎖すれば手厚いが、、この配石では白L-3と下辺で幸便に二間開きを打たれて黒面白くないので白の注文を外して黒37と裂いて白30の一子を攻める構え。
 □勢い白38とトンで白42と渡って黒を43まで追い出し、下辺も白44と中央に一間にトンで全面衝突の様相。
 □だが、黒45、57のノゾキに白46、58と反発。結局黒67までお互いが意地を通し
白実利対黒模様という棋風通りの進行はますます明確に。
 □黒77、79は部分的には実のない手、白80までと受けられ、左上はかなり大きくまとまった。ここの白地は15目。
 □黒は81から戦いを仕掛け、損失を取り戻す作戦。
 □黒93は大淵の錯覚。参考図Aのシチョウを見損じている。黒93では95のトビツケなら白はかなり困っていた。
 □黒99と右辺の白数目は取れたが、黒の形はかなり崩れていて白は一息ついている。
 □だから、白100〜黒105までとなった時G-14とドライに上辺を取り切って店仕舞いしたらよかった。参考図Bであるが、この図は白良し。
 □それを白106とこちら(左辺)の黒に狙いをつけた(ひょっとすると、先手の利かしと見たのかもしれない、が甘かった。黒はこんなところを受けるわけがない)ため、107、109と上辺の黒石の脱出を計る。
 □ところで分からないのが白110である。この手で参考図Cの出切りが成立するように思うのだが...
 □白110と妥協(?!)したため、黒111、113とタケフ(しかも両ノゾキ付き!)で幸便に脱出しては上辺の白地は雨散霧消したどころか、130と生きる心配さえしなければならない。
 □この時点でざっと目算すると、黒は右辺60目+下辺14目+左辺5目、黒計79目。対し白は左上隅27目+左下隅8目+右下〜下辺27目+上辺7目、コミ6.5目、白計75.5目。差し引き3.5目黒良し、プロとしては大差で、こうなっては黒の勝ちは動かない。

 参考図A 白96シチョウ






 黒95と押さえれば、白96からのシチョウが成立する。

 参考図B 白106上辺取り切り






 白は上辺50目+左辺8目+右下〜下辺25目+コミ6.5目、白計89.5目。黒は中央はまだ未確定なので、右辺は50目+下辺15目+左辺15目で黒計80目。次は黒番ではあるが、黒の劣勢は覆いがたい。

参考図C 白110出切り






 白110からデギれば白は中央を封鎖して厚く、上辺で生きられても左辺は取っていて、悪くないのではないだろうか?
 




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2006年04月25日

第10回LG杯世界棋王戦決勝五番勝負第4局 △陳耀此蔽羚顱紡丐ジ杜蓮蔽羚顱法’鮹羃,珪。








 解説:レドモンド九段
 □黒7〜11は右上に厚みを築いて黒17の打ち込みに回ろうという古力の趣向である。力強い古力らしい構想だが、右辺の二間ビラキを攻めようとするのは無理気味。白24まで中央に進出されては黒の作戦は空振り。
 □上辺に効率の良い白地ができたのに対し、黒59と連絡した形は薄い。最初の折衝では白が一本取った。
 □劣勢を意識した古力は黒61と積極的に仕掛ける。
 □ここで陳の打った白68が白72のコウ有利を見て黒を這わせたつもりの悪手。白が下辺でしっかりと治まった参考図Aと比べると、実戦は黒71に黒石が来た分下辺に見込まれていた白地がほとんど消え、これは黒の大戦果なのだ。
 □黒75、77は大場で相場に見えるが、後の流れを考えると疑問だった。黒75では参考図B。未解決の左上が急場だった。左下は白から打ってもさほど黒も苦しまない。
 □実戦は白78〜黒89と左上を白が先手で黒を隅に閉じ込めて切り上げて、とって返して左下90の三々打ち込みに回り、陳が機敏に打ちまわした。
 □白90〜98で陳は実利と黒の根拠を奪い優位に立つ。
 □黒99は勝負手。左下の黒が単に生きるだけでは面白くないと見て、白が131とツゲば黒K-5と切って、乱戦に持ち込もうとしている。例えば参考図Cのような。
 □だから、優勢の白は参考図Dの白100、M-7(黒133)と冷静に備えればはっきり優勢を持続していた。
 □しかし、手抜きされれば咎めたくなる実戦心理というもの。白100〜1110と左下の黒を攻めて黒111を許し、中央への進出は阻止したものの黒119と121、123を利かされて嫌味を残し、隅の黒は129までカカトで凌がれ、白130と右下の白七子を助けたが下辺全体の白の眼形がいまひとつはっきりしない。こうなれば、白の優位はあやしくなり、黒の勝負手が奏功して、局面は険しくなった。
 □古力は下辺の白一団を直接攻めてもうまくいかないと判断し、黒135と右辺へ転戦。右辺と下辺のカラミ攻めに持ち込む魂胆だ。
 □黒139に石が来ても参考図Eと白144まで部分的には生き。しかし黒145が利くと147と白を殺す手段が残っている。両者、ここのアジを見ながら、必死の攻防が続く。
 □結果的には当然に見える黒143の抜きが敗着になった。ここでは参考図Fとアテて頑張る一手だった。この図は白の右辺がまだ生きていないし、一方中央の黒は厚い。ということは下辺の白が苦しいということで、仮に生きてもまだ左辺の白が苛められる、という訳でこの図は黒勝ちのコースに入っているようだ。
 □黒189からコウが出現。闇試合に突入した。
 □黒229で232と備えておけばかなり細かかった。参考図Gである。しかしレドモンドの研究では、難しいながらもわずかに白に残る形勢らしい。

 参考図A 白68ではしっかりおさまる






 白68と手を戻すのが厚い。70となれば下辺の白は地をもって治まっている。

 参考図B 左上が急場






 左上が急場だった。左下は白80と両ガカリされても黒81からのツケオサエで危険はない。

 参考図C 黒99勝負手






 白が100と接げば、黒101と切って乱戦に持ち込もうというのである。

参考図D 白100冷静






 優勢の白は黒99には相手せず、白100と冷静に中央に備えておけば優勢を維持できた。


 参考図E 黒139が来ると、右辺の白は死ぬ








 参考図F 黒143とがんばればわからない






 黒143と頑張れば右辺の白は後手で生きなければならない。すると中央の黒が厚くなった分、下辺と左辺の白がそうとうきついイジメをくらう、という寸法で、これは黒勝ちのコース。

 参考図G 黒129でコウ解消






 ここにコウ移しをされてはたまらないので、黒129と備えるしかない。しかし、それではコウ材が続かず、黒281と中央の白数目を取ったくらいでは追いつかない。白勝ちである。
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2006年04月24日

第31期棋聖戦最終予選決勝 △張栩名人対▲井山裕太七段 白中押し勝 2006.4.20








 自戦解説:井山裕太七段
 □右上、黒5の二間高バサミに白6のツケが妖刀といわれる含みの多い手。
 □白12の内マガリが珍しい。
 □黒17の時、白18が新手。定石は参考図A。これは黒不満ない。
 □白26も強手。
 □更に、黒29のオサエに白30が井山を惑わせた鋭いツケ。対する黒31、33が敗着となった。参考図Bと生きるしなかった。
 □実戦は白54からのコウが残った。白60、62と連打されては黒が一手くらい損をした。
 □黒93と辛抱したが、ここで参考図Cと勝負に出るしかなかった。
 □以降、白が手堅くまとめ、黒に勝機はない。

 参考図A 定石






 黒21まで後手だが、上辺の黒地はぺしゃんこの右辺の白地に勝る

 参考図B 相場の生き生き、ただし白先手






 黒後手で、上辺に白が打つことになるが、これはまだこれからの碁だった。実戦黒31、33は右辺の白の攻めに期待をかけたものだが、白46〜52と右辺でかえって白が威張り出すと、右上のコウが黒の一方的な負担になっている。

 参考図C 勝負手






 黒93では良かれ、悪しかれここから出切って一戦交えるしかなかった。実戦では以降、黒に勝機はない。













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2006年04月23日

第54回NHK杯一回戦 △矢田直己九段対▲林海峰名誉天元 白中押し勝 2006.4.23OA 








 解説:羽根泰正九段
 □序盤黒21からの左辺打ち込みは、局後の検討で林自身が「白34が気付かない冷静な良い手で、黒は低位に押し込まれ、黒61も“西洋絞り”で嫌になった」と言い、形勢悪いと思っていたことがわかる。
 □白42〜46と白の左上の地模様は大きい。
 □黒47から消しだが、56と自重して、白地は48目ある。
 □黒57、59となれば黒も一丁前とは言うものの、白60ツメが絶好点。
 □で黒61のケイマだが、これが前記の“西洋絞り”で、シボリとして緩んでいる。というか、後の白104から左下が破れる原因にもなっていて一手の価値が無かった。
 □白62のトビ出しが黒61と見合いの地点で、出入りは異様にデカイ。結果論だが、ここで黒N-3押さえと白Q-3ワタリを交換して(参考図A)おけば、まだこれからの碁だった、かもしれない。(林は「どーせ悪い」と言うだろうが)
 □黒63は(白60との交換で利かされ気味ではあるが)それでも、第一級の大場。
 □白64は厚い。しかし「厚みと緩みは紙一重」という言葉もある、と羽根P。
 □黒65ハサミは当然の攻め。
 □白は白66黒67を利かして70、72と居直る。
 □黒73では右辺のワタリを遮断するS-9トビが普通だが、劣勢を意識している林は中央の地を目論んで黒73とボーシした。
 □白は74〜86と右辺を渡る
 □黒89は白90と交換して左下がこのまま地になれば、黒も面白いが...
 □黒91〜95と右上〜中央をまとめて...
 □白104が狙いすました一着。黒105〜111を利かして、白112が決め手。ここの黒地が破れては黒の手から勝利はするりと逃げた。参考図Bのように受ければ隅は黒地だが白116としてるだけでも白厚く、中央の黒は薄く、白の勝ちは動かないだろう。

 参考図A 黒61サガリ






 黒61でサガリ、白62ワタリと交換になればうまく、このあと左下の黒模様のまとめ方次第だが...

 参考図B 黒屈服






 黒113と接げば左下は黒地だが、中央の力関係が白>黒になってこの碁は黒勝てないだろう、と林は見た。で、玉砕したと...

 
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第19回世界選手権富士通杯二回戦△趙治勲十段(日本)対▲李世j選手権者(韓国) 黒中押し勝








 参考図A 和平策







 参考図B 奇手一線ツケ!













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2006年04月16日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △井山裕太七段対▲蘇耀国八段 黒3目半勝 2006.4.16OA 








 解説:結城聡
 □黒15は以前は参考図Aのケイマが定石だったが、特に右辺が三連星なので、G-5(参考図白16)と曲げられると白厚く、右辺の三連星がぼやかされて嫌だという。それで二年前からこの一間トビが打たれるようになった。
 □となれば白も16から出切っていく。
 □部分的には黒27で一段落だが、白もJ-5とこの厚みを補強し、黒11、19、23の黒三子に圧迫を加えていないと本物とは言えない。
 □が、J-5の前に白28と黒R-6(白30のところ)があれば下辺が理想的と見て28を打った。
 □気合からしても白28には手抜きして黒29とハネ、左下から全局に及ぶ戦いが始まった。
 □白30と両ガカリして黒39までを決め、とってかえして白40、42と右下の白を安定させつつ、下辺の黒を脅かす。
 □黒43の補強は当然だが、一路右のカケツギとどっちかは迷うところ。
 □白44〜黒47はサバキののテクニック。
 □ここで打った白48が16歳七段阿含杯井山の才能の証明。対応が悩ましい。
 □黒49〜白56となれば中央を制して白“でかしている”。実戦はH-6アテからG-5の切断が残っていて、黒は気味が悪いのだ。
 □で白58に黒59の屈服はやむを得ない。ここで白1ポイントリード。
 □白60のマゲが調子に乗った。黒61と裾を止めて、黒65〜71の攻めがきつい。
 左辺の白への直接の攻めは続かない、と見て黒73と左上の星にくっつけ、相手の出方を窺う。
 □白74〜黒85の折衝は左辺との連絡の余地を残しつつ、隅の実利が大きい。黒はシチョウ当たりの心配をしなければならない。
 □早速、白はシチョウ当たりを見ながら右下隅で死んだフリをしていた白石を86〜92と動く。
 □『週刊碁』(2006.5.1)の記事では「参考図Bの黒89の押さえが成立した」とある。「黒89〜97となると、左上F-15からの白石の逃げ出しは成立しない」というのがその理由であるが、ちょっと待ってほしい。黒97なら続いて白が98〜100の出切りから切断された右下の黒四子がM-6からのシチョウが成立するので黒はここに一手かけねばならず、そうすれば右下隅で切断されたもう一方の黒三子は白102以下攻めあいは黒負け=死に、なのである。この隅を捨てても、それに見合うだけの手段が中央で黒にあるというのだろうか疑問である。
 □右辺の折衝で黒87、89、91と中央に石が来たので、蘇は93、95と下辺の白の目を奪い、中央の白とのカラミ攻めを狙う。
 □しかし、白は下辺は生きる手段があると見て、白96、98とまずは右辺を大きくしっかりと生きる。これで、下辺と中央の白に大きな被害が出なければ白が形勢良し。
 □黒は101〜107と中央白四子を切り離す。
 □下辺の白は白108黒109を交換しておいてから、白110、112と眼形を持てば、隅の黒が危うく黒113の連絡が必要。そこで白114と黒一子を噛みとって下辺の白は生きた。
 □で、本局の山場が訪れる。中央で孤立した白四子がどうなるか、だ。
 □彼我の勢力の急所黒115にじっくり押して自らの安定(右下の黒の大石はどうやっても隅だけでは二眼できないのだ)を計りつつ、遠巻きに白四子を狙っている。
 □ここで井山が打った白116が結果的には逆転、敗着になった。
 □白116は右上の星にケイマカカリした白との連絡を見ながら、中央で孤立している白四子に応援をおくり、同時に左上からのシチョウ当たりにもなっているという一石三鳥の“耳赤”かと思われたのだが。
 □実際に黒は117でシチョウの一子を取らざるをえなく、白118と連絡形にしては好調かとも思われたのだが、黒119が上辺と中央のいずれかの切断を見合いにしていて厳しかった。黒119が勝着といえる。
 □結果論ではあるが、白116ではK-14(実戦の白116の一路上)と控えていたほうが切断はなく、シチョウ当たりにもなっていてよかった、という。
 □結局白120〜黒151となり、黒は中央を大きくまとめることとなった。
 □白も152〜154と右辺と上辺でいささかの実利を得ているが、右上で孤立した黒に死にがなければ(黒155、157が先手で利いて、黒159〜170も決めてから、黒171に戻った)黒の勝利は動かない。

 参考図A かっての定石






 この場合は特に右辺の黒の三連星との関係で白が厚く、黒がへこんでいるとみなされるようになった、らしい。

 参考図B 黒89変化図押さえて頑張る?!












 



posted by 蔵山車理恵蔵 at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月15日

第44期十段戦五番勝負第4局△山下敬吾棋聖対趙治勲十段 黒2目半勝 2006.4.13








 解説:武宮陽光五段(ネット解説)、小林光一九段(立会人)片岡聡九段(新聞解説)
 □「黒7までは小林流といわれる構えで、立会人の小林光一九段が愛用していた布陣。趙が立会人に敬意を表したものか」(『週刊碁』2006.4.24記事より)
 □白18ではQ-2とハネ、黒P-3ヒキ(18)で先手を取る打ち方もあるが、白18〜22は後手でも小さくない。黒22がくると、Q-3が成立して白は一眼でもがくハメになる。(片岡)
 □黒31、33は最近流行りの図。
 □白38と転じたが、左辺の白はもう一手かけなければ本物ではなく、黒からの打ち込みが残った。
 □黒39はこのケイマやコスミツケ、ツケノビなどあるが、いずれにしても右上から迫るところ。参考図Aのようなハサミは右下の厚みと重複して重い。
 □黒53の単なる囲いは趙らしからぬ守り一辺倒の手。局後、趙本人も「黒53では黒51と切った手から左にノビる(M-17)べきだった」と言っていた。
 □黒55は56が相場。55は頑張った手。だが局後、趙本人も「黒55は56だった」と反省している。
 □だから、白も気合で56と厳しい踏み込み。
 □黒57と妥協したのだから、黒56は利かしとみて、白58ではF-4ツケノビなど左辺白の補強をしていれば穏当だった。白58、60と動いた実戦に進行は、左辺とのカラミ攻めをみられて重い。
 □黒61がプロ好みの“しぶい”一着。参考図BのようにL-14に黒石が来れば、L-17のカドから上辺白の眼を奪う狙いもあるので、中央の白への狙いにも関連している。
 □それがいやで、白も62とここに一着入れて上辺を確定地とし、中央白への応援も兼ねている。
 □左辺への打ち込みがあるのにあえて黒63、65と「悠然と打つ。趙の自信が窺える」(武宮)
 □黒に呼応するかのように、白も66、68と黒一子を噛み取り、中央を厚くする。もっともこれには異論があり、「白68は黒のツガないところを切った意味があり、疑問。参考図Cの白68、70を決めて、白72の左辺の守りに回っていれば白もまあまあだった」とは片岡の見解。
 □控え室の意見は黒69ではC-8(73)しかないということだが、今日の趙はオトナシイ。左上でもそうだったし、白53、57といい手堅い手が目立つ。黒は比較的穏やかな69のカタツキから左辺の白に手をつけていった。
 □「白72では参考図Dのワタリが相場」(控え室)だが、両対局者ともにこの図は白不満と意見が一致。
 □黒73と押さえ込んだ実戦は単に73や71の打ち込みよりは効率がよい。
 □白74から左辺上下のふたつの黒対左辺および右辺のふたつの白という戦いが始まる。
 □黒99、101は左右の白に狙いをつけた。
 □黒107のアテコミも狙いすました鋭い一着。白108、110が余儀なく、黒111と中央と左辺の黒をつなげて左辺の白が孤立した。ここでの白に単独の生きはない。控え室では「これは作らないね」(小林)と黒優勢説が主流を占めていた。
 □だが白112ハサミツケが巧みなシノギ筋。白112、116を捨石にして白128まで連絡して、黒に決め手を与えない。
 □黒129と中央をまとめる。
 □「難解な戦いで、一時はどうなることかと思いましたが、“強い先生”はさすがにうまくまとめるものですね」(武宮)とプロも脱帽。
 □まだ終わっていない中央の戦いをパスして、下辺131の寄せにまわったのが、趙の明るいところ。
 □中央は白132とここを突き出されたが黒133と下辺を囲い、更に白148と切断されると黒149噛み取りと左辺で二眼をつくらなければならないが、白169〜178の先手寄せもあり、また白180と切られてもこれは実質9目のコウにしかすぎず、見た目ほど大きくはない、と読んでいる。
 □一方下辺は139が来ると、かねての狙いQ-3(黒153)からの絞りがあり、とりわけて黒157が控え室も気がつかなかった冷静な一着。ここでは参考図Eのように黒157と切断して白を取りかけにいきたいところだが、そうすると白166までコウになってまぎれる。「実戦の黒157が勝着」(小林)
 □黒157〜白164と右下を先手で絞り、黒165と中央からの白の進出もたくみに踏ん張ってしのぎ、結果趙は下辺に30目近い黒地をまとめ、黒の勝利が確定した。
 □結局黒63、65〜69に始まる趙の構想力はあざやかで、終盤まで一貫していて見事である。
 □蛇足だが、黒189からのコウは9目の手。黒241、143の連打という2目半の価値しかないコウ立てと引き換えにしてもトータルで勝っているのを趙は読んでいる。でなければ、実戦の黒157で矛を収めることはなく、参考図Eの闇試合に突入していた筈だから。
 
参考図A 黒39開き詰めは悪手






 黒39は右下の黒の厚みと重複していて、良くない

 参考図B 黒61は将来の白の上辺と中央のカラミ攻めを見ている







 参考図C 片岡説 白68では上辺=中央の切断ではなくの左辺の守りを優先させるべき






 「黒が68を打たないのだから、左辺の守りが急場」(片岡)という意見。

参考図D 白左辺ワタリ






 黒77と連絡されると、中央が黒厚くなり、切断しても一方的に攻められて、右辺の白にも影響が出て悪い。

 参考図E 黒157右下の白を取りかけにいけば






 黒157〜白166とコウになり、これは闇試合。というより、コウ材をたてようにも、黒にはこれといったコウ材がなく、黒危険というより負けコース。










posted by 蔵山車理恵蔵 at 17:51| Comment(0) | TrackBack(1) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月13日

第19回世界囲碁選手権富士通杯一回戦第7局 △結城聡九段(日本)対▲兪斌九段(中国) 白中押し勝 








 解説前田亮
 □黒が5、7と連打すれば、白も6、8と連打して対抗。
 □黒9と開き詰めを打って、白の出方を問う。
 □白は10、12と左下隅で実利を取り、黒の模様が出来るのを、14大ケイマで消す。
 □[下辺の左右で戦端]更に黒は21〜27と右下の黒を攻める。
 □[白は実利]白28、30と地合いのバランスを図る。
 □[黒実利、白模様]黒31と三々に入り、白46までここでは、黒の実利、白の模様という展開になる。
 □[お互い模様拡大]黒47と中央への一間トビで下辺の模様を盛り上げれば、白も48と同じく一間トビで上辺の模様をふくらませ、がっぷり四つ。
 □ここで黒49と大どころを打って実利を確保したのに対し、白は50、52となおも上辺の模様を広げる。
 □[模様対決]ここで黒55と絶好点にボーシして右辺の黒模様を拡張しつつ白模様の削減を図ったのが本局のハイライト。
 □白は56とわざとハザマで対抗、黒の侵入を誘う。
 □以下63まで黒は白模様に侵入、上辺でも白一子を噛み取る戦果をあげたが、白もなんとか上辺の模様をもちこたえてふんばってはいる。
 □白64と大ケイマで上辺の白模様を広げ、下辺の黒模様を消しにいったのが、ぼんやりとしているがなんとなくよさげな手。
 □[黒模様を強化]黒65〜白74まで右下の白に生きを催促して、75と手厚く打って中央〜右辺の黒模様を強化する。
 □白76〜90と右辺の黒模様を荒らす。が、上辺〜中央の白模様も薄みが目立ってきている。
 □


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2006年04月12日

第16期富士通杯2回戦△古力(中国)対▲結城聡(日本) 黒中押し勝 2006.4.10








 解説:前田亮(関西棋院)
 □序盤白が地合いでリード
 □上辺にかかった黒を白が24とはさみ、白66までお互いに中央へ飛び出す展開。
 □先手を得た黒は67と中央の白を挟撃する。
 □対する白は67を無視して、右上の黒模様に70と打ち込み。
 □黒は意地で71と中央白を攻める。
 □は白74は中央の切断に間接に備えつつ、上辺からの黒の一団をやんわりと封鎖した柔軟な手。
 □黒75、77から89、91と攻めるが白は76、78から90、92とやんわりとかわす。
 □結局白102まで右辺の白は中央と連絡を果した。
 □黒103は碁を決めようとしたものだが、これが事件の発端。
 □下辺は黒123と天下分け目級の大コウになった。
 □白124、黒127、白130、黒133、白136、黒139、白142とコウを取り合い、結局黒143、145とのフリカワリでこのコウは白が制することになる。
 □コウがわりで黒は左上の白地を荒らしたが、この白は生きている。
 □一方下辺のコウに破れたことにより、上辺から下辺にのびた黒の大石は目がない。ということは、形勢は白良し。
 □白160から一方的な白の攻めが始まる。
 □単独での生きはない黒は165〜左下隅の白に手をつけ、白を一眼とし、白198から壮絶な黒の一手寄せコウにして起死回生を図る。
 □このコウは白が191を接げばセキになるが、それでは地合いが悪いとみてコウは続く。
 □白228のコウ材に黒は手を抜き、本コウになる。
 □これこそ、本当の天下コウで、コウは白が制し21目の地をここにつくる。
 □黒はコウ代わりに233、235と左辺で白十二子を取って34目の地をつくれば、やはり黒地が大きく、勝負は黒が逆転した。


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2006年04月11日

第15期竜星戦Eブロック7回戦 △伊藤庸二九段対M・レドモンド九段 黒半目勝








 □M・レドモンド九段は強豪三村智保九段を破っての7回戦進出、序盤から元気よく13、39、49とツケ積極的に戦いを仕掛ける。しかし、伊藤庸二九段はおとなしく受けて流水先を争わずといった風情。
 □黒は53、55と二線を這ってまるで“勝ちました”とでもいうのか、“店仕舞い”のような様子。
 □黒の仕掛けを柳に風と受け流してきた白だが、黒63にはさすがに耐えかねたのだろう、64と両ノゾキで牙を剥いた。
 □黒は67、69と掛け黒二子を捨石にして脱出を計る。
 □更に黒は71、73と左辺の白の根拠を奪いこの白の一団を中央に追いたてながら自らも中原に駒を進める。
 □白74では75と黒一子を噛み取れば二眼できるが、そうすれば左辺に封じ込められる。それをきらって、74、76から80、82と一間で中央に進出、黒もつきあって79、81と中央に出、その調子で83〜105と上辺からも白を威圧して中央を黒の地模様にした。
 □白は106〜110で左下の黒を封じ込めようとし、中央下辺でつばぜりあいが起こる。
 □黒119のつっぱりに手抜きして白120と転進したのが好判断だった。白134までここでお互いに二子を取りあう分かれになったが、このフリカワリは中央の黒の地模様を荒らした白に軍配があがる。形勢は混沌。
 □黒135に接げば後は寄せ。
 □神経をすり減らす寄せ合いは半目黒が幸いした。

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2006年04月09日

第54回NHK杯囲碁トーナメント一回戦 △石田芳夫九段対▲中野泰宏九段 白中押し勝








 解説:小林光一九段
 □[左上⇒上辺]黒13〜白22は白の実利が大きいようだが、黒も23に回って不満はないという。
 □[上辺⇒右辺]黒が23と上辺の模様化を計っているのだから、その模様の立体化を事前に阻止するという考え方で、24は右辺の12から上辺に向かい、R-13と二間に開くのが普通。実戦の24は石田流の趣向。
 □[右上]だから中野は、早速黒27から29と“下段の構え”。黒29で64の一間なら見栄えはするが、白42の打ち込みが目に見えていて、これが楽生きするようでは結局右上の黒の鶴翼の陣は絵に描いた餅、地に甘いと見て、自重した。
 □[下辺⇒左辺]それなら白も不満はない。先ほど白24で黒25を誘い、白26と受けた意思を継いで白30と下辺を盛り上げつつ、黒3、5の二子の動きを催促する。
 □[左辺]それならと、黒31〜41とここを治まるが、途中“いきがけの駄賃”と黒33と39を利かし、後の楽しみ(切断)を残して、黒ワンポイントリードか。
 □[右上]白30〜黒41と左下を先手で利かした石田は、右上白42の打ち込みと懸案の個所に戻る。
 □黒43は白42の一路上Q-14ツケが普通の発想だが、先程述べたように楽生きされると見て、黒43白44を交換してから黒45のボーシ。白を中央に“燻り出して”、右辺の白をふたつに分断し、更には左辺から中央に出ている白をもぶっちぎってまとめてからみ攻めにしようという、全局を睨みまわした壮大な作戦。
 □[右下]で、黒53と白54の交換。これで右辺の白は薄くなっているが、右下の黒も目がない。(とりあえずは中央への進出と隅の守りが見合いになっているが、将来ここ=R-2ににどちらが先着できるかは死活がらみとなって、30目ではきかない大きさを持っている)
 □[中央&上辺]中央と上辺に関しては、黒57、59の二段バネから61で中央を制し、そのかわり白62、64の上辺への進出に対しては63、65の三線のワタリで妥協。
 □[左辺]白66と懸案の左辺を白の石田が先着して黒の出切りを誘って74とカケ、左下の黒に“王手”をかける。(無論、右辺から中央に出た黒の一団<=厚っぽくはあるが、まだ目があるとはいえない>と張り合ってはいる!
 □[左下⇒右隅⇒下辺&中央]黒75〜83まで左下黒の生きをはかるが、白84〜91と
戦線は下辺一帯から中央へと拡大する。
 □[左下黒死活]白96ハネは、露骨に目を取り、黒を殺しに行った。問題の一着。というより、この断点だらけの白の包囲網が破れれば一挙に一局の決着がつき、敗着になる可能性が高い。
 □[左下黒死活&中央白死活]黒105のハネ出し〜白110で白黒切り違えて、左下の黒は孤立したが、中央の白も浮き上がった、と言える。
 □ 黒111に白112の受けが見損じ、黒113でこの黒が生きてしまった。実質、この碁の勝敗はここでついた。黒勝ちである。
 □白112では参考図Aしかなかった。これは、むつかしい戦いだがどちらかといえば、白がより苦しい。要するに白96ハネの取りかけが性急すぎたのだ。
 □以下は、敗勢を認識した白が無理気味な手を連発している。一種の投了の前の“形づくり”といえなくもない。
 □[形勢判断]この時点で天下の形勢を分析する。
  黒=[上辺]40目の地。
    [左下]8目の確定地。
    [右下]隅に生きる余地を残し、中央を進出して左右の白を両睨みにして勢い盛ん。
    [右辺]目はないが厚く、上辺とはいつでも連絡できる余裕がある。右下の黒とも呼応して、上、下、左の三つに分かれた白の生死を窺っている不気味な存在。
  白=[左辺]5目の確定地。
    [中央]孤立。右下の黒と切り違えて右辺との連絡は先手で可能。(白114から133で実現)
    [右辺]孤立。後手生きだけならあるが。
    [右上]5目の地をもって生きている。
 □ということで、白は死活に不安がある石がふたつあり、黒は右下さえ注意(右辺の黒は死ぬ気配はありえない。)すればよいので黒が大優勢。小林Pの目算では「黒は確定地60目、白は...」ということだった。
 □[上辺コウ]白は上記のようにともかくも、右辺と中央の白を右下の黒と切り違えて分断したうえで、上辺を白134〜148とコウにする。なりふりかまわぬ非常手段だ。
 □白152、黒155、白158、黒161、白164、黒167とコウを取りあう。このうち、黒153のコウ材は損コウ。単なる地の損得ではなく、後に実現するように、白202、204と右上と右辺の白を連絡するコウを残したのが黒の罪なのだ。(とはいえ、損コウにならないコウ材が他にあるかといえば、...むつかしい。あおきにはわかりましぇんORZ)
 □[黒コウ解消]白168のコウ材に対し、黒は169と171〜175を利かし(右下の黒生き確定!)ておいて177とコウを解消。
 □[白コウの代償]このコウの代償に白が得たものは右下の黒四子。これにより、中央の白は下辺と連絡している。
 □[白、非常手段]白178の意味は、黒137、169の黒二子を齧り取ることで地合いのバランスを取る(黒からK-11に出られるのとの差は16目は下らない!)と同時に、中央での右下黒の目を脅かして右下での白の策動を計り、さらにはそれと連動させて右辺(白178で一手入れて生きることはできるが、そうすれば上記のように黒K-11に出られて大差の敗北)のシノギを狙ったもの。非常手段、第二弾。
 □[右辺白の死活]黒179〜186まで利かしておいて、
 □[右上白の死活]右辺白を殺す前提として、右辺白との連絡を絶つ(上記、一線のワタリのコウが白から残っている)べく右上に手をつけていった。
 □ここで、白黒ともにミスを犯す。
  黒のミスはいつでも利かすことのできた一線への下がり(右辺の白とのコウによる連絡を絶つ)を打ち損じたこと。
  白のミスは190とハサミツケて黒191と交換した結果、白P-16、黒P-17の交換による先手一眼を逸したこと。
 □[天下コウ]両者ともにミスをした結果、勝負は混沌、遂に白202、黒203、白204の天下コウにもつれこむ。
 □天下利かずのコウに白は206、208で妥協するしかない。
 □この結果、黒は右上に30目の地を得る。一方白は右辺の白を殺して40目の地。一見派手なフリカワリだが要するに差は縮まらず、盤面黒13目良し。(コミを引いて黒6.5目勝ち)
 □最後に思わぬどんでん返し、アマ30級レベルのダメ詰めの大ミスを犯し、黒番中野、昨年度の森山に続く関西棋院勢の金星はならず。

 参考図A 戦い










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2006年04月07日

第44期十段戦五番勝負第3局 △趙治勲十段対▲山下敬吾棋聖 黒8目半勝 2006.4.5








 解説:溝上知親八段(ネット解説)、武宮正樹九段(立会人)、小林覚九段(新聞解説

 □黒1.3はよく見かける布石だが山下は珍しい。(溝上)
 □左下は大ナダレができかかっていたが黒11と山下が外した。最近の趙は大ナダレを打つことが多く、誘ったきらいがある。白12まで部分的には白地が多く得しているが、山下は黒5、7、9を利かしとみて、趙の意図を外した。(溝上)
 □左下の分かれを武宮は「黒は腰が引けている」と見る。本格的宇宙流の武宮からすれば、当世風の足早な利かしは「信じられない」安普請の模様構築としか思えないのだろう。「黒、嫌いです」とまで言う。そんな武宮をあおきは好きだ。
 □黒17と手を戻し、下辺を模様化したので普通なら白右下に入るところだが、白18と構えて悠揚騒がず、黒にもう一手かけさせてからドカンと打ち込んで荒らす木谷流。
 □ならばと黒19のトビ。隅は甘いが辺と中央を重視したスケールの大きいいかにも山下らしい構え(溝上)。これを重複と見るのが武宮式だ。「黒11(M-3)と黒19(M-5)がWっていて効率が悪い。その中間の4線(M-4)ならば一手ですむところ」だと言う。超一流のプロはこんなところで見解が分かれるものかとむりやりに納得、感嘆するのはあおき式だ。
 □白20!アマには壱百萬年考えても思いつかないいかにもプロらしい一着(とあおきは感心するのだが、溝上、武宮は「面白い着想だが、趙の趣向過多」と、どちらかといえば冷淡。武宮のおすすめは中央志向の上辺ケイマ=K-14)。どう応じてもコリ形になると見て黒は21と上辺に迫る。
 □黒33ではF-17の一間トビが常識的な着手。実戦の33コスミは下辺と右辺の黒模様と関連して立体的な大模様を意図したもの。
 □ここで白34、36のツケノビが趙らしくない手堅い着手。黒35、37と交換したことにより、黒模様が強化されており、後の打ち方=右辺〜下辺への打ち込みを自ら制約した悪手になる可能性もある。
 □白40と打ち込んだが、平凡な43ツケに趙は長考する。平凡な黒R-13ノビ、白Q-13押さえ、黒R-10ツケ(S-10ケイマもある)、白R-9押さえ、黒S-10サガリ、白Q-9ツギでは中央から右辺、そして右下から下辺一帯が壮大な黒の地模様になって、これは黒38目勝ちの図となって碁は終わってしまう。
 □やむなく白44と右下に手をつけ、これではフランスに侵攻しつつ同時にソビエトにも色気を出して二正面作戦をとったナチスドイツと同じ愚を冒している。
 □結局白76まで、趙は右辺と右下に打ち込んだ白石を双方ともに捨石にして黒模様だった右辺を割って中央に顔を出したことになる。
 □白40〜76の白の打ち込みとシノギについては、産経新聞のネット速報(溝上)NHKBS2の「囲碁ジャーナル」(武宮)「週刊碁」で産経新聞解説(小林)が技術的な解説を詳細に行っていて興味深い。それによると、白もただ逃げるだけではなくそれなりのギリギリ一杯の秘術を繰り出してのシノギであって実害はそれほどでもないという。黒も右辺と右下隅でそれぞれ白数目を取り込んで実利を得たといっても、そこはもともと黒模様であったところ。換言すれば趙の巧緻なテクニックにより黒の確定地を最大限に値切られて妥協したという見方も成り立つわけで、形勢は黒悪くはないというだけでまだまだ先は不透明である。
 □武宮は黒73と妥協する前に参考図Aの決め付けを推奨する。結果論であるが、実戦は下辺が破れて碁は紛糾したわけだから、これは有力な見解だ。局後の検討で披露されたが、両対局者も小林Pも納得したそうだ。
 □貴重な先手を得た黒は77と下辺の模様を引き締めるのだがなんだかこれは頼りなげで、右辺から中央に逃げ出している白への迫力にも欠ける。ということは黒77と懸案の白78ハネ(黒33での第一候補だったまま放置されていた双方からの必争点。実質30目は下らない)は虚と実の交換だった。
 □白78と手抜きされて怒った黒は79ボーシと白に迫るが、これはコケ脅しもいいところで、白80〜102が鮮やかなカウンターパンチ。黒が何手も手をかけて営々として築き上げてきた下辺を破り、あまつさえ黒石を齧り取って生きてしまえば、黒の優位は吹き飛んだといっていい。参考図B参照。
 □上記記述にある進行の中で最大のポイントは黒85である。これは右辺から中央へ逃げ出した白を左辺の白模様との連絡を遮断する意味と、下辺の黒の地模様を固めつつ中央白へ迫る両方の狙いを含んだ一手である。その前者に徹するならばH-7(参考図C)であり、後者にこだわるならJ-5(参考図D)であろう。実戦の黒85(J-6)はその両者を兼ね備えたつもりだが、現実の進行は“アブハチ取らず”で破綻している。(溝上)
 □ところが実戦心理とは面白いもので、歴戦の勇者趙をしても微差での優位では満足できず、相手の息の根を止めなければ気がすまないとみえる。H-6に黒石一子抱え込んでおけば先手で生き、かつ下辺を破っているにもかかわらず、白104、106とここを出て、白の勢力圏の左辺に突出した黒石を切り裂いて大利を得んとダンビラを振りかざしたのである。
 □となれば黒107のツッパリ、白108、110分断以下の手順は双方必然に見える。
 □ただし、対局者の山下によれば、「110では、113のノゾキから、120のケイマで攻められたら、黒苦しいと思っていた」というから、碁とは広いものである。
 □趙は例によって一分碁、時間がない。それが悲劇を呼ぶ。
 □溝上説によると、「秒読みに追われた白は126、128とおよそ趙らしくない妥協の一着を放ち、黒127、129と交換することによって形勢は混沌としてくる。正しくは白126では参考図E、これで白は左辺の黒数子を絡め取り、勝利をモノにしていた筈だった。」
 □武宮説では、「白126、128はこうするしかない。それで白番の趙は悪くはない。むしろ苦しいのは山下で、129は起死回生を狙った非常手段。こんなのが良いわけがない。参考図Fのように打てば白の趙の勝が確定していた」と言う。
 □山下説は、「形勢は不明。だから黒129は思い切った勝負手。変化が多く、恐い手」と微妙な感想。
 □そして続く白134が一手パスに等しい時間つなぎの悪手。すかさず黒135、137を機敏に先手で決められこの地点での攻守が一瞬にして交代、趙は原告の身が一転被告の立場に陥ってしまうのだ。白146と渡っても黒147がくると白148の備えが必要で後手とっては泣くに泣けない。
 □ことここにいたっては盤面十目黒良し(溝上)。黒番山下の勝利は決定的である(武宮は目算しない。というより、できない)。
 □蛇足であるが黒159は危険な手であった。参考図Gと白から打ってコウにする勝負手があった。っていうか、これは出入り百目にもなろうかという天下(聞かずの絶対)コウ。残念ながら黒にはそれに見合うだけのコウ材は見当たらない。そのチャンスを逸して黒161と備えられてはこれが本当のジ・エンド。
 □棋譜は省略・単純化して201手までとしたが、実戦は白232まで黒8目半勝。

 参考図A 黒73では、その前にクールに決めるべき






 これが1970年代石田芳夫団塊流全共闘風革命的勝利主義的方程式なんだよね

 参考図B 白先手活き






 白は中央の黒一子噛み取りと右辺の目持ちが見合いで先手で活きている。

 参考図C 黒85遮断、これは最強の頑張り






 黒85は最強ではあるが、白86黒87は必然として、白88で趙がおとなしく引き下がるとも思えない。「日本も改憲して自衛隊を認知してアメリカと手を携えて世界征服を図るべし」という楽天的な国際政治=軍事認識だが、善悪は不明としかいいようがない。現にWBCというシミュレーションでは、「とりあえずは大リーグに学び協調するフリをしておいて敵(アメ公のことですな)を欺き、いつの日にか日米決戦を行う」という壮大で迂遠な読売正力⇒ナベツネ式発想は、韓国とかメキシコ、それにケネディvsカストロ(フルシチョフ)なる冷戦時代から持続している仇敵キューバなんかの善戦、健闘?!によって“わやくちゃ”になったわけだしぃ。
 これはもはや大惨事、つまり第三次世界大戦の勃発ジャマイカ。まっいっか。


 参考図D 黒85専守防衛自衛隊






 憲法(けんぽう)9条なら健康保険、つまり健保(けんぽ)に徹しているという論議で、これは“護憲論陣営”の主張である。「守備に偏して卑屈である」というのが“改憲論陣営”の非難だ。

 参考図E 白126切り!で先手活き






 白126には黒127と受けるしかない。以下、白132まで必然で、左辺は白地になる。

 参考図F 非常手段






 黒129は苦しいとみた山下の(苦しまぎれの、まぎれを求めた)非常手段。「良いわけがない」と武宮は厳しく断罪する。白130、黒131、白132、黒133は必然である。実戦でのその次の白134が持ち時間に追われた趙の時間つなぎの悪手、つまり敗着である。ここで趙はこのようにフツーにツギ(白134)、サガリ(白136)としておけば楽勝だった!

 参考図G 勝負手 白160切り〜起死回生の天下コウ






 白160ではこのように切りが成立し勝負手の大コウになる。これは形勢全く不明じゃなかろうか。知らん。
posted by 蔵山車理恵蔵 at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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